第五十八話
ここにきて!
ここにきて、まさかの新キャラ登場!
地獄の特訓を始めて一週間。球技大会まで残り3日をきっていた!
「行かせるか!」
目の前に秋田が立ちはだかる。
俺は左右にフェイントを仕掛け、ボールを外側にしながら、回転してかわす。
「よし!」
「ッ!しまった!」
そのままドリブルして、ゴール前まで、運ぶ。
「ここは死守する!」
「絶対決める!」
ゴールには晃がいる。
俺はボールをゴールの左上へ蹴り上げる。
「もらった!」
晃がボールを取りに行く。
「甘いぞ!」
「ッ!なにっ!」
ボールはゴールに入る前に、大きくカーブ。
そのままゴールの右下に吸い込まれるように入っていった。
「ピピィィィイッ!ゴール!紅葉の勝ち〜!」
「ぃやったー!」
「さっすが紅葉!カッコいい!」
そう言って暦月が抱きついてくるのを優しく受け止める。
「ほんと上手くなったよ!」
「みんなのおかげだよ。ありがと」
そう言って暦月の頭を撫でると嬉しそうに頷く。
最初はどうなることかと思われていた特訓会だったが、そこは天才紅葉くん。みんなの地獄のような指導のおかげで今では『上手い』という部類に入るほどまで上達した。まぁ、サッカー限定だけども。
「ヒュ〜!グランドで抱き合うなんてお熱いなぁ!」
「もう!やめてよ晃!」
「照れんなって……………しかし紅葉も暦月に随分と甘くなったよなー」
「あぁ、そうかもね………」
たしかに、あの文化祭から2人の関係が何か進展あった?と言われるとそうでもないが、俺の暦月に対する抵抗はかなり無くなった。
「あ、じゃあ今日は久しぶりにデートしていい!?」
「あー、たしかにもう紅葉はかなり上達したし、いいんじゃない?」
「やった!いいよね?紅葉!」
「まぁ、特に予定もないし大丈夫だよ」
「よし!じゃあ一緒に晩ご飯でもどう?食べに行かない?」
「わかったよ………」
「やった!」
こうして、久しぶりの放課後デートが決まった。
◇◇◇
「夕食まではどこに行くの?」
「あー、ちょうど観たい映画があってさ………ダメかな?」
「ううん。じゃあ行こっか?」
「うん!」
放課後、暦月ととりあえずは近くにあるショッピングセンターに行こうということに決まったので、2人で入り、たった今、映画を観ることが決まった。
そういえば……………ずっとコマーシャルがあってて観たい映画があったんだ…………
まぁ、多分暦月の趣味とは合わなさそうだから今度一人でこよう。
「って、これ俺が観たかった映画じゃん………」
「あっ、やっぱり!?」
「ん?もしかして気を使った?」
俺が観たい映画はゲームの実写化。
その名も【ケーティの珍行艦殺】。
ギャグあり、涙ありのアクションコメディ映画だ。
「暦月はこういうのが好きなんじゃないの?」
そうして指差した映画は【1000枚目の花びら】という、感動胸キュン系恋愛映画だ。
「あー、それも観たいけど………」
「だったら…」
「違うの!紅葉ってゲーム好きじゃん?それでこのゲームやってるの見てたから、私もやってみたらハマっちゃって…………だからこれずっと観たかっただー!紅葉も興味ありそうだし、どうせなら一緒に観ようかなーって思ってさ!」
「あぁ、なるほど……………じゃあ観よっか」
「うん!」
2人で、1番近い時間に始まる券を買う。席はいいところが空いていた。
「それじゃあドリンクとポップコーン買ってくるよ」
「あ、一緒に行こっか?」
「いやいいよ、座ってて?」
「そっか、ありがと!」
「どういたしまして……」
俺は1人で売店に向かう。
「お待たせしましたー」
「はーい」
暦月は適当にオレンジ、俺はコーラ、そして塩味のポップコーンを頼んだ。
本当にお待たせした。どうやらただいまかなり忙しかったらしく、時間がかなりかかった。
暦月怒ってるかもなぁ…………
店員から受け取ったドリンクらを持ち、暦月の元へ帰る。が、暦月が近くに見えたとこで、一瞬足が止まる。
うわぁ………………最悪。ナンパされてるよ…………
はぁ………めんどくさい。なんだこの王道的な展開は。
「いや、あの私人を待ってるんで…………」
「いいじゃんいいじゃん!さっきから見てたけど、誰も来てないじゃん」
「いや、売店に行ってるんで………」
「売店でこんなに遅いのは変だよ〜。嘘なんでしょ?さぁ?ちょっと遊ぶだけだって。このショッピングモールからは出ないからさぁ!行こ!」
うわっ!しかも結構めんどくさい系。しれっと腕を掴んだ。
困ってるし、助けないとなぁ。
「あのー、すいません。俺の」
「僕の彼女に何か用ですか?」
止めようとしたところで、俺より早く声がかかる。
「あぁ?」
俺もナンパやろうと一緒にそいつを見る。
そいつは俺たちと同じ制服を着ている。同じ学年だろうか?
