第三十三話
今日はデート!
文化祭は来週の金曜日から日曜日まで、今日は土曜日。つまりあと一週間というわけだ。装飾なんかはわりともう出来てきているし、店長からレシピももらっている。
では、今日の俺は何をしているのか。
デートです。暦月に誘われ、まずは髪を切ることになった。おまけに文化祭までの間はコンタクトらしい。
予約は入れておいたらしいので、それまではショッピングだ。
今はとりあえず服を買いに来ている。
「暦月ー?」
「どうしたの?」
「時間、いつからだっけ?」
「えーとね…………あと一時間半だよ!」
「そっか。ありがと」
「うん!」
一時間半か………
この大型ショッピングセンターからはわりと近いので大丈夫だろう。
「ねーねー!これとこれ、どっちが似合うかな?」
「んー………」
暦月が出したのは上着で、白か黒かで迷っていた。
「どっちも買えば?」
「だって奢るって言ったじゃん」
デートのときは代金は毎回俺が払っている。最初の方は暦月が止めていたが、最近はそれも少なくなっていた。
今回も服はさすがに自分で買うと言っていたが、俺は金が有り余っているし、きちんと貯金もしてるので今回もちゃんと払うよと伝えておいた。
買うものによって奢るかどうか変えたらなんかダサいしね……………
とはいえ、そのせいで暦月に気を使わせてしまっているらしい。
「気を使うのはやめてって言ったでしょ?何回も」
「だって今日は値段が違うし…………」
「今日の髪切りのことだって、俺何も言ってないのに勝手にやってくれたでしょ?いつもお世話になってるし、お礼だよ」
「で、でも…………」
「わかったよ。じゃあ暦月が好きな方を選びな?もう片方は俺がプレゼントとして買うから」
「それじゃあ一緒だよ!」
「全然違うよ。奢るのと、買ってプレゼントするのは全然違うよ。大体暦月は俺にしょっちゅうプレゼントくれるのに、俺なんもあげてなかったからね……気にしないで」
「ん、うん……………ありがと………」
「ん………」
「紅葉はさ……服とか買わないの?」
「んー、今日はいいかな?別に欲しくもないし」
「そっか………」
「まぁでも、せっかく来たんだし、暦月が選んでくれるなら買おうかな!」
「ほ、ホント!?」
「うん。ホントだよ」
「そっか……じゃあ!私が買ってプレゼントするよ!」
「いいけど、1着だけね。それ以外は自分で買うから」
「…………わかった」
「じゃあ、カッコいいの選んでね。よろしく暦月」
「う、うん!」
こうして、俺のコーディネートが始まった。
暦月は楽しそうに紅葉にはこれが似合いそー!とか言っていた。
ショッピングも悪くないかもな…………
最近、暦月と一緒にいて楽しいと思うことが出てきた気がする。
今までにはなかった感覚だ。恋愛感情があるかどうかはまだわからないけど。
それでも、誰よりもそれに近いかもしれない。
友達という枠から、異性の枠へどんどん行こうとしている気がする。
ふふっ…………俺も割とチョロいな………………
あんまり人のこと言えないや………
思わず、笑みが溢れる。
少しからかうか………
「暦月!」
「ん?」
俺の声に服を選んでいた手を止め、こちらを見る。
「楽しいよ」
「へ?」
「暦月と一緒にいるの、楽しいよ」
「へっ?……あ……え……あ、あぅ…………」
「ふふふっ………なに間抜けな顔してんのさ。言いたいことはそれだけだから、早く選んでよ」
「え、あ、うん………………あ、ありがと……」
「うん……こちらこそね」
「ッ…………!」
そこから服を選んでいる間、暦月の顔はずっと赤かった。
ほんと……………こちらこそだよ………
心の底から思う。
暦月、ありがとう…………
美容室に行く途中、横を歩く暦月の横顔を見ながらただ…そう思っていた。
紅葉くんは言うべきことはきちんと言うタイプなのかな?
これが現時点での紅葉くん最大限のデレです。
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