ルアー
真っ暗な夜の病院の廊下を音もなく我らは歩く。
「うでのこは、午後3時ごろに南区三番通りで見つかりましたが、大怪我を負っているため近くの病院に入院しました。」
ニュースキャスターが切迫した様子で、原稿を読み上げる。
その様子を映す警備室のテレビを横目に我らは目的のものを持つもの、うでのこところに向かう。
あの方が完璧になるために必要なもの。
神の一部になるのだとしたら喜んで差し出すだろう。
我らは、ハッキングして手に入れた情報をもとに、部屋にたどり着いた。
途中警備員なども居たが、我らの念力やスライムを前になすすべもなく倒れてくれた。
弱すぎるおかげで手間が省けた。
鍵のかかった病室のスライド扉を、音を立てながらこじ開ける。
その音で、うでのこが起きる。
腕の子は頭全体に包帯が巻かれていたが、
写真でみた筋肉質で関節のある腕は無事なようだった。
うでのこは怯えて、震えた声で我らにはなしかける。
「あなた方は、病院の人ではないですね。いったい、何が目的なのですか」
「うでのこよ。あなたの腕を神のために献上しませんか。腕があればあの方は完璧になれる」
うでのこは我らをじっと見据える。
「嫌ですといえば、あなた方は何をしますか?」
「なぜ、拒みますか。腕をなくすことの痛みが怖いのですか?
なら大丈夫、すぐに終わらせますから。」
我はスライムを刃物のように伸ばして振り下ろす。
しかし、腕はきれなかった。無くなっていた。
うでのこの腕が黒く溶けて、我のスライムを止めていた。
「あーあ、手を出しちゃった。」
息をする間も無く黒が我らを襲った。
大蛇のように体を縛り上げられた。
我ら、五人を空中に浮かす。
「腕が欲しいなら、奪うんじゃなくて」
黒がまた腕の形を取る。
「作るって考えはなかったのか」
後ろから声がし、振り返ると写真で見たうでのこが立っていた。
憐憫の目で我らを見る。
「「さっさと、お仲間とボスがいるところを教えてください」」