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水筒と変化と調査

デデン、異世界カノス生活4日目。

新しい朝が来た、希望の朝だ。


「おはよう」

「おはようございますわ〜」

『オハヨウ、マスター!』


起きたらサジェリアがくっついて寝ていた、一応コーデリア案で俺が使ってる方の隣のベッドに寝る事になったはずだが……まぁこの子がいたからあんなに楽勝で呪いに勝利出来たのだ、好きにさせようか。

そして神器ちゃんが元気いっぱいだ、以前が感情表現が薄かったばかりにギャップすげぇ。

だがそれがいい。


「ほれ、拭き拭き」

「きもちいいですの〜」

『イイナァ〜、ツギボクモフキフキシテヨ!』

『あ〜、分かった分かった』

『ヤッタネ!』


サジェリアはどうにも世話を焼いて上げたくなるな、可憐(かれん)な容姿が庇護欲(ひごよく)をそそるのだろう。

それでいて相手が辛そうな時は母性に近い心への寄り添いを発揮し、癒やしてくれるからな……たまらねぇぜ!

しかし神器ちゃんは甘えたがりなのか、はっきりとした人格が形成された今(ようや)く判明するとはな。

水筒をタオルで拭くのは別に違和感無い事だし、自……愛する様な感覚と思っておこう。


『フフー、ボクヲキモチヨクゥ、ナグサメテネ!』

『おいバカやめろ』

『キャハハ!』


昨日にセクハラどうこうとか一瞬頭過ぎったのも知られてるから、面白がって煽ってきやがる。

ガキが……いつもありがとな。


『……ウン』


照れてやんの。

寝巻きからジャージに着替えて、寝室の扉を開ける。

すると遭遇した、めっさ上機嫌な侍従殿だ。


「おはようございます、アユム様!」

「はい、おはようございます」

「おじいさま、おはようございますわ〜」

「ええ、サジェリア殿もおはようございますぞ!」


昨日の神器ちゃんブラスターで2体分まとめて呪いが消し飛んだお陰で、大分力を取り戻したらしいからな。

3割強とか言ってたっけ、この人が今後は味方として参戦してくれる。

頼もしいね。


「アユム様に申し訳ないですが、早速お湯張りの方をお願いいたします」

「ええ、行きましょうか」

「お〜、ゆうがですわ〜」

『ノロイテキニモ、オンナノコテキニモ、ダイジダモンネ!』


昨日の戦いで神器ちゃんは“超強化”されたが、まだまだその要素が存在する。

その一つが“魔力削減(コストダウン)”だ、神器ちゃんが扱う魔力に関連する物の消費魔力量が減った。

お陰でもっと手軽に水が出せる、当社比25%くらいのダウンかな。

だからこうしてコーデリアが神器ちゃん朝風呂をしてもらえる、お肌的にも呪い弱体化的にも効果がある事だし積極的にやっていこう。


「ありがとうアユム、本当に貴方が来てくれて良かった」

「どういたしまして、俺としても君に出会えたのは幸運だって思ってる」

「えへへ……うん!」


確認したが両腕にあった痣は綺麗サッパリ無くなっている、じっくり確認したことはないが後あるのは両脚足(りょうきゃくそく)と腹部と胸部。

……胸部。


『スケベ〜!』


うるせぇー!

知らねぇー!

思い浮かべちゃうくらい魅力的なんだからしゃーないやん!

コーデリアとお手々フリフリして別れて、俺達は裏庭へ向かう。


「おっ、来られましたな」

「デクスターさん、めっちゃ取ってきましたね!」

「このくらいは朝飯前ですな!」

「もりもりですわ〜」


デクスターさんが楽しそうで何よりです。

俺達の前にはキノコやらフキノトウ等の大量に盛られた山菜の山、運搬に関しては面倒だろう。

だからここで出すか、“筒内収納(ボトルストレージ)”を!

頼むぜ神器ちゃん!


