少女レベリング10 (終)
「ししょー!ぜひ私に技を!」
「技を?」
「技を見せてください!!」
「わ、技を見せる??」
駆け寄ってきたと思えば何を言い出すのか...
「使いどころがないからなぁ」
「あるよ、そこの扉の先」
エリチが指し示すのはイロアスの言っていた重厚な門。
魔力が溢れているとか何だか言っていたか、あれは蒸気だろう。
奥に控える”奴”の放つ深い紫色の光が反射しているのだ。
「ま、取り合えず魔導士さんたちには逃げて貰わないとね?」
ガヤガヤと勝ち確定ムードに沸く彼らが、振り向く。
「逃げるって、どうしてですか?まさか、扉の中へ行くつもりじゃ」
「もちろん行くわよ!」
エリチの威勢が彼らにどう届くかは分からない。
「俺は行くぜ」
リガルドはどうやら残りたいらしい。
「俺も君たちが残るなら残ろう。」
イロアスも残るつもりだ。
「いいから。残ると死ぬよ?多分塔を吹き飛ばすと思う。」
さっきのエリチの技を見た彼らはその言葉に
嘘が無いことが分かっている。
エリチの警告は魔導士たちを震え上がらせた。
「空いた穴から私と龍成で重力軽減を掛けるから降りて。」
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リガルドとイロアス以外は全員降りきった。
唯一、金髪冷房野郎が怖がって降りれなかったもんで
蹴とばしてやった。
「本当に残ったら危ないのか?」
「ええ。今回の敵はあんまり手加減すると
周囲に損害出ちゃうからね。」
「そうか...」
「いまなら一階層に行っても敵は居ないわよ。
弔ってあげるなら今のうちね。」
「はは、覚えていたのか。言われなくても行くさ。」
リガルドはよろしく、と言う。
俺は重力軽減を掛けて見送った。
「ありがとな!龍成!エリチ!お前らは忘れないぞ!」
「また下で会おう!」
リガルドは、手を振りながら満面の笑みで
降りて、次第に点になっていった。
「あとは、俺だけか。」
「そうね。アナタには龍成とリリスの事頼むわ。
私はこの後はさよならだし。」
「待ってくれ、この事を国に伝えれば勲章ものだぞ!?
それこそ、国から補助金の出るA級ランクの討伐従事者にだって...」
「そうねぇ。でも、生憎お金には困ってないわ。」
「そ、それこそ魔導軍総長の座だって狙えそうな...」
「もちろん狙えるし、というか確定ね。」
「なら、何故―――」
イロアスの言葉にやさしく微笑む。
「いらないわ。イロアス、私は勲章とか名誉とか要らないから。
それよりも愛弟子と龍成に不便が無いようにしてあげて。
もし、二人に不都合があったらこの国を滅ぼすからね」
「冗談じゃない!私のできる範囲以上に二人をサポートします。
一人は大丈夫そうですがね。」
「確かにね!」
二人の視線がこちらに向く。
俺はやれやれと溜息をつくと、イロアスを見送った。
「さてと、どうする龍成。HPは無駄に高い相手だよ。
下の桁で長いから腕訛ってるんじゃない?」
「リリスはどうする。弱いって言ったってリリスは即死するぞ。」
「私がメインアタッカーになるからリリスちゃんの護衛は任せた。」
「結局俺は訛りっぱなしじゃないか。」
「えっ?えっ?即死ってなんですか?」
何も知らないリリス、エリチはその禍々しい扉を躊躇なく開けた。
俺、エリチは見たことがあるそのフォルム。
リリスは「ヒェッ」と言うと静かになった。
仁王立ちする巨大な人型の像。
五階建ての建物に相当する体躯、その体の
五分の四の高さもある大剣を地面に突き立て、柄に手をのせている。
ギロリと紫色に光るその眼は、俺たちを捉えている。
「くるよ!」
エリチの警告、そのすぐ後に片足を地面にドスンと落とす。
足を上げる瞬間を見逃さなかったのだろう。
つくづく戦闘狂だ。
対して距離が無いので強力な風圧と砂埃が一瞬で押し寄せる。
これだけの攻撃、やはり上層のボスクラスは違う。
久しぶりに体が疼く。
「訛り解消といこう!
『七桁の古代機械神殿のボス”神殿守護機スタフティ”』」




