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少女レベリング4

「宮廷魔道士の諸君!救援に来た冒険者だが!」


エリチは大声と共に堂々と体を晒し、通路に仁王立ちする。

俺も少し遅れを取ったがよたよたと隣に立った。


しかし、俺たちの見た光景は......


「………えっ」


掛ける言葉を完全に無くしてしまう。

2人同時に目の当たりにしたその光景に力が抜ける。

俺もエリチも、“舐めていた“のだ。


当初の予定では此方を攻撃する余裕と回復に従事する者が

居るはずであった。


そしてなにより、人体の破損が無いと考えていた。

だが、実際は違った。


五体満足な者は生きる事を諦めたように座り込み、腕や足、腹部に

重大な欠損を起こしている者は虫の息で横たわっている。

魔道士でありながら騎士のような甲冑を着ているようだが

まるで意味を成していないようで、布切れのように引き裂かれている。


固まったエリチより先に正気を取り戻した俺はリリス達に「来るな!」と

大声に任せて待機を命令する。


「そ、そうだ。助けに来ましたよ!」


怒号に感化されて再起動する。


宮廷魔道士は此方を見ると、ざわつき響めき始める。

そして、奥から全身甲冑に所々穴の空いた大剣を持った人間が

カシャンカシャンと音を立てて現れる。


「た、助けに……」


『我々は……冒険者などという盗人に助けられるほど落ちぶれてはッ―――』


重く圧のある嗄れた男性の声。

後に続く言葉を待ったが出てこない。

ふと、頭部装甲に当たるバイザーに目をやると、隙間から液体が

ポタポタッ、と垂れている。


左腕にしがみつくエリチの肩を寄せる。


俺もエリチも、宮廷魔道士がやられる程強い敵がいるのか、などという

理由では驚きはしない。

何故ここまで動揺するのか、簡単だ。


《グロテスク》だからだ。


確かに口だけでならこの話は聞いていた。

AT&Tとの戦いの報告を受けて、大した事じゃ無いと高を括っていたが

事実、目の当たりにするとキツイものがある。

本能的に目線が直視を避けようとするのがよく分かるのだ。


しかし、黙って見捨てるわけにも良心が許さない。


だから、とにかく彼らから情報が欲しい。

回復技を使って彼らと自分たちを話せる状態にしなくては……


集中するために、俯いて目を閉じる。

普段であれば一瞬だが動揺していてなかなか出ない為、落ち着ける状況を

なんとか即席で作る。


(使用したい技を思い浮かべ、それを選択して宣言する!)


今まで見ていた視界が一気に一点まで凝縮され、上下を光線が拡散する。

光線は前後の点と点を結び、視界内にいる俺はまるでラグビーボールの中。


「な、何なんだ!?」


周囲を見回せど外は見えない。

この不思議な空間は徐々に広がっていく。


そして、六畳ほどに広がると不思議と術名を言うようにと

まるで天からのお告げかのように促される。


(そ、そうだ。回復だ!”ヒールオール“!)


『異議、再構成リジェネーションヲオコナウベキ』


「だ、誰だ!」


『答エル必要ハナイ。再構築スル』


拒否権など無かった。

背後の一点から現れた幾重にも重なる重層魔法陣は一点に集約された先ほどの視野に向けて

流れ込んで行く。


そして……


『”再構成リジェネーション“』





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