少女レベリング準備中
『相手は人間』
(意味が分からない、相手は自我のないNPC……)
『死に戻りは出来ない』
(私はゲームをしていたはず……)
『これが現実』
(いや、この世界は仮想現実……)
リリスは龍成に言われた言葉が未だに
飲み込めていなかった。
「簡単にこの世界の状況を理解しろとは言わない。
だが、これらは疑いのない事実だ。」
「まって師匠、もしその話が本当なら何でサハリアノは
何度も生き返ったの?」
「サハリアノ?ああ、王太子の事か。タイミングだろう。
俺もこの状況を知ったのは最近だったのもあるが一時点までは普通にNPCであって、急に異変が起こって現実と同じシステムに変わってしまったとしか言いようがない。」
「じゃあ何で私を殺そうとしていたの?
招かれざる者って一体何のことなの?」
歯止めが利かない、この腹の底から冷え切るような恐怖は一体何?
「招かれざる者、恐らくプレイヤーの事だろう。
あの王太子はお前含め俺たちプレイヤーを母の仇と思っている。」
師匠は平然と答える。
私の質問に対して一切の感情を見せずに答える師匠。
「じゃあ、怖くはないんですk―――」
『やぁ龍成!久しぶりィ!!!!』
白と空色の海兵セーラ服。
青く艶やかな髪を靡かせる美女が突如として部屋に来た。
そう、その人は――
「なんでここに来たんだよ、”エリチ”」
「エリチさん!?」
何か色々と吹き飛んでしまった。
こんな機会めったにないと力強く立ち上がる。
「あ、握手してもらっていいですか!」
『うん?いいよー!』
配信で見るより白くて細い指、本当にこんな外見的にか弱い人がランカーだなんて、信じられない。
「ったく、何しに来た。」
「そりゃあもう、龍成に会いに来たんだよ!」
「手合わせか?今はやらんぞ。」
「そんなんじゃないって。戦闘狂は龍成の方だったね!」
「………」
エリチが龍成の背中をバシバシと叩く。
そして、ふと思いついたようにリリスに視線を移した。
「いや~、それより君は龍成とどんな関係?」
「は、っはい!私はリリス!弟子です!リュウセイの弟子です!」
「元気良いねぇ~、でもレベリングには気を付けるんだよ」
「え?」
「なんだ、弟子なら知ってると思ったけどレベリングシステムはまだ残ってるみたいだけど死んだらエンドだからね。
前までは格上と戦って~、とか無茶が出来たけど今やると範囲攻撃で死にかねないからね。」
配信とおんなじ軽い感じで惨い現実を突きつけられた。
「そんな御大層な忠告をしに来たわけじゃないだろう。
早く要件を言え。」
「お堅いなぁ。本当に何もないって。」
「何にもないのに重役が仕事ほっぽり出してここに来たってのか?」
「だいじょーぶ!仕事は全部ネメシスさんに任せたから。」
「また迷惑かけたのか……」
「ま、ついでに可愛いお弟子ちゃんと一緒に街を散策しない?」
「何がま、だ。」
「行きたいです!」
(憧れのエリチさんとこんな近くで、しかも一緒に行動できるなんて……)
弟子でよかったと心底思うリリスである。