第10話 直感
泣いているフィーリアを手で涙をすくいあげる。
「そんなに泣くことないと思うが」
「嬉しくなったら、勝手に涙が出て来たんです。 泣きたくて泣いてる訳じゃありません」
「なら、存分に泣いていいぞ。 今は俺しかいなし、泣いてるフィーリアを見ていたい」
「これ以上、泣いてる顔を義之さんに見せたくありません」
腕でゴシゴシと涙を拭き、少し赤くなった目で笑っている。
あぁ、涙目になってる姿をもう少し堪能したかった。
「もう一度聞きます、一緒に付いていっていいんですか?」
「ああ、いいよ」
「本当に、本当にいいんですか」
未だに信じられないのか再度、確認してきた。
この流れだと何度も確認して来そうな勢いだ。
「何だ断って欲しかったのか、じゃあ駄目だ連れてかない」
「駄目です、駄目です。 さっき一緒に付いていって言ってましたから、もう一緒に付いて行きます。 例え今から拒んでも無理にでも付いて行きますからね」
今度は確認をしなかった。
むしろ、付いて行く宣言までしてる。
「じゃあ、明日早いからもうお開きにして準備をしよう」
「そうですね、でも準備の前に義之さん、夕餉を頂きましょう」
まだ、夕餉を食べていないらしい。
月の位置は既に真上付近まで登っている。
「しっかりと食べてこい。 食べないと明日に差し支えるぞ」
「何言ってるんですか? 義之さんも一緒に夕餉を食べるんですよ」
どうやら夕餉は一緒に食べる事になってるらしい。
はて、ばあさんから聞いてないのか。
「夕餉は、いらないと断っているぞ」
「いらないなんて、聞いてないです」
あの不安定な状態だと、聞いてなくても仕方ない。
ばあさんよ、せめてこの部屋に越させるなら夕餉の事くらいは言っといて欲しかった。
「そうか、ばあさんの言い忘れているみたいだな。 では、改めて言わせて貰う。 夕餉と朝餉はいらない、日の出と共にこの村を出る」
「ちゃんと夕餉をしっかり食べないと明日に差し支えますよ」
「・・・」
さっきフィーリアに言った事をそっくりそのまま言われた。
夕餉を頂けるのは有り難い。
だが、ばあさんにいらないと言った手前、やっぱり夕餉貰うなんて心苦しい。
「俺は問題ないからフィーリアだけ夕餉を食べておいで」
「もうそんな事言って、ほら夕餉を一緒に食べますよ」
俺の手を繋ぎ、リビングへ向かう為歩き出す。
絶対に離さないとばかりか握られた手は力強く握ってる。
しかし、ここで今出るのはかなり不味い。
それだけは、何としてもそししなければ。
「ちょっと待って、お願いだから待って」
「いいですけど、お願いって何ですか? 言っときますけど、夕餉は食べない何てのは聞き入れませんからね」
夕餉に関する事は先に釘を差された。
握られた手がさらに力強く握ってくる。
ちょっと痛いがまぁ我慢しよう恐らく向こうから離してくれるはず。
「服を着てからでもいいか、流石にこの姿で夕餉を食べるのはちょっとね」
フィーリアがじっくりとこちらを見てくる。
そんなマジマジと見られると恥ずかしいじゃないか。
お願いの意味が分かったのか一気に顔が赤くなる。
「ななな、何でその格好をしてるのですか早く服を着て下さい」
そう、今は上半身裸の状態だ。
さっきまで背中を流して貰ってる最中だったし、しょうがないじゃないか。
「服を着ていいなら、手を離してくれないか?服が着れないから」
「手を握ったまま、服を着て下さい」
どうやって服を着ろと言うのだ。
知っていたら、教えて欲しい。
握ったままだと無理だ言うと、頬を膨らませて握る手の力が更に強くなる。
手を離す気はないと無言の圧力をかけてきた。
仕方ないので片手でシャツを着る。
時間をかけ片腕を通してない状態になる。
「・・・」
「・・・」
無言の訴えをしてもスルーされてしまった。
握られてない手を出すと、その手を握ってきて今まで握られた手は離してくれた。
離されたので、時間をかけて袖を通す。
「服を着ましたね、じゃあ夕餉にしましょう」
「待ってくれ、コレは下着だ。 上着も着させてくれ」
「駄目で~す、下着も立派な服です。 さぁ夕餉を食べましょう」
フィーリアに、引っ張れながら部屋を後にしリビングへ向かう。
リビングにはじいさんばあさんが座って待っていた。
「おや、コレは」
「あらあらあら、まぁまぁまぁ」
こちらを見て、2人とも思いっきりニヤついてる。
手を握った状態がニヤつく程のことか。
ニヤつく2人を見て何となく居心地が悪い。
「おじいちゃん、おばあちゃん。 早く夕餉にしましょう」
「おぉ、そうじゃな」
「まぁ、そうしましょう」
夕方の言った事を気にしてないみたいだ。
客人と家族をどっちを優先にするかなんて聞くまでもない。
ばあさんが立ち上がり台所へ向かう。
じいさんは相変わらずにニヤついてる。
「そろそろ手を離して欲しいのだが、夕餉はいらない何て言わないから」
「それは、駄目です。 もし食べれないなら私が義之さんに食べさせてあげます」
完全に手を離す気はないようだ。
困った、これじゃあ食べにくい、食べさせて貰うのは嬉しいがそれは、2人きりの時にして欲しい。
