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水筒とダンジョンと情念

「よし、無事に降りれた」

「ありがとうございますの〜」

『オヤスイゴヨウサ!』

「お嬢様も問題なく」

「これくらい何ともないよ、それより……」


俺はサジェリアを抱えながら、自立機動した神器ちゃんに掴まって崖下へ降りた。

大丈夫だったのはサジェリアが軽いのと、自立機動中に主である俺は自重の負担が無くなるのだそう。

コーデリアは精霊としての力をある程度取り戻したデクスターさんに、しっかり抱えられながら降りてきた。


「行くぞ、ダンジョン」

「ええ、触りでいいからどう言う状態かは確認しないとね」

「皆様をお守り致しますぞ!」

「ほじょはおまかせですわ〜」

『マスターハ、ボクガマモルモンネ!』


入口には階段があって人の手が入っているかのようであり、どうぞこちらへとばかりに整然としている。

そして下りきると(つた)が生えた壁の通路があり、蔦の花が光源として緑の光を放ち照らしている。

足下は手入れされたかのような芝が生えていて、温度としては外より温かいほどだ。

これは……このダンジョンがそう言う特性を持ってるから、ってのを表しているのか?

考察のし甲斐がありそうだが、同時にここが危険地帯である事を忘れてはならないなぁ。


「ではこのまま私が先頭を、殿(しんがり)をアユム様にお願い出来ませんでしょうか?」

「ええ、任されました」

「ごめんなさい、わたくしがもうすこしたたかいがとくいでしたら……」


気にするなと言う気持ちを込めて撫でてやる、テイムは使い魔を急激に強化するような物ではない。

そしてそれぞれに得意不得意がある。

前回の呪い戦がそうだったが、そもそもドリアードが補助向きな魔物だからな。

先頭のデクスターさんが正面を警戒しながら進んでくれてるし、他の方向へ目を向けていく。

神器ちゃんは情報解析をして、迷わない様に頼む。


『ハーイ!』


偉いぞー、凄いぞー!

こうする事で神器ちゃんが得た情報が俺に提供されていく、つまりは地図化(マッピング)

ゲームのミニマップの様に片隅に間隔を置いて表示されていくダンジョン内の道のり、遭難の危険は少ない方が良いからね。


「ふむ、この反応は……やはり“グリーンスライム”ですな」

「おお、最初の遭遇(エンカウント)ね!」

「このこはまだかわいいですわ〜」


で、出たーっ!

ファンタジー物の王道魔物の1体“スライム”!

カノスでも最弱の烙印が押されてるの?


『ヨワイケド、コノコハダイジナヤクワリガアルヨ!』


どうやら地上では緑が何かしらの原因で大幅に減った時にやって来て、敢えて命を落として自らが自然の苗床になる事があるそうだ。

カノスってこの世界でかつ意思を持ってて、召喚対象に俺を選んだんだもんな。

地上のグリーンスライムがそう言う動きをするのは、カノスが自浄するためだったり?

って考えてる間にデクスターさんが真っ二つにした。


「浅い層です、このぐらいでしょうな」

「次あったら私がやってみたいわ!」

「お嬢様がですか?まぁ、あれぐらいならば……」

「よーし、どんどん行こう!」

「基本は後ろです、頼みますぞ」


昔からの主従が仲良さそうで何より……。


「おっとアユム様、こちらの魔石を保管していただけませんか?」

「えっ、ああ!魔物の身体の中に魔石が内包してんでしたね!」


そうそう、魔石の存在があったわ。

緑で非常に小さい石だが、こっちが保管しとく方が邪魔にならんか。


『マッテ!マセキハ、サジェリアニアゲテヨ!』

『えっ、メリットあるん!?』

『タベルトスコシズツダケド、ツヨクナレルンダヨ!』

『ダニィ!?』


それ知らなかったよぉ!

早速魔石をサジェリアにもぐもぐさせる、後に続け!


