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傑物の一族の傑物ですが、なにか?  作者: 猫側縁
第3章 学生 シエル
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第43式

お久しぶりです。

長らくお待たせいたしました。お待ちいただいていた方がいましたら、誠にありがとうございます。

調子が戻り切りませんが、またぼちぼち始めさせていただきます。

どうかよろしくお願い致します。



魔物と魔獣と、魔生物と召喚獣。

今まで特に何も言わなかったけど、人間種以外という点では同じ。

いい機会だから説明に入りまーす!


"魔物"は人間に害をなす魔獣と魔生物の総称。多くは魔力の中から生まれる、核を持っていることで形を維持しているだけの魔力の塊。それが生物の死体とかに入り込むと魔獣というカテゴリになる。基本的に人間を襲うよ。

人を殺す事が目的というわけでもない。魔力でできているから、枯渇してくる魔力を補おうと本能的に人間を襲うの。ただ知性が低いから大抵人間を殺すことで魔力を奪っている。契約して魔力を定期的に貰うことだって知性すらあれば出来るんだけどね。


次に、召喚獣。ケットシーとかは基本的にこの世界には居ない。どういうことかと聞かれても説明がなかなか難しい。頑張って理解してね。

簡単に考えよう。世界が二つあって、片方は人間だけが住んでいる。もう片方には人間以外(魔生物)が住んでいる。

その間にはとんでもない壁というか、扉というものが横たわっていて、普段は干渉も感知もできない。気付かない人はずっと気付かない。

召喚士としての才能がある人間だけが一時的に世界と世界の間の壁に抜け穴を作り出せる。その抜け穴を通って出てくるのが召喚獣。契約できれば、次回からその召喚獣を呼ぶ為に壁に穴を開ける必要は無くなる。召喚獣がつながりのある召喚士の所に壁を擦り抜けなくても現れることが出来るようになる。


問題は通り抜けてくるのが何か、召喚するまで分からないこと。たまにいるからね、召喚されてすぐ召喚士襲う奴が。ミリィのあの失敗がそれにあたる。だからある程度召喚士は自分の力量を把握した上で、自分が望むような種族が来やすい陣を作る。水系がいいなら水を示すマークを陣に組み込むとかね。ミリィも結局失敗したけど、彼女の望んだ"強い"生物自体は召喚できた。ああいう事だよ。


基本的に召喚するも契約できず召喚士が殺されたりすれば勝手に向こうの世界に帰る事ができるんだけど、偶に帰り道を無くす召喚獣もいる。その場合は、……残念ながら、こちらの世界に留まることになり、魔力が枯渇していき、結果人を襲う魔物にさせてしまう。


……契約して自分の召喚獣にしても、魔物にしてしまう、なってしまう事も勿論ある。前に説明した通りね。



まあ、つまりは、"人を襲う何か"は、今話したどれかじゃないかという事。

魔物は帝都にすらいるよ。だって迷宮があるんだから。"流れ出し"ていないだけで、迷宮に魔物は存在している。やり方によっては外に出す事も可能だろう。

もしくは

帰り道を失った召喚獣か、

魔物になってしまった召喚獣か、

……考えたくないけど、召喚士が契約した召喚獣に襲わせているか。


「……帰り道を失った召喚獣と、魔物に転じた召喚獣だとすると、手当たり次第に人を襲っていなければおかしい。その2つだとするなら、知能があってかなり強大な魔力を持っているだろうね」

「攻略者や騎士団にまで平然と仕掛けていますからかなり強い召喚獣と契約できる人物に限られますよね」

「……帝都内に留まっている召喚士全てを尋問でもする?」

「無駄でしょうね。だったら迷宮攻略寸前で横取りされて恨んでいる人間がいないか探す方が余程効率がよろしいかと」

「だよねー。でもそれで調べたところで、星の数ほどいそうだし」


特に貴族なんて、足の引っ張り合いだろうから。


「……先輩が襲撃を受けていないのが気になるところですね」

「うん。……まあでも、襲撃を受けていない貴族の迷宮保持者もいるから」

「共通点が見つからないんですね」

「そうだね。共通点なんて帝国国内にある迷宮の持ち主ということくらいだよ。その中で更に線引きしようにも、私は実物を知らないから」

「冒険者登録が手っ取り早いですけど、困るんですね?」


後輩には笑顔を向けるだけで答える。可愛いと言って悶絶している。

……リヒトに見つかっちゃうからね。


「さっきの、名前とお金だけでなれる冒険者の資格で、他の迷宮は見てまわれる?」

「大方は、可能かと。ただ……北の元将軍閣下の迷宮だけは、難しいかもしれません」


北の元将軍閣下?

