少女レベリング8
魔物が最後に見たのは煉獄の炎なのか、そもそも思考する時間すら与えずに
消されたのだろうか。
焼けただれた壁、地面には焦げた血痕がみっちりと残る。
煤けた匂いが鼻腔を不愉快にし、外気が急激に上昇したせいで発汗する暇すら
なかった。
煙の奥には久々に見るであろう夕日が顔を出していた。
外の光に歓喜する魔道士達。
俺はとにかく暑かった。
あれだけ高熱の法撃、そのおかげで、物理シールドの中はサウナ状態だ。
生憎、冷房みたいな弱い氷結魔法は持ってはいないので、誰かに頼まなくては...
「スノー、冷房よろしく。」
『おい!そろそろ名前で呼んでくれよ!』
そう言えば名前を聞いていなかったような。
チッ、と舌打ちをするとスノーストーム(笑)が防壁内で猛威を振るう。
ああ、涼しい。
「そういえば、名前聞いてなかったね。」
『俺の名前はラガル・カルデラ・ケルファンドだ。ラガルと呼んでくれ。』
「じゃあよろしくスノーくん。」
「冷房ってなんだ!てか、ラガルと呼べと言っただろ!」
忿怒するスノー君を放っておいて、ここでレベリングのシステムについてだ。
基本的には撃破したモンスターや薬草採集、製造などがレベリングに挙げられる
手段だ。
その中でも戦闘による経験値獲得が最も獲得量が高い。
ただ、その詳しい経験値の算出方法は未だ見つかっていないが
だいたい攻撃者とその周辺で戦闘に関わった人間にも経験値が割り振られる。
その割合は、攻撃者が100%の経験値を手に入れるとしたら関係者には5%〜25%。
だから、エリチは一体一体を瀕死にしてリリスに倒させるというレベリング方法から
隣に置いて纏めて吹き飛ばすという方法の方がリリスが一回で受け取る総経験値の量
的に時間も効率もいいことに気付いたのだろう。
というか、そもそもリリスではダメージをあたえることは出来ない可能性もある。
さらに言えば、変化したこの世界にレベリングの概念があるのかも微妙なところだが。
「あんた、確かにA級なんかじゃないな...
器に収まりきれていない強さだ」
リガルドか畏怖の念を込めた視線の先にはひと回り溶けて
大きくなった通路、足首の高さに溜まる煙、立ち込める
熱い空気の中で、リリスと何か喋っているエリチの姿だった。
「なぁ、えっと、リュウセイ?あんたも同じくらい強いのか?」
俺は返答に少し考えた。
エリチは恐らくこの塔の事案が終われば是が非でも帰らされる。
ただ、俺やリガルド、この場にいる騎士やイロアスは残るのだ。
俺がこの地域を統括する人間に任命されたのは事実だが、
クラマスからはなるべく内政や軍政に関わらないように釘を刺されている。
ならば、答えは一つだった。
『な訳ないですよ。』