「すみません、どうやら魔石を食べるもサジェリアって強くなれるらしくてですね」

「そうなの!?」

「存じ上げませんでしたぞ!」

「わ、わたくしが……つよく……」


皆知らなかった!

神器ちゃんありがとな、レア情報たすかる。

くるくる上機嫌に回る水筒に微笑ましさを覚えながら、屈んで魔石をサジェリアに差し出す。


「あーん」

「はわっ、あ、あーん」

「なっ」

「うむ」

『ナム』


魔石を口に含みころころと味わったあと、ゴクリと飲み込む。

頬を染めて両手で抑えて、嬉しそうにしている。

そんなに美味しいの?


「うふふ……よろこびいっぱいですわ〜」

「そっか、よしよし」

「あら〜、ですの〜」

「くっ、いつか私も!」

「その意気です、お嬢様」


その後は道が分かれている場所を何方(どちら)に行くかで一悶着あったり、大きな種子に軟体動物が寄生してる“イビルシード”って言うキモい魔物が出て大騒ぎになったりした。

そうして危なげない冒険を終えた所で、先が見えた。


「階段ですな」

「下の階の調査は、万全じゃない今は流石にリスクが高いわね」

「わたくしもそうおもいますわ〜」

「経験者は語るってな」

「ですの〜」


帰ろう、帰ればまた来れるから。

全員で目を合わせて、今度は俺が先頭になる。

神器ちゃんミニマップでどう帰るか分かるもんね。


『マスター!!』

「あゆむさま……!」


────瞬間、走る血飛沫(ちしぶき)

巡る嫌な予感、だが飛び込んできた景色は!


「やっと、少し恩を返せたわね!」

「ワオ……」


返り血塗れのヒロイン(コーデリア)が得物片手に満面の笑顔を浮かべている姿であった。

あ、焦った〜!

チラリと彼女の足下を見ると、カモフラージュ率が高そうな緑色のヘビだった。


「お嬢様!今の太刀筋、素晴らしかったですぞ!」 

「言ってたでしょ!今の方が体力ある気がするって!」


あー……どうやらマジで、呪いの負荷で知らない内に鍛錬(トレーニング)されてたらしい。

コーデリアは俺の知る範囲では戦う系美少女では無かった、だがそれが今変革しつつあると言う事だ。

へへへっ、これでまだ呪いが残っている……無くなればどれ程の強さとなるのか、楽しみだぜ。

一方で俺自身は特別強い訳じゃない、努力すれば将来は分からんが少なくとも今は弱い方かもしれんな!

……そう思っとく。


『ゴメンネマスター、ボクユダンシテタ……』

『いや、こっちこそだわ』


今回はどっちも反省点あるのかもしれない、だが神器ちゃんに沢山助けられてる以上俺も努力しなきゃな。


「たすけがおくれ、もうしわけありませんの……」

「俺も油断してた、んで助けられたからいいさ」


健気なサジェリア、自分なりに最大限頑張ってて良い子だ。

……さて。


「ありがとうコーデリア!マジで助かった!」

「あっ、アユム!どう?私も役に立つでしょ!」

「ああすげーよ、だからこそ俺も触発された」 

「ふぇ?」 

「ですの?」

「……なるほど、そう言うことですか」


まぁ分かるよな、デクスターさん。

同じ男として、今の俺の心情。

事情はあれど大の大人が、ギリJKぐらいの子に守られたんだぜ!

意地があんだろ!

男には!


「鍛えてください!デクスターさん!!」

「えっ、アユム!?」

「あゆむさま……?」

『マスター、オトコノコダネ!』


今回の件についてコーデリアは当然として、サジェリアや神器ちゃんも頼れない!

貴方しかいないんだ!


