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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

俺の青春は何処だ

作者: クエルア

みんな中二病

 高校生は、人生の中で一番「青春」な時期だ。

 ほとんどの人がそう思うだろうし、少なくとも俺はそう思ってる。適当な創作物を取り込むとき、大抵主人公が高校生だからだろうか?知らないが、なんらかの影響があって、そういう価値観が作られたことは間違いないだろう。


「……」


 眠い。

 今は朝の5時だ。コーヒーでも飲もうかと倦怠感の残る身体を行使する。ガリガリと、ミルの音で少し眼が覚めるのもまた朝の恒例行事だ。

 2時間後には家を出なければならない。そう思うと少し憂鬱になる。これもいつも通りだ。毎日毎日学校へ行くのは面倒くさいし、行きたくないのに無理やり行く。学費の無駄なのではないかと何度思ったことだろうか。

 しかし、登校という義務化された行動に依存して安心している自分がいることにふと気づくのだ。そうなると、途端にそれを考えることがアホらしくなるのだった。


 少しすると、朝ごはんの知らせが母親の声によって届く。昨日も一昨日もパンだったな、と思いながらリビングへ行くと味噌汁と白いご飯が並んでいた。おかずには目玉焼きと申し訳程度のサラダ。

 黙々と食べる。


「今日はお昼、食堂で食べてくれない?お金あげるから」

「わかった」


 別に家族仲も悪くない。素っ気ない返事をしたのには理由がある。……まあ、かなり個人的なものだ。普通の人には理解できないだろう。

 何年か前まで、こういう会話を毎日のように交わしていた記憶がある。


「今日のご飯何?」

「今日は◯◯よ」


 別に何ら不自然でもない。一般的な家庭で普通に行われている会話だろう。飯の内容がわかると椅子に座って出てくるまで待つ。携帯を触っても勉強してもいいだろう。そしてだ。

 ふと、思ってしまったのだ。

 ただ飯が出てくるまで待ち、出されたものをただ食べる。


 今の俺は、まるで家畜のようじゃないか?



「……ご馳走さま」

「はい、もう出るの?」

「うん」

「いつも早いのね」

「まあね」


 準備をしておいたバッグを担ぎ、そのまま玄関へ。


「行ってきます」












「よう」

「おう、おはよう」


 電車の中で知り合いと出会った。別に珍しいことではない。むしろ会わない方が珍しい。何せこいつがいるであろう時間に俺も乗っているのだから。

 二人が揃うと決まって車両を移動する。それは、駅に着いた時にスムーズに出口に向かえるようにだ。


「あー、なんか面白い話ねぇの?」

「あるわけねぇだろ。お前あるんかよ」

「俺が話題を提供させてあげようとしてんのに俺に聞くか?」


 うん、うざい。

 自分でもうざいと思う。それはそうだろう。うざいように発言したのだから。俺は俗に言うキャラ、というものを作っていた。

 本心を見せたくないとかそんなのではない。言わばtrpgだ。

 電車に乗ったら「朝早いため、通勤客でそれなりに混んでいる。いつも通りの光景だ。」とかいうテキストが流れ、俺はその中で作ったキャラのロールプレイをしている。ある時はお調子者で、ある時は真面目に。

 相手もプレイヤーなのだから、当然演じているだろう。演じ分けているだろう。

 trpgというのも当然比喩だ。現実がtrpgな訳がない。俺らは探索者ではないし、ダイスも降らないしましてやステータスなんてものもない。

 だけど、この人生というものがどうにも作り物に見えてならないのだ。

 作ったキャラで、作られたキャラと交流する。

 俺がこの、「キャラを使い分ける」というのを、初めてやったのは果たしていつ頃だったのだろうか。

 気づけばもう、学校の最寄駅に着いていた。


「なに、さぼるん?」

「な訳ねーだろ」


 軽口を叩きあいながら、歩をすすめる。見上げると、我が学び舎は今日も平然とその場所に居座っているのだった。











「……この前のテストで、いちいち解法とか地道に数えてたやつはバツにしたからなー。Cくらい使え。お前ら高2だろ?あれは一応サービス問題として出したんだからな?あんなもん中学受験の問題だ」


 数学教師の呆れた声が聞こえてくる。窓際の一番後ろという青春の代名詞とも言える席に座ってる俺は、前席の背中を盾に外を眺めていた。

 よく、妄想する。

 テロリストが来ないか、とか。自分がなにかしらの力に目覚める、とか。隕石が落ちる、とか。宇宙人が来て無双する、とか。

 安めのライトノベルみたいなストーリーを、自分が主人公として。


「で、次!次の問題も正答率低かったなぁ!お前ら勉強しろ!」


 学校には二つ名で呼ばれてる女子などいない。

「氷姫」なんて呼ばれるクール系の美女はいないし、「皇帝」なんて呼ばれるツンデレ生徒会長もいないし、ましてや「聖女」なんて呼ばれる清楚系の幼馴染もいない。女子ランキングなんてものも存在しうるはずがないのだ。

