第二十三話
第一章とかいうものをつけてしまいました……
【暦月視点】
一週間。この一週間、できる限りのことはしたつもりだ。
引き際を考えながら、精一杯のアピール。
今日はさすがに、明日のことがあってデートへは行けない。こんな気持ちでデートはしたくない。
でもやっぱり、自信はない。
覚悟はできてる。なんてこと言っちゃったけど、本当は未だに言おうとか迷ってる。嘘告のことを言わなければ、紅葉はなんだかんだで、私と付き合ってくれるんじゃないか、と。
でも、やっぱり嫌だ。嘘をついてるのが、っていうのもあるけど、それ以上に本物の恋人になりたいという想いが強い。
最後まで、自分勝手だと思う。
でも、止められない。
だから今日は、家に帰って、いっぱい泣くつもりだ。明日振られても、泣かないように。笑えるように。
あぁ、日曜日はほんとに楽しかった。
初めての休日デート。
紅葉も楽しんでくれてたし、嫌々ながらもあーんしたり、いちゃつくことも出来た。
だからこそ、観覧車で泣いちゃったことは後悔してる。楽しい思い出が切なくなっちゃう。
また来ようね!って言ったとき、彼は微笑んでくれた。嬉しかった。あれは私にとって、約束というより願望に近い。だから嬉しかった。
ただ、返事はくれなかった。
あれが、意図的なのかたまたまなのかは分からない。
いや、考えないようにしてる。
今週は学校でもたくさん話せた。
いつもなら、嫌がる紅葉がそんな素振りを見せなかった。嬉しかった。
……………でもなんだか、これが最後だ。って言われてるような気もして、不安だった。
バイト先に遊びに行ったのも楽しかった。
可愛い後輩が出てきて焦ったのに、さらに交際1年の恋人だ、なんて言われたからほんとに泣きそうだった。
みんないい人そうだった。
店長さんは………よくわからない。
とにかく、やるべきことはやったんだ。
あとは明日、放課後残ってもらえるように紅葉に言うだけだ。
明日は紅葉と話すつもりはない。話したら決意がにぶると思うから。
だから今日、まだ教室に残っているであろう紅葉に伝える。
教室に行くと、紅葉がいたので早速入ろうとすると、クラスの女子が私の話で盛り上がっていた。
いい話題ではない。
別に気にしない。この手のやつは嫉妬で何度か言われたことがある。別に今更気にしない。
ただ、なんとなく入りづらかったので、その場にいると、彼女たちは紅葉にまで、絡み始めて、私の愚痴を言いはじめた。
◇◇◇◇◇
【紅葉視点】
放課後、先生に呼ばれたらしい暦月は待っているように伝えてきた。
おそらく明日のことだろう。
暇なので晃と喋りながら(相槌only)待っていた。
すると近くにいるクラスの女子の話し声が聞こえた。
「マジでさー、暦月ってちょっと可愛いからって調子乗ってるでしょ」
「それな!こないだも三年の告白断ったって」
「男の人が苦手とか言ってる割にはいつも男友達とかとつるんでるし、こないだ急に彼氏作り始めたしね」
「しかもあれ自分からだってよ」
「えっ、マジで?………どこが苦手なんだよ」
あぁ、なるほど…………
あれか、モテない人たちの嫉妬というやつか。
俺も暦月と付き合ってからは結構いろんな人に言われたけど基本的に無視してたけど、暦月はそこにいるだけで反感を買うのか……
大変だなぁ
まぁ別に言われ慣れてるだろうし、そもそも陰口というのは本人に直接言ったら傷つくだろうから、こそこそ言うもんであって、本人が聞いてないなら別に問題はない。
今ここで注意しようもんなら悪いのは完全に俺だ。
誰だって嫌いな人は1000や2000いるもんだし、当然陰口だって叩く。それも制御しようとするのが間違い。感情に流されただけの行為だ。
いやまぁ、正直教室で言うなよっては思うけど、彼女たちもいろいろあるんだろう。ここは一つ、寛大な心で許してあげようじゃないか
まぁさすがに本人が聞いてたり、直接言ってたりした場合は止める。
「紅葉、止めなくていいの?」
「別にいいんじゃね?本人が聞いてるわけでもないし。彼女たちもいろいろあるんだよ、きっと。お前だって陰口くらい言ったことあるだろ?少なくとも俺はあるぞ。てか、お前は止めないのかよ?」
「彼氏のお前を差し置いて、そんなことしませんよ」
「あ、そ。…………ただ、もうすぐ暦月くるだろうし、一応止めておくか…」
「お!ツンデレ!」
晃が茶化すので、睨んでから女子たちに声をかける。
「あの!」
「ん?」
「そろそろ暦月帰ってくるから、その辺でやめた方がいいよ」
「あれ?暦月の彼氏じゃん!まだいたんだ!」
「あー、ねぇねぇ!正直どうなの?」
「何が?」
「暦月ってめんどくさいっしょ?」
前言撤回。
これは完全にこいつらが悪い。いくらなんでも、仮にも彼氏である男に同意を求めようとするのはアウトだろう。
それにっしょ!て、っしょ!てなんだっしょ!って
何を持ってそんなに確証が持てるのか………
あれか?お前たちは暦月の元カレか?
