水筒と迷宮領都
オリファント王国編、開幕。
良い子のみんな〜、こんにちは〜!
皆のおやつに差し掛かる時間になりました、筒井歩だよ!
無事に迷宮領都ポールから少し離れた森で地面に降り立った俺達は、神聖団結を解除した事で隠密水筒の効果も自動で切れた。
しかし森に住まう魔物達は感付いても近寄って来ない、聖杯で皆“神聖性”を獲得してるから警戒してるのかもしれん。
さて帝国出発前には既に茶系の地味な旅装に着替えていたし、後は特に問題ないかな?
「オリファント王国か反リーデン連合か、そのあたりの身分証明が出来ないなら連合通貨“リンク”ってのが要るみたいだよ!」
通貨はあるって思ってたが、連合専用みたいなのあるのか!
……普段ツボ割って稼いでそうな通貨だな。
「あっ、向こうには向こうの通貨もあるのね!」
「連合の発足に際して作られたのでしょうな、今後はリンクが中心として大陸経済が動くことになりそうですぞ」
まぁ帝国は滅びるのがほぼ確定してるし、当然そうなるだろう。
そしてリンクを入手しなければ、ポールに入れぬ。
つまり……。
「えーっ、ポーション!“ポーンランク”の失敗作だがポーションいらんかねー!」
「今だけ特価販売ですぞ!」
「ほうほう」
「ポーンでもこれなら安いな……」
これぞ秘技!露店で訳あり安売りセールだ!
俺はサキに頼み栄養添加で傷を癒やすヒールポーション、状態異常を治すキュアポーションを敢えて濁ったガラスのビン……の見た目と固さの水を作ってその中に入れた。
そして最初から汎ゆるジャンルで最低ランクたる“ポーンランク”相当のクオリティとして作ったのに、失敗してこの出来栄えになってしまった……と言う体で相場よりも安く売るのだ。
しかし、それだけではない!
「みなさま、ぜひみてってほしいですの〜」
「この子は何ていうんだい?」
「サジェリアっす」
「サジェリアちゃんか……この子が言うならちゃんと見て買うしかないな!」
「ドリアードは正義よね!」
そう、それよ!
ダンジョンのアイドルたるドリアードであるサジェリア、その人気で客寄せを行った!
結果単価が大した事なくても、元手は魔力だけ!
領都内なら取り締まられるが、ある程度離れてるから特に注意もない!
見事にリンクを稼いでみせたぜ!
「……これで生きていけそうまであるわね」
「いや、流石に何度もやったら怪しまれるな」
「アユムさんの言う通りですね、出所は何処かと考えた者達とトラブルになりかねませんから……コーデリアさんは分かってますよね?」
「そ、そりゃあ分かってるわよ?言ってみただけよ、うん」
何となくの脊髄反射で出た言葉が、的を得てるとは限らんからね。
とりあえず無事に稼いだリンクをジャラジャラ持って、門の前に並ぶ俺達。
こう言う時不埒者がコーデリアやエレンに絡んでくる可能性も考えたが、サジェリア効果で俺達は不可侵の領域と化しているようだ。
「ありがとな」
「やくにたちましたの〜」
そうして平和に並んでいたら俺達の番が来たんだが、衛兵さんが上機嫌そうに話しかけてきた。
「兄さん、正直助かったよ」
「えっ、何かありました?」
「最近ポールダンジョンに挑む冒険者も増えてな、並んでる途中で諍いが起こる確率も上がってたんだよ……だからドリアードちゃんを連れて来てくれて感謝って意味さ」
「そうでしたか、そりゃあ何よりです」
冒険者が増えてるのか、活気が出そうだが治安が悪化する可能性もあるしトントンってとこだな。
無事払い終えると、「ようこそ、ポールへ」と声をかけられながら中に入った。
「おぉ……中々でけぇなぁ」
ぶっちゃけ飛んでる段階でだけど、領主城とは別に大きめの塔が建ってるのは見えてたんよな。
ご立派ァ!
「この塔がポールの名前の由来ですかな?」
「恐らくそうよね、冒険者登録を済ませたらダンジョン行きましょうねアユム!」
「すまんが今日は登録だけ済ませて、宿だな」
「しゅん……」
コーデリアそうあからさまにガッカリしないで、辛いから。
仕方ないので「防音しっかりしたとこ借りようか」と耳打ちしたら顔を真っ赤にした後頷いた。
かわいい。
「「……」」
分かった分かった、二人も相手頑張るから!
デクスターさんはニヤニヤしない、サキは避妊具を先んじて作るべきか思案しない!
……必要には成るだろうけども。
それよりも先にやる事をやってくれと頼んだら、ちゃんとナビしてくれた。
『リッスン!あの塔はダンジョンの上に建ってるだけで、実はこの大陸に存在する冒険者ギルドの総本山なんだって!』
『は?めっさ重要な施設じゃねぇか!』
『言ってたじゃんオススメって、それに冒険者ギルドの偉い人と対等に渡り合えるとしたら国王含めた王族を除いたら公爵くらいじゃないか!』
それもそうなんだが、まさかここがギルドの本部なのか。
塔型のダンジョンかもとも思ってたから、予想が外れた。
だがそうなれば話は早い、全員に声掛けして塔にやって来た。
「既に冒険者でご用事の方はこちらへ!それ以外の方はこちらへお願いしまーす!」
流石にあのデカさの塔の1階部分だけあって広い、そして広いからこそ混み合ってないが列はそれなりに長い。
冒険者用受付を幾つも用意されててそれだ、増えてるのは本当なんだろう。
……だが俺が気になったのは案内してる金髪金目のあの子。
犬耳犬尻尾生えてますが!!?
