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傑物の一族の傑物ですが、なにか?  作者: 猫側縁
第3章 学生 シエル
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第4式


やあやあみなさんこんにちは!


「シエル様は旅をしていらしたとのことですが、まだ未成年でしょう?お父様やお母様はご心配なさらなかったのですか?」

「…けっこう放任主義だからね」


私は今甲斐甲斐しくレイヴィスさんが淹れてくれたお茶を飲んでるんだけど(この人なんでこんなにお茶淹れるの上手なの?公爵子息様だよね?)、さっきからずっとこの調子で質問を受けてる。


「いつから魔法の鍛錬をはじめましたの?あまりにも見事な結界魔法で、私夢を見ているのかと思ったほどでしたわ」

「いつからかなぁ。でも確か一番最初に使った魔法は結界魔法だったから、使いやすいんだろうねーきっと」


じいが言ってたから、一番最初に使った魔法は結界魔法で間違っていないはず。あの時は確か令嬢メイドが私にゴマすりし過ぎて気持ち悪くて発動したんだっけ。素直だったなー私。


「それで、その、シエル様はいつからそちらのハディルディエ公爵子息様と恋仲ですの?」

「恋仲違う。レイヴィスさん、喜ばないで。この人ただの護衛」

「……護衛?」

「そう。護衛。シェアース侯爵令嬢様は」

「ミティとお呼び下さいな。何もお気になさらず、ミティと!呼び捨てで!」

「…えっと、ミティ、は」


サロンの一角。テーブルを挟んだ向かい側のソファにはクラウス。対になるもう一方のソファの真ん中に私、その左にレイヴィスさん、右にシェアース侯爵令嬢が座っている。

目を爛々とさせて全身全霊で私に好意を向けて名前呼びを迫って来る彼女の勢いに押される形になりながら思う。

彼女、何で私に懐いたんだっけ?


「……あー。シェアース侯爵令嬢、キミはシエルのことを嫌っていたのでは?」


私の引き具合を見たクラウスが注意をそらしてくれようとしたらしい。彼女はまるでたった今皇子が向かいのソファに居たことを思い出したように佇まいを直して、恥ずかしそうに言った。


「ええ、お恥ずかしながら……。数日前までの愚かな私を亡き者にしてしまいたいですわ……。

けれど今は違いましてよ!

圧倒的なまでの力、脅威を脅威と思わぬ堂々っぷり、なにより、散々嫌な態度を取ってきた私を見捨てない大きな器……!

私、感激すると同時に感銘を受けましたの!」

「……つまり危険な所を助けられて、ころっと落ちたわけか」

「クラウス、人間そんな単純なものじゃ無いよ。(絶対裏とかあるって)」

「お前の左に座ってる前例があるからあり得ん話では無い」


……どうしよう。返す言葉が見当たらない。レイヴィスさん、わかる、とばかりに頷かないで。困るなぁ。基本的にこの人私に関する事って全肯定なんだもん。子供に対してはあまりよろしくない反応だと思うんだよね。

あんまり子供を甘やかしたり全肯定するとわがままに育っちゃうかもしれないじゃん。え?そんな風に心配せんでも、私もけっこうわがままに育ってるって?私はいいんですー。無理なわがままは言ったことないもん!出来る範囲でのわがままだもん!ギリギリを見定められる分余計にタチが悪いってクラウスあたりはいいそう。


「ミティは平民がお嫌い?」

「…いえ、嫌いというか、その……」

「身分の違いがある人間同士が仲良くしているのが不思議なのと、単に羨ましいのでしょう」


レイヴィスさんははっきり言うなぁ。ミティは図星すぎてぐうの音も出ないようだ。


「身分の違いを感じるような話をしてないからかなぁ?」

「お前は口を開けば魔法か書か又は旅の事だしな」

「他に興味がある事なんてないし。何か話す?聞きたいことある?気が乗らなければ答えないけど」

「答える気無いだろ」

「バレた?」


まあ普通ならこんな会話あり得ないよねぇ。

片方皇子で片方得体の知れない旅人(の、本職:公爵令嬢)だもんなぁ。

ああ、因みに、今更だけど私がクラウスとかおじいちゃんに敬語使わないのは、前者は第一印象が最低だったのと、年齢やら挙げてる功績的にギリギリ許されるとわかってるからだからね。短気な王族だったら一発レッドカードだから気を付けてね。


「わ、私の無礼をお詫び申し上げますわ。確かに、シエル様に対して、醜い感情を持っておりました。ですが!今では違いますわ!!

誠心誠意シエル様に尽くそうと思っておりますの!」

「…えっと、別に尽くさなくてもいいよ。それなりに接してくれれば…」


寧ろ構わないでくれるのが多分一番。お互いのためだと思う。


「いえ。いいと思いますよ。確かシェアース侯爵家は帝都への物流関係を取り仕切っていますから、仲良くしておけばそれなりの利点がありますよ」

「いや使えるものは使う主義だけど、それはなんか違う」


私がレイヴィスさんにそう言い返せば、彼らは揃って首を傾げた。この人たち典型的な貴族的思考の持ち主だから、私の真意がわからないんだと思う。……ん?誰よ、お前もその貴族様だろって言ったのは。私は今、シエルだよ。ただの旅人だよ。貴族って立場からしたら私の方がぶっ飛んだ考え方だって?……そりゃ否定できないけどさぁ。


「欲しいものは自分で手に入れる。どうしようもない時は頼る身勝手だけど、私は基本的に正当で出元の分かってる報酬でなければ、何かを受け取ることはしない主義だよ」

「……つまり、敵か味方かわからない人物からの都合のいい贈り物は、警戒の対象にはなれどお前の中での株を上げる結果にはならないわけだな」

「そーだよー。だって後から何要求されるか分かったもんじゃない。貴族はそういう生き物でしょう?」

「……シエル様は、貴族がお嫌いなの?」

「ん?それも違うなぁ。私が嫌いなのは、貴族は貴族でも」


パリン、と軽く音を立てて、陶器が割れた。

次いで聞こえるうるさい声。……前にも聞いたことあるような。


「ちょっと!そこの給仕!私は甘いクッキーは食べませんわ!何故こんなものを私の前に出せますの!

