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のんびり時々復讐を。  作者: カロ
第一章 轟かす神の寵愛者
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第五話 虚ろなる神



ずずーっ、とお茶を吸い、大きく息を吐く。口の中に程よい苦みが広がり、久しぶりのちゃんとした飲み物をじっくりと味わう。そっとお煎餅に手を伸ばし、これもまた味わって食べる。醤油の匂いが口いっぱいに広がり、今まで食べてきたお煎餅の中でも格別に美味しく感じる。


「ふぅ……おいしかった。それで、一体ラディは何者なの?」


 一息ついてラディにそう尋ねると、慌てて食べかけのお煎餅を口に頬張り、もぐもぐと口を動かす。

 やがて、ごくりと音を立てて、お煎餅を飲み込むと、お茶をずずーっ、と啜り、同じく息を吐く。


「うむ、そのことだったな。妾は、この世界《ユグドル》で闇を司る神。名は、虚ろなる神〈ラディアズマ〉だ。まぁ、属性神の一人というわけだな」


「……属性神って?」


「おぉ、そうか、お主は知らなかったか。まず、この世界の一部人型生命体には属性魔法というものが使えるのだ。火、水、風、土の四大属性に聖と闇の表裏属性。そして、雷、氷、霊、強化、精霊の特殊属性。計十一種だ。つまり、この中の闇属性の神が妾ということだ。分かったか?」


 なんとなく。そう答えると、ラディの顔をじっと見つめる。


 ……これが神様ねぇ。結構アホそうな見た目してるけど、大丈夫なのかなぁ?

 でも、そういう事なら、少なからずラディを信仰してる人もいるってことだよね。


「むぅ、そんなに見つめられると照れるんだが……。もしや妾に気が――」


「ねぇ、てことはさ、あのエルピダも属性神なの? 何となく聖の神だろうけど」


「……そうだ。聖を司る神様だ。あやつは妾と同時期に生まれた神様でな、一応ライバルということになっているんだが、どうもやり方が気に食わんのだ。利用できる生物は、そいつ自身の感情を無視して都合の良いように動かす。丁度お主のようにな。お陰で属性神の数名から嫌われておる」


 なるほど、つまり神様の中でもあれは異常というわけだ。別に神様だからって人を虫みたいに扱っているわけじゃないんだね。なんだか安心した。


 そういえば、僕の適正は氷とか言ってたな。……でもランクってやつが低すぎて話にならないんだっけ。はぁ、せっかく魔法無双できると思ったんだけどな。エルピダ許すまじ。


「じゃあ、牢屋でやったあの魔法みたいのって何? 何か、ラディを主にするって誓わされたけど」


「……あれは、実はお主の異能による力なのだが、そうだなぁ。ステータスを見たほうが早いか。【ステータスオープン】と唱えてみてくれ」


「分かった。【ステータスオープン】……うわっ!?」


 唱えた瞬間に現れたのは、まさしくRPGのステータス画面のようなウィンドウだった。そこにはわずかながら、文字が書いてあり、所々に文字が点滅し、恐らく押すことができるようになっている。




 ナギサ・ヴァンノワール 女 吸血鬼

  適正:闇、氷

  異能:契約

  称号:異世界人、虚ろなる神の寵愛、ラディアズマの眷属

     吸血姫、夜を好む者               




 あぇ? ……なんかおかしくない?


 えとえと、まず僕ってこんな名前じゃないよね。柏木渚だし。それに吸血鬼なわけがないし。あと、適正も闇が加わってるしぃ?

 ……どゆこと?


「そうだな。簡潔に言えば、お主は我が眷属になったために、妾のラディアズマ・ヴァンノワールの名を受けとったというわけだ。血の繋がっていない家族に似た感じだな。そして、吸血鬼と適正に闇が増えたことは、称号にある虚ろなる神の寵愛に関係しているのだが……これは少々話が長くなるから、まずは契約の文字を押してみてくれ。そちらから話を終わらせてしまおう」


 こくりと頷き、言われたとおりに契約の文字に触れてみる。すると、画面が切り替わり、契約についての説明が文として、少し長々と書かれていた。




 【契約】

 最上位の拘束力を持つ規約魔法。

 この能力によって結ばれた規約は如何なる規約魔法よりも優先される。

 お互いの合意の上に規約を結び、それに反することは何があろうとあり得ることはない絶対契約(アポルフ・シンボレオ)

 主従の契約を結び、主は眷属に対し絶対的な命令権と眷属の生命状態やステータスの確認、また自身の身体能力を一時的に譲渡することができ、眷属は、主への無条件の協力が義務づけられる支配契約(カロナス・シンボレオ)

