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第十四話

いつもより若干長いです。


今回も相変わらず紅葉は偉そうです。

 勉強会!

 それは、友達同士だと遊び、彼女だとイチャイチャ、先生は授業、親は拷問。という一緒にやるパートナー次第でいろんな意味に変わる魔法の会合のことである!


 放課後、僕は暦月と二人でカフェに来ていた。


「で、これは……」

「し、秀矢……? ち、近いよ……」

「あ、ごめんごめん……」


 どうやら近かったらしい。間隔を五十センチほど開けて座り直す。


「いや、そういうことじゃなくて」

「ん? 説明わかりにくかったかな?」

「いや、そういうことでもない……」

「じゃあ、なにさ?」

「普通、恋人の勉強会っていったら、近いよって言われたならもっと、『ご、ごめん』とか恥ずかしがりながらも離れないもんでしょ。真っ赤になりながらも寄り添い合って、いちゃいちゃしたいじゃん!」

「ご、ごめん……」

「いや、ここでその反応されると言い過ぎたってなっちゃうから。いちゃつくどころか、罪悪感湧いちゃうから」


 せっかくお望みどおりの反応をしてあげたのに。注文が多いな

 というか、


「あのね、そもそもこれは勉強会でしょ? いちゃつく必要ある?」

「いやいや、勉強会はパートナーが恋人だった場合、いちゃいちゃに変わる魔法の会合だから」

「勉強教わってるのは誰?」

「…………私です」

「勉強教えてるのは誰?」

「……し、秀矢です」

「じゃあ誰に従うべき?」

「秀矢です」

「はい、よろしい。それじゃ次行くよ」

「あ、はい……。あざっす」


 と、真面目に勉強しようとしとき、店員が明るい営業スマイルで言った。


『特大イチゴチョコパフェ、お持ちしましたー!』

「お、ありがとうございます。そこに置いといてください」


 暦月がジト目で僕の頭をチャップする。


「おい」

「いや、さすがに何も頼まないのはまずいでしょ?」

「飲み物頼んでんじゃん。それに頼むなら、私にも聞いてよ」

「いや、勉強の邪魔になるかなーと」

「横で食べられる方がよっぽどだよ」

「…………ご、ごめん」


 そう言ってさらに間隔を開ける


「だから、その反応やめてって。あと、離れることは頑なに辞めないんだね」

「ふふっ……ごめんごめん。冗談だよ」


 間隔をもとに戻して、早速パフェを頬張る。


「いいなー、一口ちょーだい!」


 暦月が可愛らしく甘えるように言った。


「えっ」

「わーポーカーフェイス凄い下手〜!」


 すっごい嫌だなって心の中で思ってたけど、どうやら顔に出てたらしい。


「パフェだけは絶対にあげられないんだ」

「何その執念……」

「食べたいなら暦月も頼めばいいじゃない」

「いやー、さすがに一個まるまるは多すぎるんだよねー」

「ふーん。じゃあ暦月の分まで僕が食べるね。……すみませーん!」

「はい〜」


 ちょっと声かけただけで、店員はあっという間に僕たちのテーブルにくる。

 中々教育が行き届いていて素晴らしい。


「これと同じパフェ二つ追加で。あと、このクレープとこのクレープを一つずつ」

「わっかりましたー!」


 元気に返事をして、店員はスタスタと厨房へ行った。


「うわぁ、遠慮を知らないんだね。ていうか、頼みすぎじゃない? 太らない?」

「毎日筋トレしてるし、週に二,三回は走り込みもしてるからね」

「それで、足が速かったんだ……」


 そう。僕は生まれつき太りにくい体質ではあるが、あくまで太りにくいだけで普通に太る。

 だからいっぱい食べた後はいっぱい運動して痩せなきゃいけない。デブはなんかいやだ。


「まぁね。……ほら、パフェ食べないなら早く勉強しな? わからないところは教えるから」

「えー、さっきたくさん頼んだんだから、一口くらいいいじゃん!」

「いや、それはマジごめん」

「だからなんで……」

「だって…………一口でもあげちゃったらもう、パフェに顔向けできないじゃないか!」


 パフェの神様。僕はいると信じてる。アーメン、いや! パーフェン。


「えっ? なに!? パフェってそんな宗教的なものだったの!?」

「少なくとも僕にとってはね。てか、ほんとに頼めばいいじゃん。何か理由でもあんの?」


 特大が無理なら、普通のサイズを頼めばいいし、一口だけというのはいくらなんでも。


「いや、さ……これでも結構我慢してるっていうか、小さいやつでも食べちゃったら歯止めが効かなくなるじゃん」

「何が?」

「だ、ダイエットしてんの……! 一応、女の子だし? やっぱり体型は気にするっていうか、太ってからじゃ遅いっていうか」

