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のんびり時々復讐を。  作者: カロ
第一章 轟かす神の寵愛者
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第一話 異世界召喚?



「……-い。おーい! 起きろ~!」


 体を強く揺さぶられ、ゆっくりと瞼を開いていく。

 ぼんやりと見えていた何かが次第に鮮明になっていき、漸くその正体が何かはっきりする。


「……んぅ。……あぁ、蓮か。おはよ~。」


 口から垂れていたよだれをふき取り、目の前にいる大親友に声をかけた。

 彼の名前は、五十嵐蓮。成績はそこまでよろしくないのだが、それを補うかのように、スポーツは万能、さわやか系のイケメンで、周りの気を配れて正義感のある、所謂主人公キャラだ。


 蓮とは高校に入ってしばらくしてから知り合ったまだ一年程の付き合いだが、僕にとっては最高の親友と呼べる仲。なよなよした弱っちい性格の僕とは正反対の性格で、何故クラスの中で少し浮いてる存在の僕と付き合ってくれているのかはいまだによく分からないが、とにかく良いやつだということは断言できる。


「おう、おはよう。……じゃなくてっ!! 授業中くらいは寝ないでちゃんと授業受けろよっ!」


「むぅ、昨日はボス周回でいそがしかったんだよ~。徹夜までしたのに、寝るなって言うほうが鬼畜だよ?」


「くそっ!ちょっと勉強するだけで上位に入れるお前の脳が羨ましいぞ!」


 そう言いながら、蓮は僕の頬を引っ張ってくる。

 痛い痛い、と涙目になりながら蓮の手を振りほどく。

 

 僕の名前は、柏木渚。

 色々あって、家族は全員他界しており、今は幼馴染の御影鈴花の家にお邪魔させてもらっている。僕のステータスはというと、成績はちゃんと勉強すれば上の中、運動神経は中の下、そして残念ながら高身長イケメンではなく、身長150cmくらいのチビで中性的な顔立ち、よく女子に間違えられたりするほどだ。

 何より、僕は三度の飯よりゲーム、アニメ、ラノベだ。そのためなら徹夜は当たり前。至極当然のことだ。


「はぁ……。お母さんも心配してるよ?渚くんは大丈夫なのかしらって」


「ひぃっ!?」


 突如、後ろから声を掛けられ思わず変な声を出してしまう。

 今声をかけてきたのは、御影鈴花。先ほども言った、お世話になっている幼馴染だ。


 彼女もテンプレ的な才能を持っており、運動はそこそこなものの、成績は常に五位以内をキープしていて、一位になったことだってある。きれいな黒い長髪と整った顔立ち、誰にでも優しい性格の彼女は、校内でも人気が高く、清楚系美少女といったところだろう。


 ある事件から、鈴花は僕のことに付きっ切りになるようになり、正直周囲からの目が怖い。それでも、こんな僕のことを気にかけてくれる鈴花は僕の大親友だ。


 ……五十嵐蓮と御影鈴花、計2名。以上が僕の親友であり友達である。これ以上はもういない。


「ふふっ、やっぱり渚は可愛いなぁ。お持ち帰りしてもいいかな……あっ、そもそも私は毎日渚をお持ち帰りしてるのよねっ! なら、家で渚をどうしようと私の勝手……ぐふ、ぐふふふふ……あたっ!? 何するのよ、蓮!!」


「いや、普通に気持ちわりぃからな?……全く、これさえなければ完璧美少女なんだけどなぁ」


 前言撤回。清楚系美少女(笑)です。

 というか、何で起こされてまでこんな会話を聞かされなければならないんだ。

 二人とも盛り上がってるようだし、寝てもいいよね?うん、そうしよう。寝ることで迷惑になることはないんだから……


「痛っ!? な、何で僕まで叩くんだよぉっ!?」


「当たり前だろ!? 何で会話の途中に寝ようとすんだよ……」


「理不尽、理不尽だっ! 二人の迷惑にならないように静かにしてあげようとしてただけなのにっ!?」


「寝たいだけだろ、てめぇは!」


 再度頭を叩かれ、机の上に突っ伏せる。

 ……ちっ、バレてたか。

 怒りの目を蓮に向けた後、鈴花に懇願の目を向ける。


「大丈夫。私は渚以外興味ないから、こんなやつを好きになったりしないわよ?」


「そ、そういう意味じゃないっ!!」


 とにかく授業が終わったようで、これからお昼ご飯の時間だ。

 僕は、料理等の家事スキルは同級生よりはあると自負している。小学生の頃に両親が死んでしまったため、少しは育ててくれることになった人の助けになるようにと家事は頑張ってきたのだ。お陰で家事スキルはぐんぐんと上達していっている。

 そして当然、鈴花のお父さんや僕たちの弁当を作るのも、この僕だ。

 

 カバンから弁当を取り出すと二人も自分の席に戻り、弁当を持ってくる。

 どうやら、蓮は今日もコンビニパンらしい。両親が共働きで作る暇がなく、蓮自身は料理が絶望的なほど下手なのだとか。


「くぅ、鈴花が羨ましいぜぇ。こんな美少女の手料理が食べられるなんてよ~」


「ふっふっふ、蓮にはあげないわよ?これは渚が私のために作ってくれた愛情たっぷりの弁当なんだから」


 鈴花が、蓮から見えないように弁当を抱え込むと、気持ち悪い笑い方をしながら体を左右に揺らす。


 ……いや、うん。僕は美少女でもないし、そこまで愛情込めてないんだけど。


 二人のことは無視し、さっそくご飯を食べようと弁当を広げお箸を取り出す。蓋を開けて、準備を終えると手を合わせて親指と人差し指でお箸を挟みこみ、大きく息を吸う。


「いただきま――」


 それは、僕が言い終えようとするタイミングで起こった。


 最初に聞こえたのは誰の悲鳴だっただろうか。

 突如として、教室内が眩い光に包まれ、思わず目を瞑る。瞼の上からもなお、鋭く感じる光は果たしてどれ程の明るさなのだろうか。


 いったい何が、そう考える隙もなく、始まりと同様突如として光がおさまった。


「うぅ……、今のは……。なっ!?」


 ゆっくりと、恐る恐る目を開けて真っ先に飛び込んできたもの。


 ……それは、白だった。

 そう。言いようもないただの白。四方八方全てが白に包まれている。いや、その白が果てしなく続いていると言ったほうがいいのかもしれない。


 そして、僕の周りには先ほどまで一緒にいた、蓮と鈴花。加えて約二か月ほど共に過ごしてきた同じクラスの人たちがいる。


 この状況、やっぱりあれとしか思えないんだけど……。


 クラスメイト達の顔を見てみると、殆どが困惑の表情を浮かべていたが、蓮を含めた数名の男子と僅かな女子は僕と同じことを思っているのか、目をキラキラと輝かせていた。


「な、なぁ、渚。これってまさか……」


「う、うん。多分これは……」


 ふと何かの気配を感じ思わず身を固くする。先ほどまでの不安と興奮がまるで嘘だったかのように鋭い緊張が走る。

 それは周りのクラスメイト達も同じだったようで、一様に沈黙し、じーっと正面を見つめていた。


『……ようこそおいでなさいました、勇者様方。私の名前はエルピダ。あなたたちの所から言う異世界で女神を務めさせていただいている者です。』


 突如聞こえてきた鈴の音のような声を聞き、カチリとピースがはまった。


 ――あぁ、これは完全に……異世界召喚だ。

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