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第7話 案内

 陽気な朝日の光で、目を覚ます。

 堅いベッドなので、前日の疲れがとれなかった。

 だが、フィーリアのおかげでベッドで寝れたのだから贅沢はいえない。

 野宿より遥かにマシだ。

 

 毎朝、日課の柔軟体操をして体をほぐす向けないで。

 柔軟体操が終わりに差し掛かると扉が急に開く。


「まぁ、義之さん、起きてましたか。 おはようございます。」


 起こしにきたようだ。

 扉をノックとかは習慣はないかもしれない。

 昨日のじいさんもしてないみたいだったし。


「朝餉の準備が出来ています。」

「分かりました、すぐに行きます」


 朝餉の準備も終わってるとか、かなり早起きをしたようだ。

 さて、準備してリビングへ向かうとしましょうか。

 

 ばあさんから朝餉の呼ばれて、リビングへ向かう。

 リビングに来るとすでに、3人とも待ってた。


「おはよう」

「おはようございます、義之さん」

「おはようじゃ」

 

 意外だった。

 じいさんに挨拶された。

 昨日と違ってしかめっ面の顔じゃない。

 むしろ、笑顔で向かい入れている。


 昨夜、一体何があった。

 ばあさんと部屋で会話をしてたのは知ってたが、何を話してたんだろう。

 一体何があった、あの部屋で。



 テーブルには、4人分のパンとチーズとサラダが置かれていた。

 昨夜と余り変わってない。

 お世話になってるから、贅沢はいえない。

 ありがたく頂こう。



「クルール村から近い町にはどうやって行けばいいですか?」


 朝餉を食べながら、町への行き方を聞く。

 此処では、恐らく情報は余りないだろう。

 調べるには、村ではなく町の方が色々あるだろうし。


 お世話になりっぱなしは居心地が悪い。

 この村では、もしかしたら余所者には排他的になるやもしれない。


 そうなって、養護して貰ったこの人達(特にフィーリア)に迫害があったら大変だ。

 そうなる前に、村を出て行った方がいい。


 フィーリアとの出会えたのは運がいい。

 出会えなければ、野宿をしなければならないし。

 きっと、まだ夢か何かと勘違いをしていたに違いない。 


 そしてフィーリアよ、何故そんな顔をする。

 まるで、人生が終わるような絶望を迎えるかのような顔だ。

 町の行き方を聞いただけじゃないか。


「まぁ、此処から近い町はマドリーの町が近いですね。 それに、この村をすぐに旅立った方がいいかもしれません」

「ふむ、確かにこの村はエルフ族は酷じゃな」


 やっぱり、余所者には厳しいのか。

 こればかりはしょうがない。

 村人達に信頼を得る為には、長い時間を必要だろうし、色々な情報が欲しいから、村に残るメリットは少ない。


 フィーリアとともに、この地で骨を沈めるのなら話は別だが。

 ・・・それも、あり・・・か。



「もう、行って・・・しまうの・・ですか。」


 フィーリアが、かなり落ち込んでる。

 目には、涙を浮かばせている。

 そんなに落ち込むな、クルール村に留まりたくなってしまうじゃないか。


「フィーリア、分かっておるじゃろ。 この村人達は、エルフ族を毛嫌いをしてる事を」

「まぁ、フィーリアさん。 これは義之さんの為でもありますよ」

「・・・ラキの木を案内すると、約束したんですよ」


 あー、これは不味い。

 フィーリアが泣いてしまう。

 泣いてる顔は良くない。

 笑顔こそ、一番似合う顔だ。


 つーか、この村にエルフは何をしたんだよ。

 全く困ったエルフがいたもんだ。



「勿論、ラキの木は案内して貰うよ。 昨日約束したしね、出発はその後か明日だよ」

「はいっ、ちゃんと案内しますね」



 おうおう、そんなに笑顔になってこっちも嬉しくなるじゃないか。



「まぁ、でしたら今夜も此処に泊まって明日、出発されてはどうでしょう」

「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」


 その後も何事もなかったように楽しい朝餉を頂いた。




「所でフィーリアさん。 そろそろ例のアレが、来たのではないですか」

「はわぁ~」



 朝餉が終わり、リビングで寛いでいるとばあさんがとんでもない事を喋ったような気がする。


 フィーリアがかなり狼狽している。

 こっちをチラチラと見ている。

 まあ、チラ見は朝餉の時からずっとだが。


 それにしてもアレとは、やっぱりアレか。

 月のものだったりするアレなのか。

 そんな事は当たり前に話すのだろうか。


「な、ななな・・・」

「まぁ、私ですか。 私はじいさんがおりますから、フィーリアさんは義之さんにお願いしたらどうですか」

「ふむ、もしそうならアレが来てるならエルフなら安心じゃ」

「××××××××××」


 フィーリアがものすごい勢いで顔が真っ赤になってる。

 まるで、茹で蛸のように真っ赤だ。

 