まぁ、たしかにめんどくさいけど…………
「………どういう意味?」
「いや、だってあいつ男苦手〜とか言って純情ぶってたくせに急に自分から告って彼氏作るとかさ、完全にビッチじゃん!」
「そうそう!正直ウザいとか思うでしょ?」
「それともあれ?顔が可愛いからなんとも思わない感じ?やめとけやめとけ、それは見た目に騙されてるよ」
その見た目に嫉妬してる時点で騙されてるのはそっちじゃ……………
とは思ったけど、さすがにクラスメイトに喧嘩を売るわけにはいかない。
ここは優しく対処…
「大体、あんたも大人しそうにしてて、暦月に告られたら速攻で落ちてんじゃないよ……」
………カッチーン!
暦月のことを言われるのはいい。
でも俺の悪口はダメだろう。俺がそばで聞いてるんだから。
大体、暦月のことをなにも知らないのに、悪口を言えた義理じゃないだろう。
ま、俺も知らんので止めれた義理でもないけどな!
いろいろあるとか思ってたけど無いわ。全然無かったわ。あったのは嫉妬だけでしたわ
「それ、本人に言う?」
「なに?だって事実じゃん」
「だったら悪い?可愛いのだって事実だろ?」
「はぁ?あのね…」
「そもそも、さっきからただの嫉妬でしょ?」
「私たちはあんたのために………!」
「じゃあ俺からもあんたらのために言ってあげようか?モテないからってそうやって僻むのはどうなんだろうね。やめた方がいいんじゃない?」
「別にモテないわけじゃないし!大体、顔が良ければ!」
「あぁ、そうだね。君、ブスだもんね。可哀想に……これが見た目に騙されるってことなのかな?でもさ、性格も悪そうだし、どっちにしろ仕方ないんじゃないかな?モテないのは…」
「っ…………!」
「大体、君ら努力してんの?…………例えばあんた。デブじゃん。俺結構聞いてないようでいろんなこと聞こえててさ、あんたがいつもやれスイーツだやれ飲み物だって言ってるの聞こえてるし、弁当箱が人よりデカいのも見えてるよ?」
「な、なによ!好きなもの食べていけないわけ!?」
「いや、全然。むしろ素晴らしいことだと思うよ。自分の好きなことを、楽しいことをする。いい生き方だと思うし、尊敬もする。ただ、その道を選んだなら、それ以外は捨てる覚悟でいかなきゃ。デブって言われたくないなら、運動するとかあるでしょ?少なくとも、暦月は普段、必要以上に食べようとせず、好きなものも我慢してるし、運動だってしてる。あんたらとは顔の前に、意識から違うと思うけど?」
「で、でも…あいつは所詮、純情ぶってる」
「別にいいじゃない?それでも。俺は気にしたことないけどね、そんな細かいこと。もう行こう、晃」
「ん?そうだな!」
教室を出ようとして、振り返り、彼女たちの方を見て一言。
「他人の細かい嫌なところ探すより、自分の大きな悪いとこ見つける方が遥かに簡単だと思うけどね。気づいてんなら、どうにかすれば?」
「だははは!…………お前ら、紅葉を敵に回すのだけはやめとけよ〜」
「晃、うざい…」
「うぇっ!」
そうして教室を出て、少し歩いたとき横から何かが動いたような気がした。
咄嗟に反応しようとしたが、間に合わず、なんだ?と思ったらそれは俺に抱きつき、泣いていた。
暦月だった………
…………オーマイガー
聞いてたんかい!
◇◇◇◇◇
【暦月視点】
嬉しかった。紅葉がまた、私を庇ってくれたことが嬉しかった。
紅葉が教室を出ようとする。
とりあえず離れて、隠れる。
紅葉が歩いてきた。我慢が出来ずに抱きしめる。
抱きしめるとすぐ、涙が出てきた。
紅葉は驚いたのか、一瞬テンパったが、私と分かると、優しく抱きしめ返し、頭を撫でてきた。
あの日と同じように………
あぁ、もっと、もっと、もっと………!もっとしてほしいと思うのと同時に、やめてほしいとも思った。そんなに優しくされたら、離れたくなくなってしまう。決意が揺れ動いてしまう。
だが自然と体は離れようとはしなかった。
今流している涙はきっと、クラスメイトに愚痴を言われた悲しみでもなく、紅葉に庇ってもらった嬉しさでもなく、こうやって触れ合うのが、今日で終わりという恐怖からなのだろう。
ーーしばらく涙が止まらなかった
クラスメイトの女子は3〜4人くらいです
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