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もう帰っていいですか  作者: 倉名依都
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20.エピローグ:マユを探して

このページの、エレクトラとオクタビアの祖父に与えられた伯爵位の名称を変更しました。第三部の「おだまり!」の名称に合わせ、アエニアス(銅の)から、ネイキコンデに改めました

厳しい冬を蒼天城で送り、甘やかな風が吹く春、第二王子とシュリンの結婚式が行われた。

双子の娘をブライズメイドにして長いベールの裾を任せ、父ジョットリニ子爵改めネイキコンデ伯爵に右手を預け、王宮内の式典室に敷かれた絨毯の上を微笑みながら歩いた。

父・オーサー・モンスコンデは、王子の妻の父としての格を守るために伯爵の称号を受け、娘の身分と格式を保持するために一代限りにおいて王家の所領から豊かな量を選択、領名を変更してそこからの税収を受け取る権利が与えられた。一代限りのことなので、領の管理は今まで通り王宮で行う。

結婚の署名の後、オクタビアとエレクトラの正嫡直しが行われ、その後直ちに領地を持たない侯爵位を賜って王宮騎士として臣籍降下した。

これを以て、王国に女性騎士団の結成が約束され、発足のための準備委員会が置かれた。



エレとタビーは、オーサーを護衛にして「修行の旅」に出ていた。

母シュリンの静かで清々しい結婚式に出席した後、王宮での女性騎士団結成の準備が終わるまでの、タビーの望みをかなえるために魔獣の森へ踏み込んだ。

女性侯爵ふたり、近未来の女性騎士団の団長である伯爵の旅だ。簡単には許しは出なかった。だが、王陛下の前で魔法剣を披露し、未来の女性騎士団にこの魔法剣を伝授することを約束し、王宮文官団を説得するよう、メーム卿に着せた恩のお返しを求め、ゴリゴリに押し切った。


「魔の森ね、ま、何とかなるでしょ」

あきれた祖父が軽くいさめる。

「エレクトラ、何とかなるって場所じゃないだろ」

「まともに行くからじゃない? きっと抜け道はあるわよ、ねー、タビー?」

「おじいさま、少し前、隣国の第三王子が抜けた道があるみたいなんです」

「ああ、聞いたことがある。確か渓谷を抜けるのだったか」

「そうです、その王子はたったひとりで抜けたそうです。最後は馬を失ったそうですけど」

「渓谷入り口までは相当あるな、サイラギまで行って、そこから回り込むか」

「はい」

「わかりました」

「野営だぞ、全部野営。剣と魔法の修業をしながらだからな、わかっておるな」

「「はーい」」


一行は、エレ、タビー、オーサーの他にサイラギの騎士団が付いている。もちろん、アシアンも含まれている。魔法剣を使える者は、この騎士団以外にはまだいない。

サイラギ村まで北上し、西へと魔の森を回り込み、渓谷の入り口から慎重に南下して行った。渓谷に入ってからは、騎士団全員が修業に励み、手ごわい魔獣を相手に魔法剣の扱いに熟練していった。このメンバーの半数は新設される女性騎士団の指導に、残りの半数はモンスコンデ騎士団に帰還する予定だ。



「ところでなんで魔の森なのだ?」

「それはひ・み・つ、です、おじいさま! ねぇ、エレ」

「女の子の秘密です~、おじいさま!」

美しい双子の孫娘を男装させて、修行中の若者と旅をする老練の騎士となったオーサーはとてつもなく幸せな時を過ごした。無事に王都に帰還したら、折衝と書類仕事の毎日が待っているに違いないから、久々に若い部下を持ったつもりで思いっきり楽しむことにした。



旅を続けて、そろそろ諮問会議の為に帰路につくべき時を迎えるころ、一行は渓谷を抜け、斥候として周囲を確認しに出た従者がケーネ村を確認して帰ってきた。

「えーっと、ケーネ村から真北、魔の森の入り口付近に見慣れない花が咲き乱れる場所があって、水のきれいな池があるはずなの。そこに行きたいんだけど、お願いできる?」

こうして、タビーはマユが初めてこの世界に来た場所にたどり着いた。


花畑の北の端、魔の森の入り口で、タビーは大声で呼びかける。

「風虎の奥さーん、アレグリアさま! お子さまのヴィエントさま、ジェマさま!

坂下こよりといいます、高坂真由さんに会いに来ました! お願いしまーす、横浜の聖マリーン病院に入院していました、高校は名取県立高校です! 取次をお願いします!」

魔の森の藪から、するりと白い虎が出てきた。


「マユの世界から来たのか、横浜と言ったな」

虎の出現に反射的に身構える騎士団に向かって、「聖獣さまよ、落ち着いて、下って」と声をかける。

タビーとエレを残して、騎士団は3mほど離れて遠巻きに立つ。

「はい、えーっと、ジェマさま? ですか?」

「そうよ」

「マユさんと同じく、神さまに転移させていただいてこちらに来ました、マユさんとお会いしたくて、ミリカンジャ国から魔の森の渓谷を抜けてきました。取り次いでいただけないでしょうか」

「ここで待ちなさい」


祖父と騎士たちには、夢で神さまが会わせてくれた異界渡りの人がこの奥にいる、薬を作っている人で、会いたくてやってきたと簡単に説明をした。聖獣の護る女性だということで、渋々ながらも控えてくれた。


森の中から、両脇を聖獣に守られて、すらりとした女性が現れる。

「あの、初めまして、坂下こよりと言います」

こよりが頭を下げた。

「高坂真由です。あなたも転移?」

「はい、神さまからマユさんのお話を聞いて、この」

と、エレの背に手を掛ける。

「エレクトラと双子の姉妹に転移させてもらいました」

「ほんとうにそっくりねぇ」

「あの、お話をしていただけませんか?

私の話も聞いていただきたいですけど、マユさんのお話をぜひ聞かせてください」


こうして、この世界の神が招いたふたりの日本人は日本の話とこの世界の話で何日も盛り上がった。夏の会議に遅刻しそうになった一行はマユの転移魔法で王都の薬師キルエットの館に転移、そこからキルエットの転移陣でミリカンジャ王宮へと移動していった。

マユとこよりがこの先何度も会って助け合うことは言うまでもない。



Thank you, my friends.

This is titled “Your Perfect Copy”.

Written by Granite


お読みくださって、心から感謝しています。

このお話は、三部作の真ん中です。ひとつめは高坂真由の「イヤです」、ふたつめは坂下こよりのお話、最後が高校男子が公爵令嬢に転移して、公爵令嬢が侍女になる(アイディアはすでにこよりと神さまの会話の中に含まれています)お話です。


こよりのお話では貴族制について少し突っ込んで書いてみました。歴史上の王政・貴族制に異世界感を混ぜ込んでいます。

お話を書くことにもだいぶん慣れてきたので、次は一人称にもトライしてみたいと思います。公爵令嬢に転移した高校男子の一人称とか、トライし甲斐がありそうです~、がんばるぞ~。


またお会いできますように、

倉名依都


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