「デクスターさん、あの種族……」
「所謂獣人族ですな、大陸南方面には住まわっているとは聞き及んでおりましたぞ……」
「ほほう……」
この手の他種族の話題が好きだった覚えがあったデクスターさん、流石です。
美男美女にケモミミシッポ生えてる世界、実現していたのか……俺は余りにも情報無さ過ぎて悩ましいぞ。
「あら、お客様は獣人とお会いになるのは初めてですか?」
「はい、実はそうなんです」
コソコソ話してたの聞かれてる、耳が良いね。
でも特に気にした様子なく笑顔で話しかけてくれる、素敵です。
……コーデリアとエレンとサジェリアが俺に強い視線寄越してる、今日はカラカラ確定だな。
「おいおい、獣人族見たことねぇって何処の田舎モンだよ」
「あっ、サイラスさん!」
おっと会話中乱入イベント発生だ!
しかし相手は獣人で男性、強面の土佐犬おじさんって印象だ。
「見たところ今日来たばっかりだろ、そして登録か?まぁそりゃそうか、しょせん田舎────」
「サイラスさん」
「────ッ!」
「お願いだから、失礼はやめてね?」
「……ちっ」
……サイラスおじさんは去っていったが、この人やるな。
サキの解析通りならおじさんにだけ分かるレベルで威圧したみたいだ、人は見かけに寄らないってな。
「ありがとうございます」
「いえいえこちらこそ、穏便に済んでなによりです」
こうした背景には珍しくデクスターさんが“拳を握った”事に起因している、彼女にはそれでデクスターさんの実力が分かったから気づいてないおじさんを追い払ったわけだ。
マジで有能だわ、これが冒険者ギルド本部スタッフ。
「折角の縁ですから、お名前をお聞きしても?」
「はい、ベティと申します」
優雅に礼を取る、実は良いところの出説あるベティ嬢。
「それで実際の所は登録なのですか?」
「ええ」
「でしたらあちらですね、ではまた」
俺は彼女に手を振ってるとコーデリアに痛くないけど衝撃がくる肘打ちを食らった、加減が絶妙すぎる。
それから俺達は冒険者登録の為に列を並び出した。
*************
登録に関しては難しい事は無かった、若干待ったが苦じゃなかったし。
これで使い魔のサジェリアは除いて全員がそれぞれ“冒険者カード”を獲得した、デクスターさんは精霊だが限りなく人って外観だからこそだな。
『冒険者カードを作り出すのも、魔剣と大別的には一緒の魔具って物でやってるんだよ!魔具はかつて存在した神器が原初らしいから、さぞ色々な能力を持ってたんだろうね!』
ナビたすかる。
この冒険者カードに情報を記載していき、ギルド貢献度なるものや一定条件を満たすとランクが上がって行くそうだ。
最初は皆“ポーンランク”これはどんな物でもそうで、そこから“ナイトランク”、“ビショップランク”、“ルークランク”、“クイーンランク”、“キングランク”となる。
そしてクイーン以降は特権階級、つまり貴族に相当出来るレベルで権限があると言われる。
ただクイーンなのに男爵と下級貴族相当で、キングなのに伯爵と上級貴族相当だけど名前負けって感じてしまうのが何とも。
「キングランク冒険者には序列があるそうですが、いっそ全員目指してしまいますかな?」
「いいわね!」
「実は俺が一番難易度高くね?」
何でかって?
神器であるサキやその能力を出したら召喚者だとバレて面倒待ったなしだからだ、どうしようもない時は仕方ないだろうが可能なら避けたい。
俺はまだ皆と自由に冒険したい、そんな気分。
「アユム様なら強くなれますぞ!」
「そうよ、鍛えましょう!」
「勿論頑張るけどさ、やれやれ……」
「アユムさん、いつでも私がいます」
「わたくし、あまやかしますの〜?」
「あっ!」
ああ、二人くっついてくる。
いい匂い、安心する……。
「むむむっ、後で覚えておいてよ……」
「アーメン」
デクスターさん、俺が教えた事だけど十字切らないで。
宿は約束通り……より更にしっかりした完全防音で部屋を取り、飯を食い終わった後デクスターさんは「では情報収集に行って参ります、お別れです!」と風のように消えた。
え?そこから?
3人と完全防音部屋に入りました、ふふふ……このままでは終わらんぞーっ!
ツボ→割ったらお金が出るわけないじゃないですか、ファンタジーやメルヘンじゃああるまいし
防音→当然安いところだとガバガバなのは地球と一緒、ゆうべはお楽しみでしたね
獣人→カノスの獣人は魔力容量は普通に豊富です、しかし属性魔法の才能があった時に極端な配分だったりします




