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のんびり時々復讐を。  作者: カロ
第一章 轟かす神の寵愛者
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閑話 勇者、御影鈴花 2






 国王からの命令により、バラバラの場所に立っていた私たちは一か所に集められ、それから本題に入ることとなった。私自身も、今は一旦渚の容態を心の隅に置き、話を聞く態勢をとる。


「文献によれば、我らが神、エルピダ様からあらかたの事情を聞いているそうだが、どこら辺まで知っておるか教えてくれぬだろうか」


 国王が私たちに向け、そう問うたところで、なぜか五十嵐蓮が一歩前に出て片膝をつける。


「お……私は五十嵐蓮と申します。私がクラスの代表として説明しましょう」


「よい、己の呼ぶ時くらいはいつも通りで構わん」


「はっ、お気遣い感謝します」


 軽く頭を下げ、女神からまるまる聞いた話を話し始めた。


 ……何で五十嵐蓮が前に出ているのよ。代表なら朝比奈さんでいいだろうし、そもそも親友と自負していたくせに助けようとしなかったやつにそんなことを務める資格はあるの?


 ふと気になり、朝比奈さんの方向に顔を向ける。朝比奈さんは多少顔をしかめているが、前に出ようとはしないようだ。他の人たちは……嫌そうな顔をしている人はだれ一人としていなかった。いるのは、五十嵐蓮の姿を見て顔を輝かせる数人の女子と何故か気持ち悪い笑みを浮かべるオタク系の人たち。


「魔王と力の強化、そして異能か。うむ。助かったぞ、勇者レン。下がってよいぞ」


 国王から感謝の言葉をもらった五十嵐蓮は、一礼をした後お調子者の男子が集まっているところに入っていき、軽く笑った。

 周りから、頭やら背中やらを叩かれ、非常に嬉しそうにしていた。


「それでは、こちらからはもう少し深い話をさせてもらう。現在のこの世界には……」









 感覚的には、十数分だっただろうか。漸く国王の説明が終わり、軽く息を吐く。交えさせなくてもよいはずの国の自慢話がいくらか入ってきたために長くなってしまい、記憶も曖昧になってしまったが、かなり要約するとこんな感じ。



・魔王軍がここ数年で力をつけ始め、支配領域が増えていってるため、これ以上進むといずれは世界が支配されてしまう


・現在、王国の支配地も多く占領されており、無関係な国民が何万と殺されている


・過去にも、異世界から来た勇者が圧倒的な力を以て魔王を討伐した事例があるほど、異世界人は力を持っている


・異世界とこの世界は二つの時空で繋がっており、この国の王城と魔王城にある。王城には異世界からこの世界に向かって、魔王城はこの世界から異世界に向かっての時空だから、魔王を倒すことにより、異世界に戻ることができる






 加えて、この世界の常識も同時に教えてくれた。主に魔法の属性の話や、種族の話も教えてもらった。どうやらこの世界では闇属性と霊属性は悪の象徴とされているらしく危険なのだとか。あと、当然ながら魔族、他にも吸血鬼や龍人等あげればきりがないようだが、危険な存在が沢山いるから見つけたら即刻殺すか逃げるべきだとのこと。

 

 話が終わると、隣に立っていた宰相が国王にボウリングの球サイズの水晶を手渡し、それを膝の上に置いた。

 これは異能の名称と能力を把握するための特殊な道具らしく、一人ひとりここに触っていってもらいたいとのこと。


「その前に、自分自身の能力を確認してもらいたい。単に、心の中で【ステータス】と念じれば、其方等の目の前にプレートが現れるはずだ。そこに様々なことが書かれているから確認してみてほしい」


 そう、国王が発した途端、男子たちの目の前には一斉にプレートが現れた。一瞬動揺するが、落ち着いて【ステータス】と念じてみる。





 スズカ・ミカゲ 女 人間

  適正:聖、精霊

  異能:暴食

  称号:異世界人、望み往く神の寵愛




 ……ふむふむ。適正は、扱える属性もしくは向いている属性ということかな。異能は……少し気に食わない名前だけど、あながち間違っていないような気がする。望み往く神は、あのエルピダとかいう女神でいいかな。


