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序文 悪魔の誘惑
それでは私めが、お可哀想なお嬢様に、たくさん気持ちのよいことを教えて差し上げますね――…。
細くて長い指先をこちらに伸ばし、林檎酒を注いだような瞳を細めて嗤う、悪魔。
この大陸の人間とは違う色の肌。褐色の肌に小麦色の髪。薄いのに官能的なくちびる。長い首。すらりとしなやかな手足。厚くはないけれど薄くもない体は美しい獣のようで、均整がとれている。どこか造り物めいた、理想を形にした神話の登場人物の彫刻のような、この大陸の人間とも異なる体型。異邦人。
甘い死臭を漂わせる、信仰を違える、異端の者。
そのおぞましい手を、取った。




