こんな日もあるよね!
この話は、実体験だったりなかったりする話をちょっと面白く書けないかなと頑張って書いてみた物語である。
・ラーメン屋での話
Tの駅を出て道を挟んだ向かいすぐのところにラーメン屋さんがある。
”ザ”ラーメン屋さんといった店構えで店の前には券売機が置いてある。引き戸を引いて中に入ると横一列にカウンター席が並んでいるといった感じだ。
幼い頃にT駅を使うことが多く、親にねだってよく連れて行ってもらっていた。
替え玉が2玉ほど無料でお得感があって、おかわりをするときの罪悪感が生まれなくてとても好きだった。
ある日、いつもと変わらず厨房の光がよく反射するカウンターの前に座って普通のラーメンを頼み、親と一緒に食べていたら突然
「サービス。」
頭上から野太い声がして顔をあげてみると、ハチマキのおじさんがトングでつかんでいたチャーシューを自分のどんぶりに乗せてくれた。
何が起こったのか理解できずぽけーとしていた。
隣のいた親がお礼を言っていたのを見て、やっと”サービス”の意味を知りすかさずお礼を言った。
「育ち盛りだから。」
その店員さんは一言だけ言い残すと厨房の奥で背を向けて麺をゆで始めた。
あまりに一瞬の、しかも見ず知らずの人からもらった初めての善意で、この身の起こったことなのだろうかと暫く口を開けていた記憶がある。
「よかったね。」
親のうれしそうな顔を見て、喜んでいい事なんだと心の底から実感した。
とてもうれしくて、でも少しなんだか気恥ずかしくて心がポカポカしたいい思い出である。
ラーメン屋さんはカウンター席のほかにテーブル席が存在するけど、
大人になっても時々、ラーメン屋さんに行くたびに、またサービスって言ってくれないかなと淡い期待を持ちつつカウンター席に座ってみたりする。
・席に着いてすぐに注文できる。
・料理が出来たらすぐ目の前に届く
・食器の回収が楽
・もしかしたら”サービス”してもらえる。(まあ滅多にないだろう)
カウンター席はいい事づくめではないか!
だが最近デメリットを発見してしまった。
買い物帰りに、駅近くのラーメン屋さんが目に留まった。
店の看板にはペンキで書きなぐったような文字が書かれていて、間接照明が当たっている。
とても雰囲気あるお店だった。
「ちょうどおなかも減っていた頃だから入ろう」
店に入ると券売機はなく直接店員さんに頼む注文形式だった。厨房には見たところ中年くらいの店員さん一人しかいないみたいだ。なるほど。
ちょうど17時を回る頃、買い物帰りや仕事帰りの人が増えてくる時間帯。
幸い、店はすいているから混雑しても店から出やすいよう出入り口に近いカウンター席を取った。
席について荷物を置いた次の瞬間
「いつものね」
頭上から野太い声がした。おや?
顔を上げたが誰もいない。他のお客さんだろうか?
店内を見渡したが周りにはちらほらお客さんがいるが女生徒や若者といった感じだ。
皆ラーメンを食べている。
あの時の店員さんじゃなかったかちょっと残念。あれ?
皆ラーメンを食べているではないか。マジかっ!
厨房をちらりと覗くとさっきまで器を洗っていた店員が麺をゆで始めている!
これはもしかして勝手に注文を決められてしまったのではないだろうか。
では”いつもの”とは何だろう。常連さんに見えたのだろうか?
確かに何処にでもいる大して特徴のない一般人である。誰かに見間違えたということもあるかもしれない。
だがしかし、マスクをして帽子もかぶっていた。どこで判断したのだ?まさか、入店時!
立ち姿だけで判断したのか。いやありえない。まさか ここの店、ぼったくり店ではなかろうか。
勝手に高額な料理を作って提供して料金の請求を狙ったのか
急いでメニューを確認したが料金に大した差はみられなかった。高くてもセットで1500円くらいであった。大丈夫。払える。
直接店員さんに聞いたほうが早いのではないだろうか。
でもこうなると俄然、その勘違いしたであろう常連さんが頼んでいた”いつもの”が気になってきた。
このお店の常連さんがうまいと判断したラーメンが食べられるようなものである。
辛子味噌豚骨や味噌坦々変わった名前も、10種類くらいあったがどれなんだろう?何ラーメンのか予想しよう。そう思い、
手に持ちっぱなしだったメニューを再び開こうとした瞬間、頭上からラーメンが降りてきた。
「らーめん メンマ増しトッピングです。」
時を止められた気がした。まったく予想だにしなかった結末だった。
料理が出来上がるまでの数分間の思考を、上からロードローラーでぶっつぶれろォと言ってる声か聞こえてきそうだ。
マジか、シンプルか、メンマ大好きか、
これだったらちょっと変わったラーメンを食べてみたかったなあ。そう思いつつ一口、
うまかった。
カウンター席はこんなことも起こるのかと少し勉強になったお話である。
楽しんでいただけたら幸いです。




