第七十話
「暦月…………それに伊瀬田」
朝、待ち合わせの学校前に行くと、暦月と伊瀬田はすでに来ていた。
「よし!行こっか、紅葉!」
「あぁ」
よく考えてみたら一緒に登校するのはなんだかんだ初めてだ。
とはいえ、暦月の顔は緊張しきっていて、とてもそんな楽しそうな雰囲気はない。
◇
教室のドアの前に立つ。
横にいる暦月を見る。
「暦月、大丈夫?」
「うん、大丈夫!それじゃあ、行くよ………!」
そう言って、暦月は教室のドアを開ける。
開いたと同時にクラスの目線が一気にこちらに集まり……………
「「来たぁ!」」
みな一斉に声を上げる。
「暦月ちゃん、これホント?」
「橘!」
「お前ら仮の恋人だったのかよ!?」
「なんで嘘告なんか!?」
「基山は知ってて黙ってたのか!?」
「どうして基山くんなの!?」
「弄んでたってのは本当なのか!?」
わかってはいたが、質問の嵐だ。
「ほら、言わんこっちゃない。こちらの言い訳をする暇すら与えてくれないぞ…………」
「大丈夫。言い訳なんて最初っからするつもりない」
伊瀬田に暦月が答える。
ていうか、言い訳するつもりないって………
「嘘告したことは、事実です!」
「「「えっ」」」
暦月は大声で答える。
「弄んでた!って言われても仕方ないと思います!」
「なんで基山なんだ!?」
「そもそもどうして嘘告なんか!?」
「紅葉を選んだことに深い意味はないです!」
「だったら別に嘘告じゃなくても!告白を受けるとかでもいいんじゃないか!?」
「要は誰かと付き合ってみたかったんだろ!?」
「なんとなく!」
「「「………………?」」」
「なんとなく!紅葉がいいなっと思いました!嘘告した詳しい経緯については明かせません。でも、するなら紅葉だと思いました!紅葉は私に対して興味が無さそうだったので、都合が良いと思ったのかもしれません!」
「い、今はどうなんだ!?」
「そうだ!基山はもう嘘告のこと知ってるんだろ!?」
「だったらどうして!?今は本当の恋人なの!?」
「今はまだ、仮です………!」
「「「………………」」」
「ただ!本物になる約束を交わしました!」
「なんでまだ仮なんだ!?」
「私が………紅葉が大好きだからです!」
「「「………………」」」
「紅葉が好きだから、ずっと一緒にいて欲しかったから…………無理言って別れないように説得しました!そうして、仮の形ではあるけど、恋人を続けることに………」
「「「……………」」」
「今まで散々、いろんな理由をつけて男子を振ってきたのに、相手の気持ちを考えない嘘告をして、弄んでいたことは認めます。でも………!」
「ばーか!別に怒ってねーよ!」
暦月が言葉を繋ごうとしたとき、1人の男の声で掻き消える。
「え?」
「そーそー」
「そら、ショックはあるけどさ!」
「うんうん。どうせなら俺にしてくれればって思うけどな!」
「基山くん最近カッコいいし、ちょっと悔しいけどねー!」
「だから!」
「そんな敬語使って謝るようなことされてもなぁ!?」
「「こっちが困るよ!」」
みな、特に怒ってない口調で優しく淡々と述べる。
「まぁ、実際。橘が紅葉にベタ惚れなのは見ててわかってたからな」
「基山くんもなんだかんだほっとかないって感じだし!」
「仮に橘が基山以外に告白しても、無理だっただろうよ!」
「そーそー、なるべくしてって感じ!?」
「みん、な…………」
「私達が暦月の陰口言ってたとき、紅葉が指摘したこともあったし」
「うんうん。あれでハッとなったよねー」
「暦月のこと、よく見てるなぁって」
「橘は橘で、授業中も休み時間も、紅葉のこと見つめすぎ!」
「しかも超ニヤニヤしてるからな!」
「基山は寝てるから知らないだろうけど、それで何度か教師に注意されてたからな!」
「文化祭で、痴漢を止めたこともあったよね!?」
「あれはカッコよかったねー!」
「暴力してきたのを一蹴しちゃったからね」
なんか…………照れる。
「紅葉!」
「晃………」
晃が出てきて、俺に声をかける。
「俺も最初はどうなるかと思ったよ。みんな、怒ってるんじゃねーかって。でもさ、みんな見てたんだよ。予想以上にお前らのこと。そら、やっぱ一人一人ショックがある奴はいるかもしんねーけどさ。少なくともここには…………お前らを邪魔しようとする奴なんて、1人もいねーよ」
「晃………」
「そうだろ!?みんな!?」
「「「おぉぉ!」」」
「ふふっ、だからさ。もういいって。大体、悪いのは全部、嘘告なんてさせた俺たちだろ?」
「そ、私と昂で、後でみんなに事情説明して謝るから。………………ごめんね?2人とも」
「夢川…………」
「だからよ、紅葉!そんな弱気になんねーで、いつもみたいに早く決着つけてこい!ガツンと言ってやれ!伊瀬田の野郎に!」
「あぁ………わかった。ありがとう………」
そうして、暦月を見る。暦月は俺の目を見て、黙って頷く。
「伊瀬田…………いつものとこだ。ちょっと来て」
「……………わかってる…………」
次回でついに解決ですね。
皆さんの考えていた通り、彼らの心配は杞憂に終わったのです。
まぁ、クラスメイトだけだったからってのはありますが。
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