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【メイン】超ショートショート小説たち

嵐の中で五分だけ。

作者: なみのり

悲しいことがあって、闇雲に走り回り疲れ果て、草たちが潰れて服に泥がつくのも忘れて寝転んでいたら、いつのまにか眠ってしまっていた。目覚まし時計のベルのように身を震わせるのを合図に目が覚める。公園の芝生から起き上がると、小さな嵐がやってきているのが分かった。雲はいじけたみたい黒くなり、風がざあざあと呻きながら草を揺さぶる。どんな悲しいことがあったのかは、絵の具が落ちるみたいに確かに跡を残したようだけど、よく思い出せない。私の灰色のカーディガンが風に盗られそうになる。だが、そうはさせない。お気に入りをやすやすとやるわけにはいかない。こんな天気の機嫌の悪くなった日には、家の中に閉じこもってベッドに潜り込みたい。そんなことを考えていると、嵐のほうが足を早めて追いかけてくる。逃さないつもりか。まあ、いいだろう。私がよくしてもらうように、少しは天気にかまってあげることにした。五分だけ。五分だけこの嵐の中にいてあげよう。ビー玉みたいな雨が降ってもここから動かない。傘なんか持っちゃいないけど、温かいお風呂に入ればいいだけの話だ。そのうち空がザアアア、と泣き出す。私は、大丈夫だよ、と言うように空を見上げる。目に雨が入り、私まで泣いているみたいになっていく。悲しい悲しい嵐の天気。彼(あるいは彼女)は道連れを求めて空を彷徨う。私はそのまま嵐の中。二人だけの孤独な五分が、初めて聴く外国の音楽みたいに流れていく。

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― 新着の感想 ―
[一言] 小学生の時傘を持ってない状態で、しかも急なゲリラ豪雨だったので大雨のなか走って帰ったのですが、その時の静けさや雨の重さ、下り坂を駆け下りる爽快感は異世界に飛んだような感覚でしたね。雨は嫌いで…
2018/05/10 22:18 退会済み
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[良い点] 感覚派、ですね。それを武器に、いわゆる物語、小説仕立てにチャレンジされたらいかがですか。あくまで僕の個人的意見ですが。 [一言] 文章、すごく個性的で誰も真似できない資質をお持ちだと思いま…
2018/05/10 20:36 退会済み
管理
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