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少女レベリング2

2人は剣をバットのスイングのように振る。

剣先は灰色のオーラを纏っているように見えた。

黒い鎌のオーラの塊が黒いガイコツを突風のごとく

吹き飛ばし、周囲を囲んでいたガイコツは壁に打ち付けられると

ヨロヨロと立ち上がり、再び接近を図る。


「お、おい!動いてるぞ!」


「大丈夫、見てればわかる。」


「師匠、どんどん近づいて…」


私が言いかけたその瞬間、目の前は一瞬で地獄に変わった。


腕、脚の骨が不思議な力で砕かれていく。

関節は肥大化して破裂し、肋骨はバラバラに地面に散らばった。


「ありゃ?こんなエフェクトだったっけ?」


エリチさんの質問に「後にしろ」と答える師匠。


剣先を軽くはらうと私に視線を向けた。


「リリス、ほら早く」


急かす師匠、私は粉々の骨の山々に目を向ける。


「この魔物は約80秒で復活するから手早く

頭蓋骨を剣で貫くんだ。」


鈍く照らす松明の廊下には夥しい黒色の人骨。

黒い頭蓋にぽっかり空いた目には薄っすらと赤い光が見える。


「これって、生きてたりしません?」


「ただのモンスターだ、気にせずやればいい」


エリチさんに視線を向けても頷くだけ。


そう、やるしか無いのだ。

弟子入りした時からわかっていたこと。


剣を皮の鞘から抜く。

そして、頭蓋のちょうど頭頂部に剣先を合わせ、突き刺す。

グシャッという音と、なにかの器官を貫いた感触、背筋が凍った。


「リリちゃん、大丈夫?」


エリチさんが気にかけてくれている、私は迷惑をかけるわけにはいかない。

そもそも、このレベリングは私の為にやってくれているのだ。


感情は捨てて、作業レベリングに没頭する。


結果、80秒以内に18体の討伐を行った。


まだ始まったばかりなのにもう手が震えている。

剣で貫いた頭蓋の合間から見えたのは、明らかに脳だった。

師匠達は恐らく相手を跡形なく吹き飛ばすから気づかないのだ。


 もし、これを知っておきながらやっていたとしたら”狂っている”。


 「レベル上がった感覚は?」

 

 「いや、良くわからないです。」


 「エリチ、わかるか?」


 「外見じゃわからないよ。

ポンタのとこに連れてけばわかるかも。だけどそれは後だねぇ。」

 

 「よ、良くわからないが、こいつらの骨は持ち帰らなくていいのか?」


 「何で?」 


 「い、いやな?金になるんだぞ?」


 苦戦していたであろう敵を、何食わぬ顔で制圧した二人に怯えるリガルド。

顔色を伺っている。


 「持って帰りたかったらどうぞ。要らないから。」


 エリチさんは興味なさげに返す。

二人そろってどうやら考え事をしているようである。


 「リリス、そういえばレベルシステムあったとき何レベだった?」


 「に、23です。」


 唐突な質問にヒヤッとなる。

この感覚、どうやら本能的に格の違いを教えられているような気分だ。


 「だとすれば大体24前半くらいにはなったんじゃないか?」


 「そうだねぇ……あっ、そういう事か!」

 

 なるほど、と手を打つ。

エリチさんと師匠の間ではどうやら認識が出来ているらしい。


 「よし、リリス。もう一階層上でレベリングするぞ。」


オー!と、エリチさんの声に合わせて右手を挙げる。


 『なぁ、一つ聞いていいか?』


 「どうした金髪、急に改まって。」


 『宮廷魔導士小隊の連中は一体どこに行ったんだ?』


 ハッとする私とリガルド。

そういえばその人たちはどうなったのだろうか。


 「上の階にいるか。はたまた野垂れ死にしたかのどっちかじゃない?」


 エリチさんはこれにも興味なさげだ。

 

 「会えば話を聞いて助けてやるかな。」


 「じゃあ助けましょう。」


 エリチさんは師匠が話に加われば割と何でも食いつくらしい。

というか、助けるつもりなかったんですか……


 「階層自体は見た限り25層以上あるね。取り合えず、登り切ろうか。」


 師匠とエリチさんの先導で奥の階段を登る。


 

  ~第二十階層~

 

 「ここまで魔物が出てこなかったなぁ。」


 師匠の空間把握スキルで階段を探しては登るをしていたら

あっという間に最終層間近になった。


 「そうねぇ、これじゃあレベリングにもなりゃしないわ。」


 「だがよ、この階層より下はどうやら争った形跡があったじゃねえか。

あれはやっぱり宮廷魔導士の仕業だろ。」


 「恐らくその通り。だけど、この階層にどうやら居るみたいだぞ?

その宮廷魔導士様達が。」


 『流石、宮廷魔導士様達だ。この階層までこじ開けてくれたのか。

このまま一気に―――』


 「宮廷魔導士の小隊の人数は何人?」


 エリチさんの真剣な眼差しに金髪は吃る。


 「さ、さん、30だ!」


 「なら、14人はご臨終しているみたいね。」



 『え?』


 

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