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プロローグ

 鼓膜を裂くような音で窓ガラスが割れた。破片は母親の額を裂き血が噴出した。

「やめてよーっ!!もうやめてお父さん!分かったから」


 娘の叫び声も気に留めず、父親はただ母の髪をつかみ壁に打ち付けた。

 何度も、何度も。

 白い壁は見る見る赤い色に変色した。


「お母さん……お母さん」

 少女はしゃくりあげ、母の体を揺さぶった。

 母はかろうじて意識があった。


「……ごめん…ね」

 母の顔面は涙でグシャグシャになっていた。


「おーい!これで分かったよな?速くマリファナでもハーブでも持って来いよ!」


「何言っているのよ!そんなのただの麻薬でしょ!父さん警察に捕まるよ!」

「……ああ、そうか、じゃあ、お前には…お仕置きするしかないかな?」


 父親は台所へ行くと、さっと包丁を取り出した。


「……服を脱げ」

「えっ?」

「…いいから脱げや!母さんどうなっても良いのかァ?どうしようかな?この包丁でぇ先ず母ちゃんのお腹ブッさして、内臓をどっかに売りとはしゃ、麻薬の1つや2つぐらい買えるかなあ?」

「……やめて」


「おおっ?誰が俺に逆らっていいと許可をした?」

「……祐介…くん?」


 その時だった。


「……俺だ」

 見ると父親の後ろに少年が立っていた。


「お前、頭イカれてんじゃねぇの?黙って聞いてりゃ、とんでもねぇ発言しやがって、それでも親か?」


「…………お前誰だ?」

「俺はな……本当の人間だよ」


「んな事は、分かってんだ」

「お前こそ、てめぇの娘が何故、てめぇを警察に突き出さなかったと思う?」

「俺が怖いからだろ?」


「優しい父さんが、帰ってきてくれると信じてたからだ。だが俺は違う、俺は暴力を振るう父親は全く怖くねぇ、麻薬が恐ろしいとも思わねぇ。容赦しないでてめぇを務所へぶち込んでやる」


「もう一度聞く、誰だ!」


「別に、晴美ちゃんとは深い関係持ってねぇよ。ただの、友だちさ」


 そう言って、父親の持つ包丁を蹴飛ばした。父親は

「くそ野郎!!」

 と怒鳴り少年に拳を振り上げる。

 少年はそれをかわした。


 が、振り上げた拳とは逆の足で攻撃を仕掛けてきた事に、少年は気付かなかった。

 回し蹴りが肋骨に入り、少年は倒れこんだ。


「こいつ、マジで強えぇ」



 次の瞬間、斜め上から振り上げられた包丁によって、少年の右目は裂かれた。


「うわぁあ!!」

 少年の眼球は赤い色に染まり傷口がどんな状態かも分からなかった。

「お、俺は…ゼッタイにてめぇをゆるさねぇ」

「結構だ!!」


「待って!!」

 後ろから悲鳴とも言うような声が聞こえた。

 少女は、ぶるぶると震える腕を差し伸べている。その先には白い粉末が握ってあった。


「覚せい剤よ……ほしいって、言ってたでしょ?父さん、私、頑張ったの…」

 足はガタガタ震え、少女の瞳孔は開きっぱなしになった。


「…晴美、お前」


「なんだァ、あるんじゃん、速く言えよ」


「祐くん、、いこ?」

「ああ、わりぃな」


 そうして、二人は逃げるように夜の闇へ消えていったのである。








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