 それらは創作物でしかなく、いくら読んだところで現実には侵食しない。創作物でハードルの上がった青春に期待して、いざ高校にくるとどうだ。……要するに、グルメになってしまったのだろう。

 架空の青春を基準にしてしまって、現実の青春がものたりなくなる。

 落し物をしても仲のいい野郎が拾ってくれるだけ。教科書を忘れても隣のクラスの仲のいい野郎に借りるだけ。

 可愛い女子が拾ってくれてその際に手が触れたり、机をくっつけて可愛い女子と密着するなんてことは万が一にもありえない。

 現実と理想との差が開きすぎて、その事実を前に死にたくなる。いや、今過ごしてるこの時間も、もしかして青春ではないのではないか。

 ……なんて、クソみたいな感傷に浸るたびに、心が死んでいくのだった。

















 放課後は図書室の自習スペース勉強する。

 もう、わかるだろう。つまり、出会いを待っているのだ。夕日でほんのり赤く照らされた図書室で、静かにシャーペンがノートを走る音。そんなとき、「あの……もう閉めますよ?」なんて可愛い図書委員の少女が声をかける。

 当然そんなことは一度もない。今日も遅くまで勉強すると、「もう閉めるよー!」とおばさんの声が響いた。残っていたのは俺一人。

 図書室の責任者のおばさん教師と二人きりなど、青春もなにもあったもんじゃない。


「いつも偉いね、この時間までずっと勉強だなんて」

「まぁ、それほどでもないです」


 適当に挨拶して、さっさと帰ろうと図書室を出た。


「あぁ、ちょっと!」


 後ろから追ってくるおばさん。


「あれ、僕、忘れ物でもしました?」

「いや、そんなんじゃないよ。はいこれ」


 と、差し出されたのは缶の飲み物。それは感触的にスチール缶で、暖かい飲み物だった。


「これ、あげるから。勉強頑張って!」

「はぁ。どうも」


 あぁ、貰い物処女(バージン)をおばさんに破られた……。クソくだらないことを考えながら俺は、それをカバンの中にしまってそこを後にした。












 季節っていうのも青春だろう。まあ春も、夏も、秋も、冬も、それぞれの青春がある。まあ今は秋な訳だが?

 秋の青春というとなんだろうか。葉が枯れて寂しくなったイチョウ並木で並んで歩くカップルだろうか?それとも体育祭で女の子と一緒に二人三脚などしちゃったりするのだろうか?

 季節、四季。……季語。

 要するに、昔の人も青春に飢えていたのではないだろうか。あぁ、これは秋っぽいなぁ、とか。これは夏っぽいなあ、とか。心情を共有してお互いに青春を供給しあっていた、なんて考えてみたり。

 だからそれこそ、紫式部が小説を書き上げたとかなんかはそれに青春を見出し、没頭したのではないだろうか。

 現代の人は、簡単にそれらを満たすことができてしまう。

 本屋に行って金を払えば小説を読めるし、なんなら漫画を立ち読みもできる。ネットには無料の小説がゴロゴロ転がっているし、褒められた行為ではないが、海賊版なんてものも出回っている。

 そして、その簡単に供給されるそれが、偉くハイレベルなものになってしまったのではないか。

 作られた青春を感じ、青春を求めてまた作られた青春に走る。まさに薬物みたいなものだ。

 青春は、麻薬なのだろう。人々の心を魅了し、離さない。それらは時に、麻薬よりも強力になる。ほら、だって今、こんなにも死にたい。


「……はあ」


 カバンの中身を見る。そこには、先ほどもらった飲み物が入っていた。取り出してみると、それは「蜂蜜入り!抹茶ぜんざい」とかいう、飲み物か疑わしい表示がなされていた。

 あのばばあ一体どんな味覚してんだ……。

 俺はそれを一気に飲み干「えっふ、えっふ!」むせた。飲み干して、そこらに放ろうとする……。ふと、自然環境のことを考え、自販機の横にあるゴミ箱に入れた。

 少し遠くから電車の音が聞こえる。駅はまだ少し遠かった。


「……一本遅れたか」


 まぁ、たまにはいいだろう。

 俺は思わないが、多分これも青春なのだ。そう考えると、なんだか幸せな気持ちがしてきて。


「──よし」


 明日の朝は、心地よく朝ごはんが食べられそうだった。





















 1時間後、異世界召喚に巻き込まれて外れスキルで最強になってヤリまくりハーレム作った。



小説初投稿だから初投稿です。作者の作品見ても何作か出てくるだけなのでやっぱり初投稿です。

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