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グレイド、マーレン侯爵と対峙する

マーレン侯爵は翌日に会う事ができた。

「殿下のお呼びとは、私どもに覚えがないのですが。」

グレイドも侯爵もお互いの腹の探り合いである。

「覚えはあると思うぞ。次男の事だ。」

グレイドの執務室に来た侯爵は勧められて茶のカップを手に取る。


「美味いですな。」

茶を一口飲むとグレイドに言った。

「うちの執務官です。茶だけは彼に煮任せています。」

グレイドもカップを持つと香りを楽しんだ。


「サンレオ公爵令嬢のエスコートの事でしょうか。」

カップを置くと侯爵が話をきりだした。

「そうだ。

私の責務を案じてご息子がエスコートを申し出てくれたようだが、フランチェスカは私の婚約者だ。

私の方で準備は進んでいる。もちろん、エスコートも私がする。」

侯爵もグレイドの意向を察したのであろう。

「いえ、殿下の対面に泥を塗るようなつもりではありません。」

「わかってます。

私が忙しいので申し出てくれたのです。

だが、やっと調整ができてエスコートが出来るようになりました。」

グレイドは侯爵に圧力をかけることにしたのだ。

婚約者のエスコートもしない王太子と(さら)すような事を次男がしているぞ、と暗に言っている。

絶対に、絶対にフランチェスカの汚点になるような事にさせまい、とグレイドは意気込んでいる。

このままでは、王太子と仲の冷めた婚約者である。


サンレオ公爵は婚約に見切りをつけ、次の相手を探し始めたに違いないのだ。

だからこそ許可した。

高位貴族の次男は王配として望ましい。

間に合ってよかった、と心底思う。


「もちろん、侯爵が私の立場を重んじてくれるのは有難いと思っているよ。

かかった費用は礼金という形で渡させて欲しい。」

落ち着いている侯爵の様子を見て、侯爵の顔も(つぶ)さず、協力者という事で終わらせる事にした方がいいかと思う。

侯爵が反論するようなら、王太子の権力でいくつもりだったのだ。

「いえ、殿下のお気を(わずら)わせる程の物ではありません。」

どうやら、侯爵は了解をしてくれたらしい。

こうやって考えるとなかなかの人物であろう。

フランチェスカに目をつけた次男を、そのまま許可し、公爵家と繋がり持つ。

それは王太子を敵に回すかもしれない賭けをしたのだ。

しかも、エメレン王国を狙っていると思われることにもなる。

今もグレイドの圧力に屈することなく、飄々(ひょうひょう)とした感で座っている。

なるほど、これならサンレオ公爵もフランチェスカのエスコートを許可したのがわかる。

「侯爵は、確か内務大臣の補佐をされているとお聞きしてます。」

内務大臣はシシアトレ公爵、実際に内務を動かしているのはマーレン侯爵だろうな。

「次の外交会議に内務から侯爵に出てもらいたい。」

侯爵は使えるとふんだが、次男は許すまじ、とグレイドは考えをめぐらす。

マーレン侯爵の長男は、執務官として知っている。

アレも使える人物である。


「かしこまりました。

我が家の次男は、学校を卒業後、兄の補佐を身につける為にも、しばらく領地で経営を勉強させたいと思ってます。」

侯爵の言葉にしてやられた、と思うグレイド。

「なるほどな。」

これは面白い、手の内に入れる人物と評する。

父がこの侯爵を知らないはずがない、どこまで繋がっているかも確かねばなるまい。



侯爵が部屋を出て行った後、グレイドは口を手で押さえていた。

嬉しすぎて顔がゆるむ、まさにソレである。

フランチェスカとダンスする自分が頭の中で踊る。

デビュタントの白いドレス、今からでは時間的に厳しいが、なんとしても最高のレースで作らそう。

フランチェスカが自分に微笑むのだ、グレイドと呼んで。

ウッ、ポタと鼻血が床に落ちた。

グレイドは勝ち取ったエスコート権に興奮しているのと、偶像化しつつあるフランチェスカに酔っている。

皆にフランチェスカを見せびらかすのだ、嬉しくって仕方ない。

次はフランチェスカのドレスの手配に忙しい。


だか、現実は落ちてくる。

昨日は、公爵家に行く為に、棚上げした仕事と今日のイレギュラーな侯爵との会談で仕事は夜9時迄に終わらなかった。

フランチェスカに贈るカードと花の手配をし、仕事を続ける。

会いたい、と一言でいいのに、格好つけて長文にするも、会いたいが書けないグレイドであった。


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