『マッカセテ!ソレー!』


魔力を若干消費して、生物(せいぶつ)以外なら飲み口から吸い込んで収納したり出して配置できる能力だ。

山菜達はあっという間に、神器ちゃんの中に収まった。


「ふしぎですの〜」

「あれ程あった物が何処に消えるのか、さっぱりですな」

「神器ちゃんは水筒の形をしているだけで、見た目通りではないですからね」

『イクラデモハイルヨ!』


2L(リットル)水分が入る想定の器が、ファンタジー物で良くある空間魔法の如くホイホイ物を保管する様は正しく幻想(ファンタジー)だ。

今度は裏庭から倉庫に入ると、デクスターさんが拝借してきた食材がある。

普通問題がありそうだが、あの脳筋帝国の方々は若干数が合わない程度は気にしない方針みたいだ。

と言うわけでそちらも収納し、今度は食堂で配膳をしよう。 


「サジェリア、食器並べてくれー!」

「かしこまりましたわ〜」


サジェリアは器用に蔓を操り、俺達が食堂のキッチンから出した食器を集めテーブルに並べて行く。

えらいぞー!

デクスターさんがコーデリアを迎えに行ってる間に、新たな能力“筒内料理(ボトルクッキング)”の出番だ!


『レッツ、クッキング!』


神器ちゃんの中に収納した食材を、レシピを指定して魔力を消費して料理!

空中で自立機動で浮かびあがり、振動して頑張っている。

俺は暫く座って待ってる時間だ、膝に乗っかってきて身体に頬ずりしてきたサジェリアを撫でる。

のんびりしてると……。


「あっ、ズルいよサジェリア!」

「つかいまのとっけんですわ〜」


火照った顔でバスローブ着たコーデリアがデクスターさんを伴って現れた、ほかほかおっぱい。

あのロマンスグレー後ろでサムズアップしとる、とりあえず返しとこう。


「しかたないですの、こうたいですわ〜」

「お?」


おろろ、気を遣った感じか?

って言ってもコーデリアが乗ってきてくれるかは……。


「え、えへへ……だめかな?」


……高校生の時、声優の存在の影響で演技に興味を持って演劇部に入っていたんだ。

中学生の時は剣士に憧れて剣道部、男だらけでむさ苦しかった。

演劇部には当然女子だっているし、2年生からは後輩だって出来た。

先輩方は俺より経験あるわけだし慣れてるが、俺は演技中は兎も角普段の後輩女子との距離感が分からず戸惑っていることが多かった。


『筒井先輩!筒井先輩!』

『お、おう……どうしたんだ?ん?』


ある一人の後輩女子が俺の側に寄ってくる事が多く、低い背丈で身体に頭をくっつけてきた。

どうするべきか分からず、実家のペットにする感覚で撫でていた気がする。

それが春夏秋と続いた後、顧問から声が掛かった。


『あいつの家は母子家庭でな、甘えたい盛りで父や兄がいないからお前に依存してるんだろう』

『えっ、あっ、そうだったんですか?』

『お前の話ばかりするから、向こうの母親が心配してるし……何より部内で“不純異性交遊”の疑いをしてる奴が、裏にそれなりの数いる』

『俺はそんな!』

『分かってる!……だが、今後は甘えられても安易に撫でるのはやめとけ』 

『……分かり、ました』


その日からどれだけ彼女に甘えられても撫でなくなったし、演技以外では距離を置いた。

それから翌年の春に後輩女子は部活を退部する事に、理由は“家庭の都合で”だった。

その後クラスの教室に彼女が現れて呼び出され、屋上に二人でいてこう言われた。


『先輩の事が好きでした……でもお母さんに男はすぐ裏切るから駄目って言われて……だからありがとうございました』


彼女が真に依存していたのは、男に裏切られ心を病んだ母親だったのだとその時気付いた。

だが俺にはどうする事も出来ず、彼女は高校を中退した……母親が働けなくなって、自分が働くことになったのかもしれないと誰かが噂した。

俺は多くの人間が持つ見方が、当人達の心を正しく理解している訳では無い事。

そして好意を表す事と、依存しての行為は見分けがつかない事があると学んだ。

サジェリアは依存でないことは分かる、ならコーデリアは?

……いや、そうだったとしてやる事は変わらないか。


「────おいで」

「うん!」


素直か。

いやぁ、めっちゃ距離近くなってるよなぁ。

俺の上に横乗りする形で凸凹凸(ボンキュボン)のヒップが膝に、バストが身体に!