 じいさん、本当に昨夜何があった。

 態度がガラリと変わりすぎだ。

 にやついても気持ち悪いぞ。

 本当にばあさんと昨夜、部屋で何をしたんだ。


 しかし、アレとは月のものとは違うものなのか。

 エルフなら安心とは一体なんだ。

 アレが分からないが、フィーリアが困ってるなら是非手伝いをしたい。


「困ってる事なら、手伝うが」

「まぁまぁまぁ、義之さんもこう言ってますしお願いしたらどうですか」


 体をプルプルしだしたフィーリア。

 まさか、体調を崩したのではないんじゃないか。

 それは不味い、すぐに休ませないと。

 心配したので、フィーリアの元へ駆け寄る。



「義之さんの馬鹿ぁぁぁ」


 完全に無警戒だったので、フィーリアからの右ストレートをお腹に直撃する。


 体がくの字のように曲がり、余りの痛さにうずくまる。

 うおおお、マジで痛い。


 フィーリアは、力がかなりあるみたいだ。

 それとも種族によるものなのかもしれないが。

 

 フィーリアは、そのまま部屋へ走り去ってしまった。



「あらあら、ごめんなさいね。 きっとアレが来て、恥ずかしがってるだけですから」

「そうじゃな、分かりやすくて助かるのじゃ」


 苦笑しながら、謝ってくるばあさん。

 あれは、照れてるだけなのか。


 分からん、アレとは一体何なんだ。

 簡単に見分けしやすいとか、俺にはサッパリ分からん。

 分からないの2人に聞いてみる。

 

「まぁまぁまぁ、フィーリアさんから聞いて下さいね」

「そうじゃな、これはお主2人の問題じゃ」


 本当にアレとは一体何なんだ。

 分からないまま、うずくまるしかなかった。





 ラキの木を案内して貰うとしてその後どうしよう。

村の案内なんてお願いしても、エルフと思われてるから散策してもしょうがない。


 無理に散策したところで、他の人虎族はまともに対応なんてしてもらえそうにないし、村の外に出ても村の中には入れない場合の方がはるかに高い。


 フィーリアにお願いして一緒に散策をお願いしたいとこだが、あれから部屋に篭っきりの状態。

 部屋の前で声をかけても断られるしまう。

 部屋から出てくる気配がないので、完全にお手上げ状態だ。


「あらあら、ゆっくりしててくださいね」

「そうさせてもらいます」


 ばあさんが家事の仕事に区切りがつき休憩に入る為椅子に座る。

 じいさんは今、外で薪割りをしている。

 最初、2人手伝いをしようとしたが丁重に断られた。

 なので、暇をもてあましている。



「ばあさん、コレを見て欲しいのだがいいか?」


 ポケットの中に入れていた、ビー玉を取り出し見せる。


「まぁ、見たことのない結晶ですねぇ」

「これをマドリーの町で売りたいのだが出来る所はある?」

「まぁ、これを売るのですか。 雑貨屋でも大丈夫ですが、オークションで売った方が10万コルくらいで売れると思いますね」


 何となく買ったビー玉だが、オークションで10万は凄いな。

 あっちでは、100円なのに。

 

 オークションで売りたいがお金が全くない。

 高値は魅力的だが、先ずは手元の資金の調達が先決だ。

 

 通貨の読み方はコルというのか、これは覚えておこう。

 後知っておきたいのは、Lv上げだな。

 

