少女レベリング準備中3
~十桁西部領域~
朝日が顔を照らす。
窓の外には点々とした雲と澄んだ空が広がっている。
昨日の夜、一雨降ったのだろうか、雨のにおいが窓を吹き抜け、部屋を満たす。
寝ぼけた頭でもわかる快適な状態、ふんわりと暖かい光に優しく
目覚めを促された。
この調子ではゲームであることを忘れてしまいそうだが、最早ゲームではないのだ。
ゲームの癖に眠たくなったり、痛かったり、お腹がすいたり...ん?
右の太ももに違和感。
何かが絡まっているような、いや、人肌に暖かい。
「誰だ...?」
ゆっくりと、慎重に、布団をめくる。
「...ん?」
それは、見慣れた銀色で小動物の様に足に腕を絡め、丸くなった弟子であった。
「起床だぞ」
肩をゆすれど反応がない。
「起きろ」
頭をポンポンと叩くと少し反応があり、俺の足をより強く絞める。
「朝ご飯だぞ」
「ん...ご飯ですか?」
全く、現金な奴だ。
足の拘束具が外れて、血行の悪くなった足の曲げ伸ばしをする。
最初は感覚がないのだが、徐々に痺れが来る。
痺れ耐性は持っていたはずなのだが...
「そ、そうだった!師匠、勝手に部屋に上がっちゃってすみません!
実はエリチさんのいびきが凄くて、寝られなかったんです...」
「うん、わかった。お前は悪くない。」
扉を閉めていて、二部屋またいでも聞こえるエリチのいびき。
ある程度時間がたてば収まるのだが、さすがに耐えきれないだろう。
「やったー!ありがとうございます!怒られると思ってました!」
理由があれば怒りはしないと頭をポンポンと叩く。
しかし、廊下が騒がしい。
ドタドタと足音からしてかなり急を要するような事のようだが...
―――バタンッ
「ちょっと龍成!なんでリリちゃんと寝てるの!?」
髪が様々な方向に飛び跳ねているランカー様の登場である。
(し、師匠、いびきの事は内緒にしてください!)
ジェスチャーで恐らくこのようなことを言われる。
「いつから龍成はゲーム内女たらしになったの!?」
いや、どう見てもこの状況、言い訳が難しすぎるのだ。
いびきが酷いから部屋に避難していた、ならまだ納得がいくが、他にリリスが部屋を
離れる理由を考えることが出来ない。
いや、考えるのだ。
【頭の中で最適な言い訳を導き出すのだ!】
??「いやー、最近抱き枕が欲しくてさ」
いいや違う!これでは奴の事だ。『私でいいじゃん』と言われれば
また面倒なことになる。結局いびきに言及することになってしまう。
??「緊張して寝れなかったみたい」
正解そうだがこれはこれで違う、それでは俺と複数回寝ていると取られて
より長い押し問答に付き合わされるだけだ。
??「師匠弟子の関係だからかな?」
これはアウトだ。
昨日の『私の娘』発言以降、本当にそう思っているらしく師匠弟子→夫婦娘の方向で
取られて、ツインの部屋に変更させられては騒音被害&盛大な勘違いに
飲み込まれてしまう。
こうなれば仕方がない。
『今日の朝ご飯は何だろうな』






