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だるまさんがころんだ。
だるまさんがころんだ。声に出さずに呟き振り向く。
あの子の姿は人混みの中なのか、見えない。
だるまさん!ころんだ!まだまだ遠いのか、見えない子供。
待って?どうして?私は随分と、後ろに下っていたのに、気がつけば白線すぐ内側、線路が眼下。
思いっきり早く言って振り向く。
後の後ろにあの子の姿。何故、どうして近づける?通勤通学、電車を待つ人いっぱいなのに。
あの子やっぱりヒトじゃない。
しばらく眺めて時間稼ぎ。
早く、早く来て、時間になって。
あの子は少しも動かない。
ものすごく早口で言って……素早く振り向いた。
動かず、ぬるりと笑うあの子の姿。動けばあの子負けなのに。
ピロリンピロリン間もなく電車が到着します。
大丈夫、大丈夫。私の勝ちよ。電車が来たわ。アレに乗込めば私の勝ち。希望の四角い顔。そちらに身を向け、顔向けた。
気が逸れた。一瞬だけど。あの子には充分だったみたい。
ドン!背中を押されて、あの子が笑って逃げてく気配。
ねえ、お姉さん、だるまさんがころんだしよう。
良い子はホームで遊んではイケマセン。




