第六十二話
「───お前は暦月のことを、どう思ってるんだ?」
球技大会昼休み。
午前中の試合によって、無事に決勝戦進出を果たした俺たち4組と7組。この後は、女子の決勝戦が終わると男子となる。ちなみに女子の決勝にはもちろん4組がいる。
そして、今俺は伊瀬田に呼び出され、こうして2人で会っている。
「どう、とは?」
「ふっ、わからないわけじゃないだろう?今から本格的に略奪をしようとしてるんだ。お前の気持ちくらい確認しておきたいだろう」
「それ、答えで何か変わるの?」
「結果は変わらない………だが、俺の機嫌は変わるかもなぁ」
伊瀬田は不敵な笑みを浮かべ、そう言う。
「……………正直わからない……」
「はぁ………またそれか……………」
「ただ、今までとは確実に違う。自分の中に確かに存在しているのに、よくわからない感情。これが恋………なのかもね」
「は、はぁ?」
「俺が暦月に恋愛感情があろうとなかろうと、大切なのには変わりない。お前には、渡さない」
「お前だけは…………………ダメなんだ………俺の方が、相応しい…………」
「えっ?」
伊瀬田が下を向き、暗い表情でボソボソと何か言っていたが、上手く聞こえない。
「いや、なんでもない。せいぜい頑張れよ」
そう言って、伊瀬田はまた、先に去る。
俺もその場を離れ、女子の会場である体育館へ向かう。
晃達が、手招きをしているので、合流する。
「おっせーぞ」
「ごめんごめん………」
どうやら試合はもう始まっているみたいだ。試合は4組が若干リードしていて、桃山と暦月が大活躍だ。
「おっ、雫のやつまた決めたぜ!」
「桃山ー!いいぞー!」
「がんばー」
俺も一応拍手と共に声援を送る。
そうこうしていると、笛が鳴る。どうやらハーフタイムらしい。
みな、水を飲んだり、汗を拭いたりしている。
「あ、紅葉!見てくれた!?」
暦月が俺に気づき、話しかけてくる。
「んー、ちょっとね。さっき来たばっかりだから」
「そっかー、じゃあ後半もバンバン点取っちゃうから、しっかり応援してね!?」
「うん、頑張れ」
そう言って、頭を撫でると嬉しそうにはにかみ、コートの中へ帰っていく。
「暦月!頑張れ!」
「うん!」
◇◇◇
「おつかれ、暦月……」
「うん……」
体育館の裏の人目につかないところで、俺と暦月は2人で座っている。
結果を言うと負けた。逆転負けだ。
暦月の調子はどんどん上がっていった。が、それと同じように相手チームも調子づく。
勝負は残りわずかというとき、暦月たちの3点リード。
ボールは暦月。これを決めれば、時間的に逆転は無理だろうというところで、上がりに上がった暦月の調子が、爆発してしまった。
こけたのだ。ずっこけ。
その後、相手は落ちたボールを拾い同点。さらにラストに決めて、4組の逆転負けとなった。
「はぁ…………恥ずかしいー!あんな大事な場面でこけちゃうなんて、一生ものの恥だよ〜!」
暦月は顔を真っ赤にして、両手で隠している。
「暦月は頑張ってたよ………」
「ほ、ほんと………?」
「うん、すごく。…………カッコよかったよ」
「そ、そうかな?」
「うん。もちろん可愛くもあったけどね」
「ひゃっ、こ、紅葉…………きゅ、急にそんなこと言うの、反則……………」
事実、暦月はものすごく頑張っていた。
後半に関しては桃山以上に点も入れている。
ここまでできたのは暦月がいたからこそだ。
感謝はしても、誰が暦月に文句を言えようか。
そして、その姿はとても魅力的だった。
「じゃ、じゃあ…………慰めとして、ギューってして…………?」
「はいはい。お安い御用だよ」
そう言って、暦月を気持ち強めに抱きしめる。
相変わらず華奢な体で、そこら中が柔らかい。ついつい頭を撫でる。
「ふぁ、ふぁわわぁ…………」
「ふふっ、なにその声」
「今日は紅葉、なんか積極的だね……」
「暦月がやれって言ったんじゃん」
「それでも紅葉から抱きつくなんて滅多にないじゃん!いつもより積極的だよー」
「ふふっ、うん。かもねー…………」
「紅葉?」
「ん?」
「仇をとって……」
「相手7組じゃなかったでしょ」
「そういうことじゃない!」
「応援してくれるならね」
「する!世界で一番するよ!」
「そっか………じゃあ頑張るよ」
「うん!」
そうして、体を離す。暦月は顔をわずかに赤く染めて、微笑んでいた。
もうすぐ、ウォーミングアップなどが始まる。
そろそろ行かなくちゃ、と立ち上がる。
「じゃ、また後で」
「うん、頑張れ!」
「あぁ」
そうして、暦月と別れグランドに行く。
すでにみんな来ており、ウォーミングアップを始めている。
適当に体操を済ませると、俺もパス回しなどに参加する。
そして─────
「これより、決勝戦を始めまーす。両チーム並んで」
握手のために、両チーム1列になる。
俺の相手は当然のように伊瀬田だ。
「握手!」
俺は伊瀬田と握手を交わす。
その顔は作り物の笑顔が貼っつけられている。
「よろしくね?紅葉くん!」
「随分な営業スマイルだね」
お互い離れ、ポジションにつくと、開始のホイッスルが高らかと鳴らされた。
こんな終わり方してますが、試合の描写は詳しくやるつもりはありません。ラストをチャチャっとやるだけです。
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