「私は今猛烈に感動しております……召喚者として強力な神器を授かる、人によってはそれで満足して歩みを止める方もいる事でしょう」

「……かもしれませんね」

「ですが貴方は戦いに向いた神器を授かった訳でもないにも関わらず、己の欲望を満たす事のみに使わず誰かの為に戦い救い……あまつさえ自分に足りない物があると感じた時は、それを得る為に苦労は(いと)わない!」

「ええ、俺足りないって気づけました……だからこそ!」

「畏まりました、この不肖(ふしょう)デクスターがアユム様を男……いえ“漢”にして差し上げましょうぞ!」

「デクスターさん……いえ、師匠!!」


肩を叩かれ、燃える彼の瞳が俺を射抜く。

俺は誓う。

召喚者として、コーデリアの仲間として、何より“漢”として恥ずかしくない“強さ”を得てみせると!

困惑する女性陣を横目に熱く語りながらダンジョンから帰還、昼食後から夕食後まで特訓してた。




*************




そして現在、俺達は精神世界にいた。


『ウオオオオッ!師匠ォ!』

『任せい!我が弟子よ!!』

『ナ、何ダコノ暑苦シイ思念ハ!?』

『我ラガ一人二圧サレテル、意味不明』

『おじいさま、すごいですわ〜』

『ヤツラニハ、イマノフタリハゲキドクダネ!』


コーデリアの右脚足担当の2体分の呪い、しかも手腕より大きい分あれらより格上だ。

だがこっちはサジェリアと師匠がいて、神器ちゃんの出力や戦略も大きく向上している。

だが何より穢れた呪い共など、この熱く燃える様な心の情念(パトス)の前じゃ無意味だ……!


『準備します!持たせてください!』

『承知!』

『サジェリア、連結(ドッキング)だ!』

『いきますの〜』


前回よりスムーズに連結出来た、良いぞ!


『神器ちゃん!“氷水(ひょうすい)”噴射だ!』

『ウェッ!?ッテ、トッサニスゴイノオモイツクネ!』

『いったいなにをしますの〜?』


神器ちゃんは“温度変更”で以前はお湯と冷水までしか出来なかったが、前回の成長後熱湯と氷水に変更出来るようになっていた!

俺は呪いがいる方ではなく、別方向へ噴射。

すると氷水が一箇所に溜まって凍っていき、巨大な氷塊を作り上げる。


『“筒内収納(ボトルストレージ)”!』

『ヘイ、カモンカモーン!』


神器ちゃんの飲み口から氷塊を回収、その後自立機動と俺の気合でスピードを上げて(さそり)蝙蝠(こうもり)に変異している呪いの上空まで行く。


『師匠!!』

『来たか!弟子!』

『『ハ?』』


神器ちゃんの中から氷塊が放たれ、それに掴まってそのまま呪い達に突っ込む!

奴らは急に巨大な氷塊が上から降ってくる状況に、完全に面食らってるようだな!


氷塊(アイスブロック)だッ!!』

『『ヌッ、グオオオオオオオ!!?』』


もう遅い脱出不可能よ!


『ぶっ潰れろぉおおおおおおおッ!!』

『私の拳も受けて消えるがいいッ!!』

『ニゲバハナイヨ、トドメクラエ!!』

『すっ、すごいじょうきょうですわ〜』


俺は蔓のパワードアーマーで殴りつけ、師匠は素で百裂拳をぶちかまし、神器ちゃんは自立機動で回り込んで横から水をかけている。

こうして呪い達は哀れにも敗れ去ったのだ。


『ふぅ〜、何かスッキリしましたわ』

『えぇ、私もです』

『もとにもどられましたわ〜』

『ココマデイロイロアッテ、タマッテタンデショ』


それは否定しない。

自身の無力さ、暴君への怒り、仕事疲れと二人共共通点ある気がする。

俺の場合は……別の意味で発散してなかったのもありそうだが、そこはどうしようもない。

────それはそれとして、無理しない程度に特訓して貰うつもりだ。

命あっての物種だ、今回のダンジョンはそう実感した。

蔦→余りにも生命力が強すぎる、修正が必要だ


漢→男の中の男、すごい男だ…


氷塊→雪国の冬は軒下にご注意ください、マジで

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