「へー、あっそ」


 なんだそんなことか。

 ふっ……その程度のことでパフェを否定するなんて、まだまだだな。


「わっ! すごいどうでもよさそ! ……もしかしてあれ? 暦月の体型なんてどうでもいい! ってやつ?」


「いやそれはちょっと……デブ専って思われるのはさすがに」


 デブはなんかやだ。二回目。


「謝れ。全国のぽっちゃりに謝れ」

「ぽっちゃりってにごすところに性格が出てるね。すごくいいと思う」

「秀矢がはっきり言いすぎなんでしょ……じゃあなんで?」

「いや、暦月がいいならそれでいいんだけど」

「えー、気になるから言ってよー」 

「なんというかさ、つまらない生き方だなーって思って」

「えっ?」

「そんなんで、生きてて楽しいのかなーって思っただけ」

「な、なんで……?」

「だって無理してるんでしょ? ホントは食べたいのに。そんなのつまらないよ。食べたいなら食べなきゃ。四十路のおばさんが言うなら納得できるけど、まだまだ若いんだから、楽しく自由に生きなきゃ」

「で、でもさ……楽しくって言っても、秀矢も寝てばっかりじゃ、将来やばいと思ってるから、なんだかんだでテスト前勉強してるんでしょ?」

「いやいや、そんなご立派な理由じゃないよ。僕はただ、寝ても先生が注意できないようにしたいから勉強してるだけ。寝るために勉強してるの」

「でも二度手間じゃん」

「それでいいんだよ。楽しむのって、意外と楽じゃない。楽なことに逃げるなって、たまに言う人いるでしょ? 僕からすれば、楽しむことから逃げるなって感じだね」

「どういうこと?」

「将来楽しむためにって言って、今を捨てて、勉強だけしてる奴はダメだね。全然分かってない。たしかに勉強すれば、結果が出て、道が広がるけど、楽しいことはその瞬間だけで、役になんかほとんど立たないし、堕落するばっかり。だから楽しむことから逃げようとする。でもそれじゃだめだよ。大体そういう奴は将来、将来って言うけど、大人になっても楽しもうとはしないから」

「なんで?」

「だってそうでしょ。楽しみ方を知らないんだから。怖いままで何も解決してないんだから。そういう人はそれなりに幸せな人生を送るだろうけど、楽しんではないね。絶対。僕は楽しむことを馬鹿にして、必死に自分を正当化しながら、逃げてる奴より、必死に人生かけて楽しもうとしてる奴の方がカッコいいと思うけどな。暦月はどうするの? これからもそうやって我慢し続けるの? ダイエットだって、制限するんじゃなくて運動するとか色々方法はあると思うけど。少なくとも、遅くないんじゃない?」

「な、なにが?」

「食べた後からでも、十分遅くないんじゃない? 痩せること考えるのは。…………どうする?」

「そ、そうだよね! たしかに、今しかないもんね。……すみませーん!」


 暦月は勢いよく手を上げて店員を呼ぶ。


「はい〜、どうしました〜?」

「この特大パフェください!」

「わっかりましたー!」


 厨房へ行く店員の背中を見ながら、暦月はニヤニヤ笑っていた。



「ふふっ………楽しみだろ?」

「うん!」


 うんうん。やっぱり我慢はよくないよな。


……

…………

………………


「んー! 美味しかった!」


 その後、勉強のやる気はすっかり失せてしまい、しばらく駄弁った後、お開きとなった。


「あのーお会計の方は?」

「あぁ、僕が払います」

「えっ! わるいよ秀矢……」


 暦月はもう財布を開いている。


「こういうのは男に払わせるものって認識だったんだけど……というか、一度払うって言ったんだから、やっぱり割り勘で、とか恥ずかしくて言えるわけないだろう? どうせ大したことに使う予定もないこのお金も、彼女のために使われたって言うなら、本望だよ」

「えっと、じゃあ……ごめん。甘えちゃうね……」

「うん。気にしないで」


 まあ単にカッコつけたかっただけだけど。


 その後は特に何もなく、しばらくして解散となった。

 割と楽しい勉強会デートだった。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 紅葉の、傍から見たら淡泊、本人からしたら曲がらない性格が面白い [一言] 「楽しむ」についての考え方がほんとに面白くて納得できました。
[一言] 面白い気がするんですけどソゲブが長くて目が滑ります。 改行無いからでしょうか。
[良い点] 紅葉くん、決断力高すぎ笑 [一言] 人生楽しんだもん勝ちってことか。 なんか考えさせられるな…… それを一つ一つ説明してくれる紅葉くん、優しッ! なんだかんだ言ってほっとけないという笑 紅…
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