 の二種類がある。




 なるほど、つまりはラディを主とする契約を結んだから、それよりも位の低い規約魔法である国王との主従関係が無くなったというわけか。んで、おまけにラディには永遠に逆らえないと。


 あ、ということは、もしかして神様の力を一時的に借りることができるのかな? もしできるのなら人間辞めるレベルにまで強くなれるじゃん。……まぁ、こんなアホそうな子に力を借りるのはちょっと癪だけど、良いやつそうだし、そこは妥協しよう。


「……ちなみに妾は神だから心くらいは読めるのだからな? ま、まぁ、褒められたことに悪い気はしないがな」


「……そ、それで、ラディの力を借りることはできるの?」


「それなのだがな、ここで寵愛とやらがかかわってくるのだ」


 寵愛……あれか、あの虚ろなる神の寵愛って称号のことか。そういえばあとで説明するとか言ってたっけ。

 ん、確かあの騎士団長も超威圧のある声でエルピダ様の寵愛がなかったって言ってたよね。寵愛かぁ。この世界に暮らす人たちにはなくてはいけないものなのか?


「ちょっと違うな。神からの寵愛というのは、要するに神から特に愛されている者に送られる称号なのだ。基本的に一柱につき一人寵愛を与えることになっている」


「ん? じゃあなんで、僕はあんなにいけないことみたいに言われたの?」


「そこがエルピダが嫌われる要因でもあるのだが……寵愛を与えられるということはその神から膨大な力を与えられるという事なのだ。それが、お主の適正に闇が加わった理由でもある」


 なら、たくさんの人に寵愛をあげちゃったほうが良くないのかな? それのほうが信仰する人に強い人が増えて広まりやすくなるし。

 それに、騎士団長のあの言い方は、恐らくほかのクラスメイト達には全員寵愛が与えられていたわけでしょ。それが出来ているってことはやっちゃいけないってわけでもなさそうだし。


「勘違いしているようだが、寵愛によって与えられる力は、自らの力を分け与えているのだ。そもそも神が下界に力を貸すこと自体難しいのでな。一人に与えるのにも力を半分近く失くすことになるのだよ」


「じゃあ、何でエルピダは三十人近くに寵愛を与えられてるの?」


「正確には八十六人だな。勇者たちと、王族。それに優秀な騎士にも与えている。何故これができるのかは簡単な話だ。一人当たりに与える力をかなり小さくすればいい。要するに力を分割してるわけだな。めちゃくちゃ強いってやつは作れないが、強い程度なら数を生み出せるのだ」


 なるほどね。……なら、尚更そっちのほうが得じゃないのか? 信仰者には民を愛してるっていう証拠にもなるし、リベルティア王国だっけ? の軍事力とかもかなり安定するだろう。


「言ったであろう。寵愛は愛する者に与えるものだと。あやつはそれを無視して、強いやつや特別な奴にひたすらに与えているわけだ。神としては最低な行為なのだよ。妾だってしっかりお主を愛してるし……ごにょごにょ」


「んー、そっか。言っちゃえば、寵愛とか言ってるけど実際には愛してないわけか。そりゃ、神として失格かもね」


「まぁ、とにかく、寵愛を与えたこと、おまけにここにお主を招き入れたこと、あとは吸血鬼にしたことで力をほとんど使い果たしていてな。しばらくは不可能だろう」


「そっかぁ」


 なら、あきらめるしかないのかな? お陰で救われてるんだし駄々こねるのはやめとこう。僕は大人だしね。……それにしばらくは、って言ってたしいつかはできるんだろう。それまでは地道に力を蓄えてみよう。


「さて、では次に吸血鬼になった理由だが……」


 あぁ、そうだ。吸血鬼だよ、吸血鬼。今のところから僕が吸血鬼に変わる理由なんかなかったし。……あ、いや、ラディの寵愛にはそういう能力がついているのかな?


 ふと気になり、口を開けて親指で歯に触れてみる。……うん、二本だけ歯が尖っている。これで血を吸えってことだろう。


「お主を、吸血鬼にした理由はな……」


「う、うん……」


 何故か、ラディが神妙な顔つきになり、思わずゴクリとのどを鳴らす。


 一体どんな理由が飛び出すのだろうか。……僕が呪われていたとか? それともエルピダに相性が良い種族だからか?あ、それともめちゃくちゃ強い種族だからかも。


 いやいや、待てよ。今までの話だ。かなり深刻な話に決まっている。雰囲気が違っているんだもん。そうに決まって――


「吸血鬼っ娘ってカワイイと思うのだよ」


「……はぁ」


 僕の主はやっぱりアホな子でした。


 先が思いやられるよ……大丈夫かなぁ?










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