1.始まりはいつも強引に
4月、新しい出会いと新しい生活が始まる季節。
『市立もえぎヶ丘高校』に入学した小野瀬 五月は割り振られた教室で最初のホームルームを受けていた。
担任からのやる気があるんだかないんだか分からない意気込み、今後の予定などひとしきり話が終わると定番のアレが始まる。
そう、自己紹介だ。
無難に趣味や特技を言う生徒、失笑必至の一発ギャグを披露する生徒など今後のクラスカーストを決定づける瞬間でもあるかもしれないこのくだり、絶対に失敗してはならない。
「小野瀬 五月です!趣味は音楽を聴くこととゲームをすることです!」
普通だ、あまりにも普通。良くもなく悪くもない。
しかしそれは仕方がないことで、友人関係も運動も勉強もすべてが平均点なのだ。
何とも言えない空気が流れ、何事もなかったように自己紹介が続いていき全員が自己紹介を終える頃にはクラスの雰囲気も少し和やかになっていた。
「じゃあ最後に部活動についてだが、うちの学校では全員が必ず部活動に参加する必要があるので決めておくように」
「今日はこのまま下校だが、校門で部活勧誘が行われるから気になった部活があれば話を聞いてみるといいぞ」
部活か。
小中ではとりあえずバスケをやっていたが別に好きというわけでもなく、なんとなくやっていただけだ。
高校からは特に何部に入るかも決めていない。
ホームルームを終えた後の教室で近くのクラスメイトとの交流もほどほどに校門へ向かうと、手作りのプラカードやチラシを持った生徒やユニフォーム姿で必死に声をかける生徒で溢れかえっていた。
もえぎヶ丘高校は部活動が盛んで数も豊富のようだ。中には何をする部活なのかさっぱり分からないものもある。
各部活の勧誘の勢いに押され気味になりつつ、人の波を抜ける。
「部活、多すぎじゃないか…?」
一息ついたところで後ろからポンと肩を叩かれる。
思わず振り向くと、茶色の髪を肩口で二つ結びにした女子生徒。
そして手にはプラカードを持っている。
「君、星に興味はないかい?」