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グレイド、エメレン王国の秘密を知る

翌日は朝から、エメレン国王との会談である。

ダルメニア国王妃、エメレン国王妃、サンレオ公爵夫人、フランチェスカの4人でお茶会が午後から行われる。

そちらも気になるが、グレイドにとってエメレン国王は、今後深いつながりになる相手だ。

ドサッ、机に大量の書類が置かれた。

「これは?」

グレイドが(いぶか)しげに聞くと、エメレン国王が気楽に答えた。

「我が国の重要ポスト達の経歴書と管理体制だ。

他にも指示書だとか、権利関係、歳入と歳出、税書類などだ。

土産(みやげ)だ。」

「国家機密でしょう!」

驚くしかないグレイドである。

「君が次期国王だ。」

いとも簡単に言うエメレン国王ミカエルである。


「我が国は議会制を導入している。国王が最高権力者だが、それ以外は其々が権力の固まる事のないよう、王の代替わりで不都合がないよう国政が動くようにしたつもりだ。」

エメレン王国は、政務において国王が全ての権力を持っている訳ではない。

ミカエルが一代で議会制を作ったのだ、他国と一線を違えている。

「我が国において、王の血族を絶やす事はできない。」

ミカエルが侍従や執務官達を部屋から下げて、グレイドと二人きりになった。

「盗聴は大丈夫か?」

「ここは王太子の執務室です。

そんな間抜けな事はさせません。」

よかろう、とミカエルが話を続ける。


「私はどうしても子孫が必要だったが、神は与えてはくれなかった。

妹のシレーヌにしても子供はフランチェスカ一人。

フランチェスカは年に2か月、我が国に滞在して教育を受けていた。」

そんな事は初耳だと、グレイドは考える。

サンレオ公爵はそれを秘密にしていたのだ、何故?

「我が国でもそれは内密にされている事だ。

そのこともあり、フランチェスカは隠すように育てられた。

エメレン王家にとって一番重要な事は政務ではない、神事である。」

エメレンもダルメニアも同じ宗教である。

教会は国の保護の元にあり、それぞれの国に宗教が管理されているはずだ。


「解りやすい言葉で言おう。

我が一族は神事により、先見(さきみ)の力がある。」

想像もしなかった言葉にグレイドは驚くばかりである。

「それは天候であったり、災害であったりする。

もちろん、頻繁に出来る事ではないが、王宮の神殿で血族のみが行える。

だから、我が国から王家が無くなることはない、どんな執政体制になろうとも。

私に子供が恵まれない事も、シレーヌが子供を一人産む事も、フランチェスカが子供を4人産む事も知っている。」

「フランチェスカが!?」

思わず立ち上がる程、驚いたグレイドだ。

たしかに、エメレン王国は大きな災害の時も難をのがれ、世界最古の国である。

「フランチェスカに神事は教えてある。

私は、我が国を継ぐフランチェスカの子供が成人になるまで在位に留まることはできないだろう。

その間の中継ぎとして、君が必要だ。」

フランチェスカがエメレン王国で受けたのは神事だったのか、それで内密だったのだなと理解する。

それにしても、中継ぎと無造作に言ってくれる。

「私はダルメニアの王となる身です。

ダルメニアにエメレンを吸収するかもしれませんよ?」

グレイドの脅しとも言える言葉にミカエルは笑うだけだ。

「君はフランチェスカが選んだ男だ。

それなら、それでいい。」

そんな事にはならないだろうと、わかってお互い会話する。


「私はフランチェスカが喜ぶなら、どんな労力も(いと)わないでしょう。」

グレイドが首を振りながら、ミカエルに答える。

フランチェスカが悪女であろうが、聖女であろうが、きっと自分はフランチェスカの為に何でもするのだ。

先見をする、ちょっと人間離れしているだけじゃないか。

魔女に変身しても受け入れるだろう自分がいる事はわかっている。


「昨日のデビュタントで君の本気を知ったよ。

だから、全て話そうと思った。」

フランチェスカにひざまついた件の事だろう、思い出すと恥ずかしくなってくる。

「君が何をしてもいい、

ただ、君の子供の一人が我が国を継ぐ事になる。

このまま君がフランチェスカと結婚したならな。」

ははは、と笑いながらミカエルが言う。

「ならな、ではありません。

絶対に私がフランチェスカと結婚して、フランチェスカが産むのは私の子供です!」

ミカエルは面白そうにグレイドを見ている。

「私が絶対に、私の子供の国も守ってみせます。」


「よく言った。

ではアレを覚えたまえ。」

そう言ってミカエルが指さしたのは、机に積まれた国家機密の書類の山だ。



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