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1ゲス
○
――バカヤロー!
階段を駆け上がってゆく。
1段飛ばしで踏み込むたびに、体が重くなってゆく。膝から力が抜けてゆく。
それでも階段を走る。踏み外して脛を打っても、手摺りを掴んで這い上がる。
目の奥が暗くなり、脇腹が鋭く痛み、手首と足首を捻り、体中の骨が軋んだ。
呼吸さえ出来なくなって、漸く辿り着いた最上階の半開きの戸を押すと、陽の光が視界を真っ白に焼き尽くした。
その中に恭子の後ろ髪とスカートを見付けた。ブラウスの輪郭が見え始め、その背中に緑の格子柄が描かれていく。
恭子はフェンスの向こう側に居た。
俺は喉を絞り上げて叫んだ――。
「大好きだ!」