私の一存で貴方なんてすぐに解雇出来ますのよ。分かったら早くこんなもの持って下がりなさいこの下民が!!」


理不尽過ぎる。反吐がでる。身分を振りかざして、相手を尊重しない。食べないなら手を付けずに、そのままにしておけばいいだけの話なのに。


「……シエル?」


クラウスに声をかけられて、視線を戻す。クラウスは私の言いたいことが分かったらしく、頷いたが、他2人はやっぱりイマイチわからないらしく首を傾げた。


「私が嫌いなのは、ああいう人間って事だよ」


ああいう、の所で視線を騒いでいた令嬢に向ければ、2人も成る程と思ったようだ。ミティに関しては少し視線を泳がせた。自覚があるからだろうなぁ。


「まあそんなつまんない話はやめようか。

さっき面白い話を聞いたから、教えて欲しいんだけど。

創立祭の武術大会について」




魔法学校の創立祭は、毎年夏期に行われるそうだ。帝国内で毎年行われるイベントの中なら、最も人気の高い祭。ただし、学園の門の内側にしか関係のない話だ。

皇宮、騎士や研究者達、学生たちとその親などの関係者のみが参加を許されている。クラウス曰く、防犯の為らしい。

では何故帝都で最も人気の高いといえるのか、それは学園の門の外側でも大々的にお祭りが行われるからである。

そして、私が興味を持った武術大会は、門の外側の競技場で行われる。もちろん門の外なので、一般公開されるし、一般参加も可能な大会だ。優勝者にはその年の最強の称号と、なんでも1つ必ず願いを叶えてもらえる権利が与えられる。


「目立つ事を嫌うお前がその大会に興味を示すと言うことは、何か叶えたい事があるのか?」

「うん。叶えたい事っていうか、欲しいもの?」


一体それは何かと、両隣が前のめりになって聞いてくる。うん、教えるから、ちょっと落ち着いて下がって、出来れば安全そうなクラウスの隣に座らせていただけないかなっ?!


「私が欲しいのは、星降りの迷宮へ入る権利だよ」

「……?冒険者登録さえしていれば、ランクによっては普通に入れますよね?身分証として登録する方は多いはずですが?」

「シエルは作ってない。わざわざ教会に出向いて身分証を作ったくらいだからな」

「わざわざの部分を強調しなくてもいいと思うんだけど。なに?まだ恨んでるの?簀巻きにした事」

「それは不問にすると言っただろ。ただあの時はまだ」

「はいはい。反抗心ないしは反発心があったんでしょー。知ってるよ」


だから簀巻きにしたんだけどね。だって急に斬りかかられても困るし。


「簀巻き……?」

「皇子を…?」


2名ほど、話が分からないながらそこだけは引っかかったらしい。……別に気にすることでもないと思うの。だってその時皇子は使用人に化けてたもん。(私は正体を知ってて尚簀巻きにしたことは否定しない)

特殊な事情により、一発不敬罪とはなりませんでしたが、良い子は真似しないでね!

クラウスが2人に何でもないから気にするなと言って、話を進める。


「星降りの迷宮に興味あったのか。帝都に入ってからなにも言わないから、興味が既に失せたのかと思ってた」

「いやぁ、興味が無かったらトンネル掘ったりしないでしょ」

「……それもそうだな。同行者という形で俺やクロイツがいれば入れるが?」

「面倒。というか、護衛を引き連れて歩くのが面倒。単体で飛び回れる自由が欲しい。ちょっと行ってくるーで素材とって帰ってくるくらいの身軽さでいたい」

「無理を言うな……」

「いや、実際魔法を使ってクラウス達を撒くのは簡単なんだよねぇ。正直な話、無理ではない」

「前から薄々感じてはいたが、お前は護衛の俺たちの実力を軽く見てないか?」

「どうだろうねぇ。戦ったこともないし、手合わせもした事ないしわっかんないなぁ」

「……護衛される人間が、護衛する人間の実力を知らないと言うのはどうなんだろうな?」


お?なんかクラウスの気が立ってきてるぞ?


「……別に知らなくても、実際は逆なんだからいいじゃん」

「……そこまで言われて黙っているほど、俺は大人ではないんだがな?」

「えー?短気は損気って知らないの?」

「よし、今すぐ準備しろ。競技場の使用許可を取ってくる」


クラウスが席を立ったので、私も移動を開始する。

……あ。願い事、護衛を外してくださいでもいいかも。正式にじゃなくていいなら星降りの迷宮なんて入り放題だってこの間の落とし穴の一件で分かったからね!

そんな訳で、あんまり楽しくないお茶の時間は終わり。楽しい楽しい手合わせの時間に突入です。


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