表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/21

第8話 ドドン

迷宮が出てこない。

第10話以降なのは間違いない。

「暗くなる前に、戻ろうか」

「はいっ、帰りましょう」

 

 笑顔で返事をするフィーリア。

 これだけで、終わってしまったが笑顔を見れたなら、十分か。



 日が傾いて来たので、フィーリアの家まで歩いて戻る最中、村人の青年5人組が立ってきた。


「俺のフィーリアに手を出すとはいい度胸だな」


 リーダーらしき青年が突如、絡んできた。

 フィーリアにしたっては、露骨に嫌な顔している。

 この前、話をしていたドドンと言う幼なじみがこの中にいるのか。


 こういう輩は相手にしないのが一番だ。

 相手にすると、相手の思うつぼになるだけだし、さっさと無視して先に進もう。


「フィーリア、早く帰ろう。そろそろ夕餉の時間だし、お腹が空きました」


 フィーリアの手を繋ぎ、この場を立ち去ろうとするが青年達が立ちふさがる。


「何のようでしょうか? 用件がなければ、どいて下さい」

「何のようだと。俺のフィーリアに手を出したエルフにお仕置きをする為に決まってるだろうが」


 人を見下すような威圧感のある視線で俺を見てくる。

 そして、他の4人はフィーリアに視線を向け、ニヤついた嫌らしい視線を向けている。

 なる程、こんなのが付きまとっていたら、誰も近寄らなくなる。


 こんな、村の真ん中でこんなをして注意を受けないなだろうか。

 辺りを見渡すと、此方を気にする素振りを見せるが誰も視線を合わせようしない。


 自分に厄介な事が起きないよう逃げてる。

 他の村人が助けにくる事はまず無いだろう。


 この傲慢は、誰も注意するものがいないから調子に乗ったのが原因か。

 調子に乗ったやつは更に、つけあがるから痛い目に合わないと治らない。

 

「おい、聞いてるのか。 劣等種のエルフが」


 このリーダーが傲慢なドドンか。

 他の連中も仕方なくでは無く、自らの意志で従っているみたいだし。

 最悪ボコ殴りしてもいいよね。


 フィーリアは、この威圧感から逃げる為か俺を盾にして隠れる。

 そんな風に隠れると、余計に威圧感が増えるぞ。


 村人5人組は後ろに隠れたフィーリアを見て、ますます苛立った殺気をこちらに向ける。

 ほら、嫉妬の殺気を向けてきたじゃないか。


「義之さんは、劣等種じゃない。 立派なエルフだよ」


 フィ、フィーリアさん。

 何、相手に合わせて口論してるの。

 相手にしないのが一番なのに。

 相手に合わせると、余計に・・・


「劣等種に決まってる。 エルフの耳は基本尖った耳だぜ、こいつの耳を見てみろ、丸い耳だ。 どうせ、他のエルフもこいつを追い出したに違いない。」

 

 こんなふうに余計に調子づいてしまったじゃないか。

 しかしこいつは、己の価値観が絶対だと思っていやがる。

 こういう輩は、己の価値観を押し付けるから余計厄介だ。


 耳の悪口を言われても、気にしない方向でいこう。

 もっとも、俺は人間だから耳の事を悪く言われても心にあまり響かない。


「フィーリアは、この劣等種に騙されるんだ。 俺がその劣等種から守ってやる。 だから早くこっちにくるんだ」

「絶対に嫌」


 フィーリアは、完全な拒絶反応をしてる。

 はぁ、穏やかな解決はもう絶望的に無理か。


 ボコ殴りをして実力が上と見せ付けて、黙らせるしかないか。

 ボコ殴りは全員じゃなくてリーダー1人だけで十分なはず。


 但し、圧勝が条件がつく。

 トップの存在が呆気なく倒されたなら、まず三下の相手は萎縮しちょっと脅せば、逃げゆくはず。


 団体を相手にする戦いかたは、まずリーダーを倒す。

 コレで怯んだ相手を威嚇したり、その隙に逃げる。

 

 相手さんは、頭に血が登ってこちらを睨みつけてる。


「よくも此処まで、フィーリアを誑かしたな。 覚悟は出来てるんだろうな」


 やっぱり、ただの嫉妬か。

 昨日の愚痴でも思ったが、ドドンは支配欲がかなり強いようだ。


 自分だけを見て欲しいが、相手にされない。

 フィーリアが、相手にしているやつを見て、嫉妬し威嚇してたら自分を見てもらえた。

 威嚇をしたら見て貰らう事を覚えたのだろう。


 例え、それが恐怖からくる支配でも良かったのかもしれない。

 周りを威嚇しとけば誰もフィーリアのそばに近寄らなくなる。

 そうすれば、自分の事しか考えらなくなる。


 ますます、嫌われようとそうする事しか出来ずにいる。

 そして、離れていって他の人に逃げられる、そして、威嚇また、離れてる。


 フィーリアが、抵抗を諦めるまで続いただろう。


 昨日の段階だったら、後少しで抵抗を諦めていただろう。

 昨日と違い、今日はかなり明るくなっている。

 あくまで、個人的な主観だが。

 

 フィーリアに、ここまで嫌われてるのは自分のせいとは認めないだろう。

 自分に悪くないと、フィーリアに付きまとう相手が悪いと。


 説教と説得してもいいが、ぶっちゃけ面倒くさい。

 時間もかかるし、説教もかなり骨が折れる。

 そもそも、俺はアイツの顔をぶん殴りたい。


 こんな、可愛いフィーリアを我がものにし、恐怖で怖がらせるなど、許せるはずがない。

 



