第四十五話
またもや甘さゼロです。
『天下一武道会!決勝戦は真那元大地選手と八代音々選手だー!』
ふぅー、と一息ついて、心を落ち着かせる。
決勝戦に勝ち上がるまでは割と楽勝だった。
しかし、次はどうなるかわからない。相手は先ほどの筋肉選手権において、惨敗を喫した、音々さんとかいう男(女)だ。
たしかに、筋肉の量や形などでは勝てる気はしない。
しかし、俺は空手部主将。全国大会での優勝だって、何度もしてきた。ただの見せ筋に負けるわけにはいかない。
鍛え方の違いを見せつけなければ……………!
自分の中にある闘志が沸々と湧き上がる。
なんとしても勝つ!
俺は黙ってリングに入っていった。
『それでは、決勝戦を始めます!』
『試合、開始!』
試合開始のゴングがなる。
この大会は相手にまいったを言わせれば勝ちとなる。
先手必勝!相手より先に、相手の戦意を削ぎ取る!
やつに近づき、右手で殴りかかる。
「やぁぁぁぁあっ!」
「ふっ、甘いわね!」
俺の拳はあっさりかわされ、掴み、そのまま一本背負い投げ。
バンッ!という、背中と地面が衝突する音が会場に響き渡る。
見えるのは天井のみ。何をされたかわからない、と、一瞬思ったが、瞬時に理解する。どうやら俺は投げられたらしい。
思わず苦笑が溢れる。
最速、最大で攻撃したはずの技をこうもあっさり返されたのなら、面子もクソもあったもんじゃない。
しかし、勝てないという絶望をするより早く、さらなる試練はやってくる。
「姉さんからの間接キッス!」
拳にキスしたと思うと、倒れている俺の腹へ向かい、垂直に拳を下ろす。
ガードするが、思ったより威力が高い。
受け止めきれずに腹に突き刺さる。
「かはっ…………!」
「威力は抑えたわ!まいったと言いなさい!」
「うっ…………うぅ………!」
腹が痛い。
なんだこの威力は!なんだこの生物は!
やはり……………オカマには勝てないのか!
今、俺の目の前にいるこの生物は、何か根本的に俺とは違う!
これが…………オカマ…………
諦めるしか………ないのか…………
「ま、まいっ」
「真那元!その程度かよ!」
まいったを言おうとした瞬間、客席から声が聞こえる。
声の方を見ると、そこには紅葉がいた。
怒りにも似た表情でこちらを見て、声を張り上げていた。
「…………真那元!頑張って!」
「負け犬になるぞ!そんなんで守れんのかよ!俺が暦月に何かしたらボコボコにすんだろ!そんなんで何かできんのかよ!」
くっ!そうだ!立て!
「大地!応援に来たぜ!頑張れ!」
昂までもがここに来て、応援してくれる。
気合を入れ直し、立ち上がる。
「うわぁぁぁぁああ!」
「そういう汗臭いの、大好きよ!」
もう一度やつに突進する。
「でもね!それでやられるほど、あたしは甘くないわ!」
やつの拳が今度は左頬に直撃する。
倒れそうになるのを、足を踏ん張り抑える。
「うぉぉぉおお!」
カウンターで、腹へ拳を入れる。
「うっ!…………効かないわ!」
「まだだ!」
一瞬怯んだ隙に、相手の首に腕を回し、大外刈り。
「そんな!」
「うぉぉぉお!」
またも、背中と床が衝突する音が響き渡る。
しかし、今度は俺じゃない。
倒されたのは、音々さんだ。
「「オォォォォ!!」」
客席のあらゆるところから歓声が上がる。
「ふふっ……まいったわ…………あたしの負けよ!」
「なっ……………か、勝ったのか?」
『ただいま、八代選手からまいったの宣言がありました。この勝負、真那元選手の勝利ー!!おめでとうございます!おめでとうございます!』
か、勝った……………
俺は体を起こし客席を振り返り、右手を上に挙げる。
「勝ったぞ!!」
「「おぉぉ!」」
ーーーパチパチパチパチ
会場中が拍手の嵐。
勝った、勝ったんだ、俺は!
俺は再び振り返り、音々さんの方を見る。
彼女は苦笑をこぼしている。
俺は彼女の元まで歩き、右手を差し出す。握手だ。
彼女もそれを理解したのか、立ち上がり、手を握り、互いに握手を交わす。
「ありがとうございました!」
深々と頭を下げ、お礼を言う。
頭を上げると相変わらず彼女は苦笑をこぼしている。
「そういう汗臭いの、超大好きだわ!」
その後、優勝者への賞品やら、インタビューやらが終わった後、仲間たちと元へ行き、応援のお礼を伝えた。
こうして、俺の文化祭メインは終わった。
一勝一敗。
いや、最後のはわざと負けたのかもしれない。
この勝負で俺の心には、さらなる向上心と仲間たちに対する感謝、そして達成感が渦巻いていた。
いつからこの作品はバトルものになったんだー!!
ってね、思ってるでしょ?
誠に申し訳ございませんでした。
次回から頑張りたいと思います。
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