テラリラッラリーン!〜その1 転生王子の最初の難関とは
テラリラッラリーン!
何処か間の抜けた音楽と、おめでとうございますお后様との賑やかな声に囲まれ、俺は目を覚ました。
「ありがとう、無事に男の子を産めましたわ、神に感謝を……、ああ、予言の通りなんと美しい赤子なのから」
ちっさい器の中に入ってる感じがする。赤子が美しいってか?じゃ俺は今『赤ちゃん』なのか。しかも何やら大層な事に、サルじゃない、美しいって?それに『予言の通り』ん?この展開って『なろう』のお決まりの……、
『異世界転生!』ではないのか!やった!どうやら俺は『ヨーロッパに似た世界』に近い異世界に、めでたく転生を果たしたらしい。
なんとなく感じる『俺が主人公』てな気分……。世界のあらましがわかる。ふふふふ、主人公なのだな。うん、間違いな、以前感じていたあぶれた隅っこ感が無い!
「本当に可愛い」
ふお、いい香りがする。俺を暖かく柔らかな胸に抱いて、そろりと頬に優しく触れる白魚の指の持ち主、母親はお后様と呼ばれる地位か。
「后よ、よくやったぞ!」
「陛下、ご覧になってくださいな」
ほおお、そなたに似ているぞよ、と声が聞こえる。父親だな。家臣達かな?次々とやってきて、おめでとうございますと声が聞こえる。
キョロキョロとしたいが、産まれたてなので、まだ辺りははっきりくっきりとはいかない。よく見えない。しかし大人達の言葉がわかるし、
『予言』『異世界転生』を考えると……『魔法』ってのが存在している可能性は高い、そして俺にはもちろん、お約束の神様からの『チート』な贈り物が与えられているはず……冒頭のアレが何よりの証拠。
なので俺は、頑張ったら近く位は、はっきり見えるんじゃない?と思い、そうやって見ると……
「まあ、陛下と同じ綺麗な青い目ね」
俺の目の前には、嬉しそうに笑顔を見せてくる、絶世の美女、ほおおおぉ!お、俺の母親びじーん!とテンションが一気に上がる。上がったところで、とろりと眠たくなる。
はぁぁ……眠る前におっぱいが飲みたかったなぁとちょっと残念に思ったが、起きてからのお楽しみにとっておくことにした。ふわりと運ばれる感覚が気持ちよかった。
そしてその時の選択を、俺は後悔をするとは夢にも思わなかった、産まれたての幸せな時。
……!さ!寒!寒い!ほえ?何でどうして寒い?
ブルリと震えて目をしました。パチパチと火が爆ぜる音がする。ああ、そうか……暖炉だ。エアコンなんて無い。それでも狭ければ部屋全体暖まるのだが、恐らくは広いのだろう、温もりが遠い。
「ほ、ほえ………」
赤子らしく泣き声を上げると、母親ではない別の人間がそばに来た。失礼いたしますと布団の中から出す。濡れたモノを取り替える、寒くて寒くて震え上がる。
そして俺は柔らかな布に包まれると、そのまま抱き上げられ運ばれた。
「王子さまはお乳のお時間です」
そう言って別の人間に手渡された。はいかしこまりました、と別の声が聞こえた。あれ?母親じゃない……誰?と思ったが、腹は減っているし、酷く寒いしで、もとより何も出来ない今の俺は、与えられるままに肌に触れお乳を飲む。暖かい温もり。
飲み終わると、再び運ばれ寝かされる。そこには俺ひとり、さ、む!ほええええ!寒い!そしてものすっごい心細い!抱っこしてもらっている方が、かぜん暖かいので俺はとりあえず泣く!力の限り泣く、しかし王子はたくましくあるべきと言われ、そのまま放置!ひどくないか?
そして哀れな俺は、泣きくたびれ寝てしまう。
うつうつとしながら、前世の記憶が蘇る。確か………王族貴族の乳幼児の死亡率って、高くなかったけ?日本の将軍家もヤバかったんじゃ?
それは、こういう事なんじゃないのか?なんだかヤバいヤバい、とりあえず起きたら、起きたら……
母親を寄こせと泣こう!