「ところで昨日フィーリアが襲われた青い熊、ブルーベアっていったかあれはよくここにいるの?」

「まぁ、あまりいないですね。 比較的倒しやすい魔物のチェッキンが多いです」


 やっぱり、魔物がいるのか。

 あの青い熊も魔物って認識していいだよな。

 倒しやすい魔物ってことは頻繁に倒してるってことだよな。

 魔物は倒すものなのかもしれない。


「狩ってはいけない魔物とかもいる?」

「まぁ、いませんね。 魔物は狩るべき存在ですし」


 倒してもいいようだ、それなら安全第一で狩りをしてみよう。 

 倒しやすいなら、明日マドリーの町へ行く途中に探してみよう。


 防具とか欲しいけど、金がない以上ヒットアンドウェイで戦うしかないがしょうがない。

 武器は、ペーパーナイフがあるからそれで攻撃でいいか。

 気をペーパーナイフに纏わらせれば威力は各段に違う。

 

 初級剣術のスキルを手に入れる事で威力を上げることも可能だと思うが、取っても差ほど変わらないと思うし。

 何とかなるでしょう。

 多分。


 これ以上はボロがでそうだから、さわたりない会話でもするか。

 あっ、ばあさん、お水お代わりよろしく。





 日が真上に差し掛かったとき、フィーリアが部屋から出てきた。

 ばあさんと話をしていたな昼近くまで喋ってるとは思わなかった。


 正確には会話ではない。

 マシンガントークのようにひたすら喋ってたばあさん。


 正直相手にしてて疲れたところに、フィーリアが来てくれて助かった。

 あれ、フィーリアのまだ機嫌が悪そうだな、あまり刺激はしない方がよさそうだ。

 

「義之さん、早くラキの木に案内いたしますよ」

「ちょ、そんなに急がなくても行きますって」


 俺の腕を掴みながら家を出る。

 ばあさんは、笑顔で手を振り見送ってる。



 前を行くフィーリアは機嫌が直ってるみたいだ。

 笑顔で尻尾を振りながら歩いている。

 時折こちらがちゃんと付いてきてるか確認してるのか、チラチラとこっちをみてる。


 そんなチラみをされたらうれしくなるじゃないか、ただ周りが気になければもう満足だったが。


 先ほどから敵意の視線がバンバンと複数と向いてくる。

 いつ戦闘があってもおかしくはない、そんな雰囲気を周りから感じる。


 確かに余所者はこの村には厳しいものがある。

 そんな状態で、フィーリアの仕草はある意味すごいと思う。




「義之さん、着きましたよ」


 村人の視線を気付かないのか、すいすいと進み目的地へとたどり着く。

 目の前には30メートルは超える大きな木が青々と生い茂っている。


 この辺りの空気がとても澄んでいて、神聖な場所のように、まるでご神木ような清清しい雰囲気を感じる。

 


「これは、すごいな」

「でしょう。 ここのラキの木だけこんなに大きいんです。 あとはこの木に異性と一緒に訪れると幸せになれるそうです。 たまに、旅人がその幸せを求めてここに訪れたりするんです」


 異性で訪れるってまるで、カップルのデートスポットじゃないか。

 そういうのも、ここにはあるのか・・・

 待てよ、異性と一緒に訪れるということはもしかして。


 フィーリアを見ると照れている。

 俺と来たかったっていうことだろうか。

 それとも、誰でも良くてこの場所に訪れてたかったのか。


 前者でも後者でもフィーリアと一緒に訪れてたのは嬉しい。

 前者なら、嬉しさ五倍は上がるけど。

 

「他に何かしたらいい事はあったりする」

「えっと、手を繋いで一緒にラキの木に触るともっと幸せになれるそうです」

「じゃあ、手を繋ごうか」

「えっ、いいのですか」


 ちょっと嬉しいそうに尻尾が動く。

 勿論いいですとも、是非フィーリアの手を繋ぎたい。


「せっかくですし、やりましょう」


 手を差し伸べて、手を繋ぐ。

 フィーリアの顔が赤くなり始めた。

 けっこう柔らくて気持ちがいい。


 手を繋いだ状態でラキの木の根元まで歩いて、手を繋いでいないほうで木を触る。

 触れると、不思議と幸福になれたような感覚を感じる。


 フィーリアと手を握れたので幸福なのは違いない。


 フィーリアは、願掛けしてるのか目を瞑りお願いのような事をしていた。

 願掛けもするといいのかもしれない。


 なら、フィーリアに友人が出来るように願っておこう。

 友人が1人でも出来れば、今の状況が好転するはず。

 今後、そんな人が現れるように。

 

 

 フィーリアとは明日になったらお別れだ。

 別れのは寂しいが、今この幸せを噛みしめようじゃないか。

 




 日が傾き始めるまで2人はラキの木に手を添えていた。

 

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