勇者よ、この剣を使い魔王を倒し、世界に平和をもたらすのだ。
短編をいくつか出していますが感想を貰えるようになりました。
本当に感謝です。
「貴殿が勇者アレクが。待っていたぞ。ようこそ。ブルオス王国へ。歓迎しよう」
私は、ブルオス王国の王、ブルオス14世。かつて私の祖先、ブルオス1世が建国し、商売や貿易が盛んな今尚繁栄する大陸一の王国だ。我が国には時が来た時にある重要なことを行う。それは……
「貴殿が来たということは時が来たということだろう。我の前に姿を現したのがその証拠だ。この城には古より伝わる剣、ジャスティスソードが宝物庫に収められている。ジャスティスソードは我の先祖、ブルオス1世が魔王を倒した時に使用した剣であり、我が国の宝だ。そして魔王が復活した今、託すべき勇者が現れ、剣を渡すようにと言い伝えられている。これを貴殿に託そう。勇者アレクよ、その剣を使用し、世界を救って見せよ。そして無事に生還し、魔王を倒すのだ」
……決まった。
よし。リハーサルは完璧。
私の祖先はかつて魔王を倒した勇者だ。その時に使った剣がこのジャスティスソード。見た目は少し細めの刃だが切れ味はとてもよく、鍔は鳥の羽を模してできている。全体的に光っていてどこか神々しい。
魔王討伐用に作られ、闇を切り裂き、光を照らす希望の剣。そして討伐後いつ魔王が復活してもいいようにと剣を守るために国を建国し、王家が代々管理をして来るべき時に剣を勇者に渡すようにと言い伝えられてる。
まあ本当かどうか知らないし話を多少盛ってそうだけど。
「王様、少しよろしいですか?」
話しかけてきたのは横で見ていた専属メイドのマリー。黒髪で清楚な見た目でありながら真面目に仕事をしてくれる。彼女の家は代々ブルオス王家に仕えており彼女自身との付き合いも長い。
「どうしたマリー? 完璧なセリフに心でも打たれたのか?」
一言言ってセリフとしては自己評価100点満点で完璧だ。後は実際に来た時に言えば済む話。
「いいえ、王様の言葉は完璧です。ですが……」
彼女は一呼吸おいて喋りだす。
「原稿を直視しすぎてこめかみがグニョっとなっております。これじゃあ細かい字が見えづらいだろうなぁという様子が丸わかりです。近くから遠くへ、遠くから近くへと顔や原稿を動かしているの酷すぎです。いくら老眼でも流石にないかと。といかまさかと思いますが本番は原稿読んだりしないですよね? 流石に王様としての品格は保ちますよね?」
やばい。めっちゃ睨んできてるんだけど。怖いんだけど!
でも老顔は仕方ないじゃん。私、現在45歳だぞ。しかも最近年のせいか物覚えが悪くなってきてるし。五十肩も辛いの。年には勝てないの。
というか本番も原稿読む気満々なんだけどダメ?
勇者にバレないように見るつもりなんだけど。
まあでもそうか。動きでばれるよね。よし! アズキルーペ買おう。あとで取り寄せねば。壊れにくくデザインがとてもいいんだよね。しかも踏んでも壊れないし。前に城下町で女の子がお尻で踏んで実演してたてけど素直に欲しいと感じた。え? 違うよ? 決してお尻見てたんじゃないよ? ルーペの性能見てたんだよ。
それに本番は王の間には私と勇者とその一行だけにすればいいし。まあ、うまくやれるさ。なんとかなるなる。でもこの場はうまくごまかせねば。
「ハハハ。流石に本番はちゃんとやるさ。見くびらないでほしいな」
「わかりました。その時には私も立ち会いますよね。王様の護衛はどんな時でも必要なので」
彼女は常に投げナイフを所持しており格闘も強く戦闘力がとても強い。メイドという顔を持ちながら護衛もする超人。
でも今回は違う。護衛という名の監視だろう。しかしまずい。非常にまずい。
……手にカンペ書こう。
「手にカンペなんて書かないでくださいね」
なぜばれた!?
