護憲も改憲も経済の表面に現れた泡のようなもの
プレゼンの反応は上々といったところ。
日本の自動車はまだまだ世界に売れる。
世界が日本の自動車に求めるのは自動操縦といった新しい機能では無い。余計な複雑な機能を組み込めば、壊れやすくなり製品の信頼性を下げ寿命を縮める。
やはり丈夫で長持ち、安心して使える信頼性。過酷な環境でも使える頑健さ。
特にこれからうちの会社が売るものには、これが重要。
テクニカル
民間の車両の荷台に無反動砲や重機関銃、対空機関砲、空対地ロケットポッドなど重火器を装備した、火力支援車両。
小型のものは日本製のピックアップトラックがよく使われ、大型のものについてはアメリカ製が人気がある。
扮装地域では貴重かつ重要な戦闘支援車両であり、警察や軍も正式に採用している。
中国のメーカーでは初めからテクニカル用に使いやすくした車両を販売し、シェアを増やしている。
世界に人気のある日本の自動車もテクニカルには多く使われているが、最初からテクニカル用に設計した日本車はまだ少ない。
そこにうちの会社が新車を売る。
中東向けにテクニカル用に使いやすくした日本車。
扮装地域での部品の入手などのアフターサービスについては、まだこれからだが、すでに注文は来ている。
日本車はまだまだ世界で人気がある。
このテクニカルの売り上げ次第では、次の中東向けの装甲車両も開発を急がないといけない。
日本製の装甲車、戦車が大っぴらに世界に売れるようになれば、欲しがる国や軍隊、警察、武装勢力はいっぱいある。
日本の武器の輸出については、これまでは法がネックではあったが、今の政権に変わってから大きく変化した。
日本とオーストラリアでの新型潜水艦の開発が現実に決まろうとしている。
大手メーカーが『死の商人』のレッテルを貼られることを恐れて足踏みしている今、うちのようなハンパな規模の会社には好機だ。
全ては経済の流れの中に。
特に日本の経済は消費を求める。
戦後の復興を支えたのも朝鮮戦争特需であり、高度経済成長の土台は米ソの冷戦。
戦争はありとあらゆる資源を消費する。そして経済は常に消費を求める。
その消費が無い現代、日本は貧困に直面している。
だからその順番が今回は日本に回ってきた、というだけのことだ。
日本と北朝鮮の軍事的緊張が高まれば高まるほどに、アメリカ、中国、韓国、ロシアは輸出で潤う。
日本では弾道ミサイル防衛強化の一環として新型迎撃ミサイルシステム、陸上配備型イージス(イージス・アショア)の導入をする予定。
これで日本の防衛費は過去最大になるだろう。アメリカは今後も対ミサイルと名が着けば日本にいろいろと売れる。
それだけの経済効果がある。
日本もまた北朝鮮がミサイル開発に力を入れるようになってから、韓国、中国に電子部品の輸出が増えている。
日本と北朝鮮の睨み合う冷戦ともなれば、周辺国の貿易も盛んとなることだろう。
金の流れが先にあって、護憲も改憲もその流れを整えるために出てきたものでしかない。
日本が武器を輸出入するために。
憲法が変わって法律が変われば話は早い。
憲法が変わらなくても解釈でどうにでもなる。
どちらになったところで経済の流れを止められはしない。
かつて祖先が第二次世界大戦に参加したのも同じようなことではないだろうか。
後の時代に、負けの見える戦争に飛び込んだご先祖をバカだと言う者もいるが、そいつらの方こそ経済の流れの見えない愚か者だろう。
戦争に勝つか負けるかなどは問題では無い。
オリンピックと同じ、参加することに意義がある。
経済が消費を求める以上、大量消費の戦争を経済が招き寄せる。
なので、勝ち負けをハッキリつけずに長々と戦争してもらう方がいい。
今の世界情勢ではすぐに戦争とはならないだろうが、日本と北朝鮮の冷戦という形が続けばいい。
次のオリンピックが自爆テロで荒らされることでもあれば、緊張は一気に高まることだろう。
巨大になった経済というシステムの中、
拝金風土の中で生きる我々に経済の流れに逆らえる者などいない。
個人で平和を叫んだところで、大きな川の流れに浮かび揉まれる木の葉のようなもの。
本当に平和を愛し、戦争に反対するというのなら、そんな人達が多ければ。
経済を否定し金を1円も使わない、原始的な生活に戻る人達が多ければ話は違うのかもしれない。
だが、拝金風土に飼い慣らされた人達は弱体化し家畜化し、もはや自給自足ができないほどに衰えた。
今さら電気も水道もインターネットも無い暮らしには戻れない。
好きも嫌いも秩序も平和も一切合切関係無く、経済は戦争という名の大量消費を招き寄せる。
ならばその流れの中で、いかに生き抜くか、いかに稼ぐか。
まずは己が生き抜かなければ話にならない。
まずは自分の給料アップのためにも、中東にうちのテクニカル用トラックを売りつけてこないと。
家族を食わせていくには、まだまだ俺が働かないと。