人間の幸せの為に戦うと言う
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ラジオのワード使って遊ぶのです。
飛べ彼奴を追い込め!純白の法衣に身を包む聖女は、鱗が空間に満ちる虹の光を浴び、色に輝くドラゴンを駆る。
闇黒色のマントを翻し舞う大魔王。
逃がすか!我の必殺技を受けてみよ!聖女は手綱から左手を離す。天に掲げ神から預かりし、伝説の光を具現化させて行く。
不敵な笑み浮かべその場に留まる大魔王。闇の力を秘めし剣をスラリと抜き向きを変え、白なる聖女と相対する。
二人から放たれる黒と白のオーラが、虹色を喰い世界は二色に染まっていく。
不穏なそれ、人界に災をもたらす。
牛は痩せ衰え乳を出さず、気候が乱れ穀物は育たず、疫病神が地から這い出し蠢く。
子は泣き母は抱き締め、父は天を仰ぎ神に祈る。
聖女が力を放つ刹那、
「聖女よ!そなたに問う」
ふわりと浮く大魔王が聞く。
「何ようぞ」
「我は悪か」
漆黒の瞳に銀の光を宿す大魔王。聖女の光が映り込む。
出来上がった宝玉を手のひらに留める。
問答が始まる。
「悪だ、盗みをやれと子に囁やき 力を貸した」
「子は飢え 死にかけ 棄てられていた」
「子は長じて窃盗団の棟梁となり 商家を襲う」
「義賊だ。同じく飢える子に糧を施す為に 襲う」
「商家は潰れ使用人達は飢える」
「主が見捨てて逃げたからであろ」
「ソナタが入り込まなかったら、子は棟梁にならぬ、その後多くの人が飢える事は無い」
「ならば、ひとつの命を見捨てていいというのか」
――、雑踏の片隅で襤褸を纏い、神の祈りの言葉すら忘れ果てた子に罪はあるのか。
大魔王が説く。
「そのまま天に召されれば、神の国で飢えることは無い、罪科を犯せば御霊は天には昇れぬ」
聖女が理を言う。
「神に慈悲はないのか」
「死して天で幸せに暮す。これも子を助ける道」
「子は死んだ先より、目の前のひと切れのパンと、カップ一杯の牛乳に幸せを感じると思うがな」
聖女、そなたとは解りあえぬ様だ。
ああ、その様な屁理屈は耳の穢れ。
「お手合わせ願おうか」
「手合わせとな。では……、ソナタに得物を合わそうぞ」
大魔王の笑みに聖女が乗る。銀白色の宝玉がひとふりの聖剣へと姿を変える。
斜に構えて待ち構える大魔王。
剣持つ手を頭上に構えた聖女。
彼女の覇気にドラゴンが応える。メロメロと口から青の焔を吐出す。
「行け!」
聖女が背に立つ。金の手綱を右手に絡め。
「こい!」
大魔王がソレを受け止めるべく、柄握る手に魔力を注ぎ込む。
黒と白の鋼の音が世界を震わす。
人の世に禍が襲う。
彼等は何故に戦うのか。
人間の幸せの為だと答えるだろう。