「やはりでしたか。顔に出てますよ。言っておきますけど王の威厳は大事なんですからね。それが勇者の前であろうがなかろうが関係ないです」
「なあメアリー。私は御年55歳のデーベテランだぞ。記憶力も老眼も酷くて酷くて。その上、五十肩だし。正直もう王様引退したい。隠居したい。」
息子もいるから若い世代に後退できるし。いつまでもおっさんが王様なんてだめだめ。新しい世界は若い子が作るの。
しかしそんな顔をした私を見たのか……
「55歳って言うほど大ベテランでは……まあでも仕方ありません。王様が立派にできるように色々お手伝いします。それに剣とかも渡すんでしょう。年々肩が酷くなってるのわかりますし、落としたら大変ですから」
「……すんません」
それから数日後。
「王様、勇者御一行が到着しました」
勇者御一考が到着したのをマリーが教えてくれた。大丈夫、大丈夫練習したから。徹夜してセリフ覚えたし。動きマスターしたし。でもおじさんに徹夜は応えるよぉ。
そして勇者が王の間に入室してきた。いよいよご対面だ。入ってきたのは勇者、格闘家、剣士、ヒーラーの四人パーティー。そして王座の前にひれ伏した勇者御一行。
こういうの地味に緊張するよな。
「お初にお目にかかります。私は勇者クレフ。そして右から格闘家のアダン。剣士のルーカス。ヒーラーのエミリです」
「貴殿が勇者アレクが。待っていたぞ。ようこそ。ブルオス王国へ。歓迎しよう」
よし、まず第一段階クリア~。次、第二段階。
「貴殿が来た時ということは時が来たということだろう。我の前に姿を現したのがその証拠だ。この城には古より伝わる剣、ジョスピ、失礼。ジャスティン、じゃなかった。ジャスティスソードが宝物子に収められている。その剣は私の先祖、ブルオス1世が魔王を倒した時に使用した剣であり……………………
えっと…………あっ我が国の宝だ。そして魔王が復活したとき、これを託しゅべき勇者が現れた際に渡すようにと言い伝えられている。これを貴殿に託そう。勇者アレクよ、その剣を使用し、世界を救って見せよ。そして無事に生還し、魔王を倒すのだ」
途中噛んだりセリフ飛んだけどまあ許容範囲内だよね。
そしてマリーが勇者に剣を渡そうとした。
よし、あとは勇者が剣を受け取って終わりだ。はぁ~疲れた。ってあれ受け取らないの?なんで困った顔してんの?
「えっとありがとうございます。しかし穿設ながら王様、私はこの剣は、受け取れません」
……えっ? 今なんて? いやいやありえへんって。勇者が使った伝説の武器だぞ!?
なんでや!?なんか失礼なことでも言ったか?
攻撃力+150、耐久力150だぞ!?
勇者の加護がついてるぞ!?
よっぽどじゃない限り壊れない代物だぞ!?
しかも滅茶苦茶軽い素材で切れ味が悪くなることはないぞ!?
今なら魔術の効果が10倍するオススメセットがつくんだぞ!?
「えっと受け取れないってどゆこと?」
「あの……本当は私も剣を受け取る予定だったのですが。その……ここに来る途中で堕天寸前の女神サーガ様をお助けして、その報酬として雷神トール様から剣をいただきましてね。これがその剣ですが……ミニョルソードと言いまして……」
勇者が背負っていた剣は人の腰ぐらいある剣はだった。全体的に黒っぽいが少し赤色が混じっている色合い。いかにも重そうな両手剣であり刃はとても分厚い。だがどこか目を離せないようなそんな雰囲気がある。アダマンタイトという神に認められた職人しか扱えない素材でできているらしい。よくわかんない。
なんでもミニョルソードは雷神トールの加護が付いており攻撃力+1000という破格な数字を持ち、剣に100満ボルトの電気を宿すことが出来るというなんともおかしい剣。しかもこれもの凄い軽いんだとか。更に耐久力という概念もなく絶対に壊れない代物。更に更に認められた使用者以外が触ると死ぬ防犯性も完備。更に更に更に自分と仲間の会心率40%上がるというえぐいえぐい能力。あと魔術の効果は100倍です。
それらを聞いていた私、傍観者。ポカーンとしてた。そしていつ口を開いたか覚えてないけど発言した私。
「マリー」
「なんでございましょうか」
「このゴミ、宝物に投げといて」
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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