「凄く、安心するね」

「そう、だな……」


サジェリアと差をつけない為に、コーデリアの頭も撫でると、嬉しそうに同じ様に頬ずりしてきた。

俺と彼女の関係がどうなって行くのか、それは未来が見える訳でもないから分からない。

だが少なくともコーデリアと契約で繋がりがある、あのデクスターさんが心から嬉しそうにしてるんだ。

大丈夫だろ。

呪いの総量が削られお風呂で弱体化していたお陰で、暫くイチャついてる状態だったが神器ちゃんが止まった。


「はい、おしまい」

「うん」


少しだけ名残惜しそうだったがすんなり降りてくれた、よし後は仕上げだけだぜ神器ちゃん!


『モリツケダー!』


モリツケダァ…。

こうして神器ちゃんの成長して強くなった神聖性を纏った温かい料理や飲み物達が、皿に盛り付けられていく。

お疲れ様、神器ちゃん。


『マッタクゥ、マスターハボクガイナイト、ダメダメナンダカラ!』


おっしゃる通りで、マジリスペクトっす。

そうして皆でそれぞれの場所に座り……。


「「「いただきます!」」」

『ドウゾメシアガレー!』


お食事を開始、と同時にやらなけばならない事があるな。


「では!サジェリアが逃げてきた“ダンジョン”対応会議を同時開始します!」

「いよっ!」

「「おー」」

『ワーイ!』


そう、それがあったんだよな。 




*************




サジェリアが何故館の裏庭、それも塀の側で昏倒した状態だったのか。

実はテイムした当日に理由は既に聞き及んでいた。


『わたくしがうまれたばしょが、こわくてにげだしたのですわ〜』

『えっ、それって……』

『だんじょんですの〜』

『『『だ、ダンジョン!!』』』


俺としてはダンジョンと言う概念が存在してる事も初耳で、それの危険度から洒落にならんレベルでサジェリアが危機一髪だったと理解した。

そして二人からすれば住んでる館の近場に、知らないダンジョンが有ったのもショックだったろう。

その場は混乱も多くとりあえず保留となったが、翌日会議からの調査と相成った。

神器ちゃん、方角はこっちで良いんだな?


『ジョウホウドオリナラ、マチガイナイネ!』

「神器ちゃんの解析と案内通りなら、こっちで大丈夫みたいだ」

「神器、ちゃんってそんな事まで出来るのね」

「感知能力が弱体化していた為とは言え、不覚!」

「よしよしですわ〜」


サジェリアの肉体、魂、魔力を能力情報解析(スキャン)で魔力の波長?とやらが似ている非常に大きな何かが、こっちの方角にある事を掴んだとか。

コーデリアは純粋に感心しているが、デクスターさん的には自分が何も見つけられなかったのが悔しいご様子。

だがそれでいて周囲へ警戒を怠っていない、有能。


「しかし端からコーデリアを一人にするつもりはないけど、体調とかは大丈夫だよな?」

「それがね、聞いてよ!」


お?どうしたね?


「呪いを受ける以前と今だと、明らかに今の方が体力がある気がするのよ!」


なん、だと……?

まさかそれって……。


『マスター!ワルイケドモウツイタヨ!』

「えっ、あっ!」

「こ、これが……ッ!?」

「うぅむ……!」

「もどってきましたの〜」


裏庭から更に木々の間を縫い歩き、森を抜けた先の崖の下にそれはポッカリと口を開けていた。

しかし呪いと違い穢れてはいない。

ただ生きる為に誘い、招き、狩る……そんなカノスにのみ存在する、大自然の純粋たる殺意を感じた。

山菜→館は現在深刻な野菜不足、大半のリーデン帝国人が肉食動物みたいな奴らであるせいもある


自立機動→神器ちゃんはオールレンジ攻撃可能、ただ勢いを出し過ぎると吹っ飛ぶので注意


ダンジョン→何かしらの理由で大量の魔力が一処(ひとところ)に固まる事で発生し変容(へんよう)誘引(ゆういん)する、中で生まれる魔物同士は味方ではなく頻繁(ひんぱん)に命のやり取りが発生する危険地帯

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