私が分かりやすく首を傾げてみせれば、後輩は説明に入った。


帝国の最北に位置する領地を治めているのは、数年前まで帝都で騎士団の総括をしていた将軍閣下。今は引退して領地に移り、最北からの侵入者を1人残らず仕留める鉄壁の守りと化しているらしい。

そんな彼は領地へ帰った際に年間で何十という冒険者が迷宮にて命を散らしているのを知り、簡易登録の冒険者と、ランクが低い冒険者は弾く事にしたそうな。


「北かぁ」

「来月末から祭りの期間に入るらしいですよ」

「祭り?」

「簡単に言うと、雪祭りの氷版です」


氷像のコンテストとかありますよ。と後輩。

てことはかなり寒いんだろうなぁ。


「クリスマスマーケットみたいなものも領地のあちこちに出ているそうですよ」

「クリスマス……あ。帝国に近い地域ほどクリスマスやらバレンタインやらやってたのって何かしたの?」

「はい。現在の父親は商売の匂いがすると乗り気で広めてくれました」

「流石一流商人……」

「学校も冬の休みに入るので、わたしも行きますよ。商売しに」


北の方に支店は無いらしい。この店は帝都での評判がかなりいいらしく、遠方から来る人がちらほらといるから、たぶん売れるとのこと。


「まあその前に卒業試験で使う魔法陣を完成させないといけませんけど」

「卒業試験?」

「あと数ヶ月ですが、卒業月の1日に3年間の集大成という形で、オリジナルの魔法陣を1つ発表するんですよ。今までの成績と、その陣の出来栄えで魔法科目の成績が決定します。

あとは各専門科の成績と合わせて総合成績を出される、という感じです。祭りで一稼ぎしたら卒業まで時間がありませんから、先にある程度まで完成させておかないと」


……そんなのあったっけ?

(編入前にすっ飛ばされた説明の中に入ってた内容だ。by.校長)


……まあいいか!


「どんなやつ作……何でもない」

「どうしてですか?先輩になら見せますよ」

「オリジナルの陣を私がパクったらどうするの。もっと警戒心持ちなさい」

「大丈夫です。先輩はそんな事はしません。

自分の知識を差し出したり、それによって誰かに恩恵を与えたとしても、それを自分の功績にはしません」

「私はそんな聖人君子的な人間じゃないよ?」


そんな事は決してありません。と、そこはゆずってくれなかった。私は本当に大した人間じゃないんだけどな。痛いのも面倒なのも嫌いだから、手放すだけの話なんだけど。


「とにかく、先輩は大丈夫なんです」

「盲目的だと身を滅ぼすから気をつけなよ?」

「はい」


返事はいいんだけど、この後輩は困った子で、普段はいい感じにドライなのに私関連になると痛み悲しみすら喜んで受けちゃうど変態さんなのよ。私関連で不幸になるなら本望ですとか思ってそう。怖い。指導係として一般的な社会人教育してたはずなんだけど、どこで間違えたのやら。

え?レイヴィスさんと似てるねって?

……似てるって言えば似てるけど、決定的に違うとこがあるよ。後輩は、私がどんなに自分自身の中にある私というイメージから外れても、私の事を傷つけない。それが私だと受け入れる。全肯定する。彼女の絶対に許せない事を私がしない限りは。


「日程調整して、仮登録して、卒業試験の為の準備しつつ、北のお祭り……。やる事いっぱいだわ」


仮登録終わったら各迷宮にも潜るし、ね。


「そろそろ王子も迎えに来ますよ。……過保護とか、そう言うのを抜きにして、心配なので一応言っておきますけど、仮登録はギルドに行かなければならないのは変わらないので、くれぐれも身バレしないように気をつけてくださいね。

シエル様に対して敵対心やら興味を持ってる人たち、本当に多いですから」

「私が直接何かした覚えは無いんだけどね」

「先輩は良くも悪くも目立ちますからね」


有名人は大変ですねと他人事の後輩。……他人事か。


クラウスが来ちゃう前に、と見始めた後輩の作った魔法陣があまりにも壊滅的過ぎて目眩がした。一体何を呼び出すの?これは何の魔法なの?いろいろ突っ込みどころ満載。

そんなうちにクラウスも来ちゃって、けどそれどころじゃなくてある程度陣がマトモになるまで頑張った結果、2時間ほどクラウスを放置して拗ねられた。……めんどくさいな!


「……俺の作る魔法陣も手伝うだろうな?」

「わかったよ……そのくらいで機嫌が治るなら手伝うよ……」


ついでとばかりに来月まで陣についての講義を隔週、放課後、学年と専門科問わず希望者のみという形で、私がする事になった。……現在学校で陣の研究をしている第一人者だからね!私!不本意っ!!


「スピカさんにいっぱい働いてもらうんだからっ!」

「八つ当たりするな」


読了ありがとうございます。

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