 ふと周りを見てみると、男子たちは何やらプレートにタッチしているらしく、それを見た女子も真似事をしてわぁと声をあげていた。

 どうやらプレートに触ることで何かが起こっているらしい。


 同じくプレートの適当な場所にタッチしてみるも、何もできない。

 なら……。と、今度はプレートに書かれている文字に触れてみた。すると、すぐにプレートに書かれていた内容が変化し、軽い文章に変わる。





【暴食】

 どんな異常をも無効化する異質な臓器を持ち、あらゆるものを食べることができる。

 また、食べたものを蓄えることができ、自由に力に変換して、一時的に、身体能力をあげたり異能を得たりすることができる。





 これは渚が良くやっていたRPGゲームにあったやつみたいな機能ね。クリックしたらその詳細が現れる感じ。なら、プレートというよりはディスプレイ……って今はその話じゃなくて、この暴食ってやつの効果よ。

 なにこの変な能力は。確かに便利だとは思うし、十分強そうだけど、どうせなら派手にバーンとできる能力が良かったわ……。


「御影さん、貴女のステータスはどんな感じかしら?」


「……朝比奈さん」


 突如肩を叩かれ、振り返った先にいたのは朝比奈さんだった。周りに女子はいなく、また朝比奈さんが私のところに来たことに気付いている様子の人もいない。どうやら最初に私のところに尋ねてきたようだ。


 朝比奈さんは確かに信頼できる人だ。おまけに、渚を助けようと動いてくれた人でもあるし、普段の生活を見るに観察眼に優れ、正しい判断ができる人物だと思っている。

 だから、頼ること自体は構わない。だけど、自分の力を簡単に伝えて大丈夫なのだろうか。国王の話から感じるところ、この世界は確実に弱肉強食だ。相手に力量を知られることは死と捉えることもできる。


「ふふっ。やっぱり御影さんも私と同じようね。安心したわ」


 伝えるべきか悩んでいると、朝比奈さんが笑い、そう告げてきた。


 そうだ。朝比奈さんは実際私よりも優秀だ。自分でも観察眼に優れているといったじゃないか。なら、当然おいそれと力を教えることは馬鹿な行為だと分かっているはずだ。つまり……。


「御影さん。私と協力体制をとらないかしら? この状況、早めに信頼できる仲間を作った方が得策だわ」


「……私は構わないわよ。朝比奈さんみたいな人が味方だと頼もしい。でも朝比奈さんにはたくさんいるんじゃないの? そういう仲間が周りに」


「はぁ。あの子たちは別に仲間じゃないわ。ただついてくるだけの役ただず。自ら考えようとせず、私の行動なら正しいと勝手に判断して……貴方はこれを仲間とでも?」


 朝比奈さんの呆れたような声に、挙句の果てにはこれ呼ばわり。あんなにも真面目だった彼女の発した言葉に思わず吹いてしまう。


 どうやら、朝比奈さんも私と似たような考えをしていた様だ。


「いいわね、その感じ! 私も朝比奈さんみたいな人材が欲しかったところよ。ただし! 私は渚を第一で行動するわ。それでも大丈夫?」


「あら、こう見えても私、恋愛的な意味で柏木君が好きなのよ? ……私ね、一年前までの私が憎いのよ。柏木君がいじめられていたのに何もできなかった。何もしようとしなかった。だからこそ、他人に同調するばかりの行為が大嫌い。貴女と同じでね。……ってことで、これからよろしく頼むわよ?」


 朝比奈さんからの堂々な告白に多少驚くが、渚だからしょうがない、と差し出された手を強く握り返し、ニコリと笑う。


 上等よ。渚のことを一番わかっているのはこの私、御影鈴花なのだからね。負ける気がしないわ!








 こうして、後に世界を騒がせることとなる『ナギサ同盟』が今ここに結成されたのだが、それはまだ誰も知らないお話だ……。







 

次話で一旦勇者サイドを終わりにして、本編に戻ります。

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