髪はキッチリとセットされてあり、見るからに知的って感じのする男だった。
身長は晃ほどの長身でナンパやろうを上から睨みつける。
よくわからんが、暦月を守ってくれるらしい。
これは俺が今出て行っても混乱させてしまうだけなので、とりあえずこの辺で様子を伺おう。
「なんだてめぇ?」
「言ったでしょ?この子の彼氏だ。お前の方こそなにをしている」
「は、はぁ?」
「どうして…………人の彼女の腕を軽々しく握っている…………離せ」
男はナンパやろうと手首を掴むと無理やり引き剥がす。
「痛い!痛い痛い痛い!」
どうやらかなりの力で握っているらしい。
「され……………今すぐ……」
「うっ…………ちっ!悪かったよ…………」
男が手を離すと、ナンパやろうは去っていった。
とりあえず助かった。お礼でも言いにいくか………
暦月の元へかけよる。
「あ、俺の連れをすみません………」
「あ、紅葉!」
「ん?あぁ…………やっぱり紅葉くんか……」
「え?なんで俺の名前を?」
「だって、彼女は橘さんでしょ?校内じゃ有名だし、そんな子と付き合ってる君もすごく有名」
「だからって名前まで………」
「あぁ………僕は君たちと同じ学園だからね。名前くらい、何度も耳にするさ。それに紅葉くんは知らないみたいだけど、君は付き合い始める前から、多少は有名だったんだよ?」
「は?なんで?」
「体育祭……………秋田くんはおいといて、4組にものすごい足の速いやつがいると警戒されていたのに、当日にまさかのズル休み。そりゃ有名にもなるさ。それにそれだけじゃない。学校には毎日のように遅刻。宿題はしない、授業中は居眠り。それなのにテストはいつもベスト30で、張り出されている男。自分のことに無頓着なのかな?結構有名になる要素は色々あるでしょ」
「あはは、たしかに紅葉は癖強いもんねー?」
あぁ、なるほど……………
たしかにこいつの説明を聞くと、有名なんてのはわりと普通なのかもしれない。
「あぁ、ごめんごめん。申し遅れてたね。僕の名前は伊瀬田 天也。7組さ。よろしくね?」
そう言って、手を差し出してくる。俺はそれを握り、握手を交わす。
「あぁ、よろしく…………」
「それじゃあ、デートの邪魔しちゃ悪いし、もう行くよ」
「あ、あぁ。じゃ」
「ありがとね!バイバーイ」
「あぁ、失礼するよ」
そうして、歩き出す。
だが、俺の横を通りすぎるとき、妙に近づいてきて、顔が俺の耳元に来たところで一瞬止まる。
「暦月は俺のものだ………」
「ッ……………!」
耳元でそれだけ言い残し、歩き去っていく。
俺はなんとなく喋る機会を失い、ただ……去っていく伊瀬田の後ろ姿を見ることしかできなかった…………
因縁の7組。そして新たな強敵!
珍行艦殺wwwwwwwど下ネタやないかい!そらコメディだわ!ちょっと観たいわ!
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