「何とか、言ったらどうだ劣等種」

「言いたいこと、言ったか雑種」


 本当は無表情及び無感情で喋るべきだが、完全に頭の血を登らせる為に低いトーンで見下した表情で喋る。


 何故、そこで驚く。

 喧嘩上等で話すのに持ってこいの話し方じゃないか。

 何でこちらが逃げるとか思ったのか。

 残念だったな、こっちは戦闘準備完了だ。


「・・・何だと」

「何だ、聞こえなかったのか雑種。 ではもう一度言おう、喚くな雑種」


 おやぁ、おやぁ、おやぁ。

 雑種って言っただけで完全に頭の血が登って、そんなに嫌なのか。

 これだけで、口喧嘩は勝てそうなんですけど。


「かつて魔王を討伐した勇者と共にした人虎族の血を引く由緒正しい血統が雑種だと」

「ああ、お前の血筋は既に雑種と変わらん」


 勇者と魔王は大昔にいたのか。

 今回、魔王が復活したと言わないよね。

 嫌だよ、魔王討伐するとか。

 助けてー勇者様ー。

 


 おっと、いけない。

 喧嘩中に他の事を考えると負けてしまう。

 今は、喧嘩に集中しよう。


「由緒正しい純血種である俺は全てにおいて正しいに決まってる。雑種なわけがない」

「たがら、雑種なのだよ。いつお前が偉くなったのだ、何故、自分がしてる事が絶対何故分かる。純血種だからという理由だけその振る舞いをするなら、もう根絶やしにしたほうがいい」

「きさまぁ、この純血種を根絶やしにしたほうがいいだと。 許せん、この鉄の剣でぶった斬ってやる」


 突如、両手剣の鉄の剣を出して此方に斬りかかりにきた。

 斬りかかりにきたというのにあまり、怖くない。

 まだ爺ちゃんとの修行での方がまだ怖かった。

 あの時の修行の話は割愛する。


「劣等種のエルフの癖に、接近戦が苦手な奴なんかに負けるはずがないだろうがぁ」


 鉄の剣を降りかかってくるその間合いから一歩前へ進み、気を纏った右手の拳で顔面に叩きこむ。

 殴られたドドンは、そのまま向かいの家の壁にぶつかり壁を破壊して家の中に入っていった。



「んな、馬鹿な」

「まさか、ドドンが一撃で負けるなんて」

「このエルフ、まさかハイエルフなんじゃ」

「ひぃぃぃぃぃ」


 他の村人達もざわめき始めた。

 このまま、立っていても目立ってしまう。

 さっさとことを済ませよう。


「おい、まだやるか」 


 他のやつらはブンブンと首を横を振る。

 良かった、たまに仇を討とうと向かってくるやつもいるから良かった。

 もし、向かってきたらぶん殴ってたけど。

 

 ところで、壁ぶっ壊したけど俺が弁償するのかな。

 いや、俺は悪くない。

 絡んできたあいつら悪い。

 うんそうだ、きっとそうに決まってる。 


「おい、お前ら。 あの壁を直しとけよ、まさか直せないなんて言わないよなぁ」


 コクコクと縦に振る青年達。

 いやー、良かった、良かった。

 青年達が直してくれるみたいだし、これで心おきなくこの場所を離れる事が出来る。


 やっぱり、純粋にお願いをすれば聞いてくれる。

 

 決して、脅迫なんてことはない。

 これはお願いなので、脅迫なんて事はない。

 


「さて、家に帰ろう」


 声をかけてみるが返事がない。

 ちょっとやりすぎたかもしれん。

 傲慢なやつでも幼なじみをぶっ飛ばしたのだからその心境ははかりしれない。


 ふと、地面をみるとフィーリアの下には水溜まりが出来ていた。

 ふむ、これはもしかして・・・


 何か恐怖のことはあったのだろうか、口論してた時までは何も問題はなかったはず。

 その後は、激怒したドドンが鉄の剣で斬りかかってきたから、ぶん殴って吹っ飛ばした。

 原因は俺か。

 あやつをぶん殴って家の壁を破壊して吹っ飛ばしたもんだから恐怖があるやもしれない。


 そういえば、連れがハイエルフと言った瞬間に全員が強張った表情で悲鳴をあげたな。

 こいつらにとってハイエルフは恐怖の対象でしかないのか。

 それで、フィーリアも恐怖に陥ったとも考えられる。

 

 それは、どっちにしろ原因は俺か。

 フィーリアには、嫌われてしまった。

 がーん、ショックだ。

 あの可愛らしい笑顔が今夜見れないなんて、ショックしかない。


 それにしても、また新たな種族が出てきたよ。

 それは、また今夜にでも考えよう。 




 しかし、このままではマズイ。

 フィーリアがアレをしたなんて村中に広まってしまったら、もうずっと言われ続けるだろう。

 影で陰口を永遠と言われ続ける、フィーリアなんて想像もしたくない。

 そんなことになる前に、退散、退散っと。


 フィーリアの手を繋ぎ引っ張って歩き出す。

 手を払われることが無かったので、少し早足でフィーリアの家に向かう。

 家に着くまで両者は無言のまま歩いていった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