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第4話 悩み

 

 フィーリアとともにクルール村へ向かう。

 そんなに、離れていないらしい。


 今はもう手を繋いで歩いていない。

 手を繋いで、あのあと手を繋いでいるのに気が付いて、手を放した。

 勝手に繋いでごめんなさいと謝罪された。俺としてはまだ繋ぎたかった。

 なので、現在はスーパーの袋を持っているだけ。 


「クルール村にどんなところなの?」

「クルール村は、緑が多い村です。あと、時期は過ぎてますがラキの実が特産品で美味しいんです」


 ラキの実って何だろう。

 実って事は果物か何かだろうか。

 食べ物には違いないようだが、どんなものだろう。


「ラキの実があるところは見れる?」

「今は実がなっていない木でよければ」

「では、見せて貰ってもいいですか」

「はい、明日の朝一で案内します」


 笑顔で楽しそうに話すフィーリア。

 明日が待ちきれないのか尻尾がふりふりと動く。


「あっ、村に着いたらドドンには近づかないで下さい」

「ドドン?」

「ドドンは、私の幼なじみで傲慢な性格なので・・・」


 先ほどかなり違って落ち込んでおり、幼なじみについて説明をしてくれた。


 「人と話している最中に突然入って来て、その相手に横暴な振る舞いをしたり、1日中付きまとったりするんです。 止めてといつも言ってるのに、いつも言うことが決まって『俺がちゃんと守ってやるから安心しろ』と。 おかげで、友達はいませんし、皆と会話すらしないようになりました。 会話が、出来るのは家族だけで・・・」


 そのまま、喋らずふさぎ込んでしまった。

 地雷を踏んでしまったようだ。


 好きな子をからかうような子供じみたことをしてるな、そいつ。

 しかし、フィーリアはかなりストレスを溜め込んでいる。 

 心の奥に溜まった物を吐き出さないと後で大変なことになる。


「フィーリア」


 両手でフィーリアの両肩を置き、此方に意識を向けさせる。


「心の奥に溜め込んだ不安や嫌なことここでを吐き出したほうがいい」

「えっ、でも・・・」


 フィーリアは、遠慮がちに断ろうとする。


「俺は、クルール村の人ではない。村人には言えないことはあるだろう、明日で別れる人だ。遠慮はすることはない。いいたいことは、言ったほうがすっきりするぞ」

「いいの?」

「悩みを解決は出来ないが、聞く耳だけは持っている」


 フィーリアは日が沈みかけても、今まで言えなかった不満や不安などの溜め込んだ悩みを吐き出している。

 その殆どがドドン関連なのだが、ただ黙って聴いていた。


 ドドン、お前という奴は・・・

 こんな可愛いフィーリアをまるで、自分の私物のように扱い、さらに苛めるとは許せん。

 今度、機会が合ったら一発ぶん殴ろう。

 クルール村に着いたらその機会がありそうな、気がする。

 ただの、直感だけど。

 その後もフィーリアの悩みを打ち明けている。


 ・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・まだあるのか、聴いてるだけだけど、コレはちと辛い。

 後、最低1時間は続きそうだな。

 そんな予感がしてならないが、そんな事を考えながら、空を見上げ、夕暮れに、2つある月が輝いている。


 此処は、2つの月があるのか。

 此処は、異世界なのかも知れない。 

 そんな事を考えながら、黙ってフィーリアの聴いているのだった。

 


 日が完全に沈み、2つある月が光放っている。

 辺りは、暗闇でよく見えず辛うじて進む道が月の光で分かる。田舎の外灯の無い道みたいだ。


「すみません、すみません、すみません」

「いや、言いたい事を言った方がいいと言ったのは、俺の方だから気にするな。」

「はい・・・」


 フィーリアは頭を何度も下げて謝ってくる。

 長時間、話しこんだのが気になっているようだ。


「とてもいい顔に、なったな。胸の奥にあったものは出せたかな?」

「はい、義之さんのおかげです。ありがとうございます」


 先程と違って、吹っ切れた顔をしている。

 長時間悩みを聴いたかいがあったようだ。

 とても爽やかな笑顔だ。

 うむ、これだよ。この笑顔だよ。

 この笑顔が、みたかった。


「さて、遅くなったがクルール村に行こう。家族が心配してるはず」

「そうですね、すぐそこなので急ぎましょう」



 会話をしながら1時間半かけて歩いて、クルール村にたどり着く。

 会話は楽しかったが、決して1時間半はすぐそこじゃないと思う。


 とりあえず、疲れた。

 クルール村では休めると良いんだが、一波乱が待っている。

 そんな予感を秘めながら、クルール村に入るのだった。

 

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