最終話 「最後の闘い!」
5年ぶりの更新にして最終話です!
ここまで読んでいただき、光栄です!
駅から電車に揺られること二時間と少し、目的地である『オトナシ』の最寄り駅に三人は到着したのであった。大荷物を抱えていたから、少し人の目が気になったが、思いのほか順調な旅だった。
「あぶねぇ、終電ギリギリじゃねぇか!」
と祐介は言った。最寄り駅に着いたのは十二時過ぎであった。
「まあ、どうせテントで野宿するから、終電とか関係ないんだけどね」
と和樹が言った。
「ねぇ、あの丘、ちょっと不気味じゃない?」
晴美は、目の前にそびえ立つ巨大な丘を指さして言った。辺りは暗くてハッキリとは見えないが、どうやら彼女が指さした丘が、例の有名な心霊スポット『オトナシ』であるようだった。
「ひぇー、山を越えないといけないって思ってたけど。案外、丘みたいな場所なんだな」
祐介は余裕そうな表情を浮かべていた。
「でも、いるか分からないだろ。晴美の親父さんにブツを売りつけた犯人なんて、たまたまこの近くを通っただけかも知れないし、アジトでもありゃ、別なんだがな」
と、和樹が言ったその時だった。
「……あるんだな、それが」
「……ひっひっひ、俺たちに何か用かい? ってなぁ」
「……悪巧みなら、俺たちに敵うヤツはいねぇぜぇ」
とこからともなく悪そうな声が聞こえた。一行が声の方向を見ると、そこにはイカニモ悪そうな顔をした男たち三人が、悪そうな笑みを浮かべて立っていたのだった。
「何なんだ! お前たちは!」
祐介は警戒していた。
それは何故か。リーダー各の男の顔には大きな傷があったし、補佐役のような男には、顔中に「悪」という文字のタトゥーが掘ってあったし、そのまた補佐役のような男に至っては、左手首の先が無く、フックのような鍵爪が埋め込まれていたのだ!
このイカニモ悪そうな男たちの、リーダーと思われる男が、祐介に向かってこう言った。
「そうよ、俺たちがこのシマで暴れまくっている悪党だぁ。アジトを作って、シャブで大儲けしている大悪党よぉ。本当ならもっと話数を挟んでから登場する予定だったんだかな。どうやら作者がこの作品をエタらせないために、早めに完結させてしまおうという魂胆でよこした苦肉の策らしいなぁ。と、いうことで、最終回だ。お前たちには死んでもらおう!」
男は、胴体よりも大きなサーベルを祐介に向かって振り下ろしてきたのだ!
「させるかぁ!」
対抗したのは、和樹だった。和樹は、自慢の模造刀で悪党のサーベルを弾き返すと、その脳天にむかって、思いっきり模造刀を振り下ろしたのだ!
バコーン! という大きな音を立てて、男の頭の上には、星とヒヨコがクルクルと円を描くように回り始めたのだ! そのあまりの快進撃! 痛快なまでのテンポに祐介と晴美は見とれていた。
「最終回だろうと、勝つのはお前たちじゃない! 俺たち主人公サイドだぜ!」
祐介は和樹から模造刀を受け取ると、次々と男たちを倒したのだった。
そして静寂が訪れた。
「俺たち、勝ったんだな」
と和樹が言った。
「ああ、あまりにもテンポが良すぎたがな。まあ、ちょうどいいくらいじゃないのか」
と、祐介が言った。
「みんな、ありがとう。これでスッキリしたよ」
と、晴美が言った。
そして一行はキャンプという名の野宿をして翌朝、始発でそれぞれの家へと帰るのであった。後日、晴美の父親は構成施設にぶち込まれた。
その翌日。
祐介、和樹、晴美の三人は、春休みの思い出になったと喜んだ。そうして無事エタることなく作品が完結したことに対して、みんなで祝杯を挙げたのだった。
「完結おめとう!」
祐介が叫び、クラッカーを打ち上げた。
「少々強引なやり口だったがな、エタるよりはマシだぜ! 五年ぶりの更新にふさわしい最後だったんじゃないのか」
と、和樹は模造刀を磨きながら言った。
「みんな本当にありがとう、私、ぜんぜんヒロインの役をこなせてなかったけど、とにかく完結して嬉しいわ」
と晴美が言った。
「それじゃあ、乾杯しますか。」
祐介がグラスを持ち上げる。
「乾杯!」
こうして三人の旅に無事、終止符が打たれたのであった。