無駄な抵抗と思いながらも、手を引き離そうとして、力強く握り返してきた。
痛い、そんな力強く握らなくてもいいじゃないか。
ついでにそのジト目もしないで欲しい。
俺はそんな趣味はないぞ。
「あらあら、ずいぶんと仲が良くなりましたね。 さぁ、食べましょう」
ばあさんが更にニヤついた顔で料理運んできた。
反論しても無駄なような気がするので、大人しく席に座る。
フィーリアも前と同じ席には座らず、俺の手を握ったまま隣に座る。
席が違うんじゃないかと、指摘した所できっと移動はしないで不機嫌になりまた力強く握るに違いない。
「・・・フィーリア。 痛いんだけど」
「席が違うとかまだ手を握ってないといけないのとか考えてたような気がしたのでつい」
鋭い、何故分かった。
顔には出してない筈なのに、何故バレた。
「一応言っておきますけど、何となくそんな気がしただけですので余り気にしないで下さい」
何となくって、おいおい。
直感、若しくは読心術が使えるのかい。
「あらあら、フィーリアさんも直感があるんですね」
「おばあちゃん、誰かそういうのが使える人がいたんですか?」
ばあさんがフィーリアのしてる事をやってた人を知ってるらしい、フィーリアがちょっと気になってるみたいだ。
「おまえさんの母親じゃよ。 良く旦那さんの行動をズバズバと当てておったな。」
「あらあら、特に女関係は凄かったわね~」
「何度も修羅場があったからの~」
何それ、かなり怖いんだけど。
旦那さんよ、その直感をどう対応してたか教えてくれ。
「私のおかあさんが・・・」
フィーリアが母親と同じ直感を持っている事を知って、感傷に浸っている。
昨日から思っていたが、フィーリアの両親を見ていない。
出稼ぎに出ていて、祖父母の家に預けていると思っていたが、この雰囲気からすると既に亡くなってるのではないか。
しかし、これはあくまで俺の推測でしかない。
この推測が外れてる事に節に願おう。
「おじいちゃんおばあちゃん・・・」
「何だい」
「まぁ、何でしょう」
感傷から浸っていたフィーリアが祖父母に声をかけた。
色々と思う所があるだろう、大人しく聴いておこう。
「私、おかあさんみたいに義之さんの行動が分かるように頑張る」
「そんなの頑張らなくていい」
つい大声を上げて反応してしまった。
何故、俺の行動が分かるようになりたいんだ。
全く困ったもんだ。
本気で、考えるみたいだし何か方法はコレを回避する方法はないか。
例えばスキルに直感があれば、フィーリアの直感をスキルの直感と強運で回避するみたいな。
早速、スキル一覧で直感を探す。
あった、スキル取得に必要なポイントは7ポイントか。
ちょっと厳しいが取得する事に検討しよう。
先ほどのやりとりで、じいさんばあさんが笑っている、フィーリアも笑ってる。
しょうがない、この雰囲気を壊さない為に俺も笑っておこう。
「まぁ、義之さんちょっとよろしいですか」
「何でしょう」
夕餉が終わり全員でくつろいでいるとばあさんから声がかかった。
フィーリアから握られてる手に力が入ってくる。
夕餉を食べている最中もずっと握っている状態で、それについて諦めておりますとも。
「まぁ、お渡ししたい物があるので少しお待ちください」
「おおっ、そうじゃった。 わしも渡すものがあったわい」
ばあさんとじいさんは一言いって部屋の奥に入っていった。
一体何を渡すのだろうか、玉手箱的な物を渡したりしないよな。
「フィーリアは何を持ってくるのか分かる?」
「すみません、私も分かりません」
フィーリアも分からないのとなるとますます検討もつかない。
明日、フィーリアもこの村を出るからフィーリアに持ち物を渡すというのなら分かるが、何故に俺に渡すものがあるんのだろうか。
ちょっとした一波乱が起こりそうなのは気のせいだろうか。
気のせいなのだろう。
いや、気のせいに違いない。
そう思いたい、俺はそう信じてる。
「義之さんは、どんな物を持ってくると思いますか」
「そうだな、案外思い出の品じゃないか」
フィーリアとの思い出の品を出して話のネタにするのではないだろうか。
明日になったら、フィーリアも旅立つのだからギリギリまで話をしたいと思う。
「思い出の品ですか?」
「例えば、ばあさんが初めてフィーリアから貰った品とか」
「私、おばあちゃんに贈り物を上げた事ないですよ」
贈り物はした事はないと、なら子供の頃の品とかばあさんなら残してそうだ。
だとしたら、見せたいものっていうか。
後は、フィーリアの両親が家に残した物を渡すのだろうか。
だとしたら、それはフィーリアに渡すのだろうし、だったら何だろう。
「まぁ、お待たせ致しました」
ばあさんが直ぐに戻ってきた。
どうやら、予め渡す為に準備していたのだろう。
「まぁ、此方になります。 どうか受け取って下さい」
渡されたのは服とリュックサックだった。
2つともかなり年期が入った物だ。
とても大切にしていたものなのか、痛まないようしっかり手入れをしてる。
「まぁ、これらは旦那さんが若い時に旅で使用して物です」
「おとうさんが、これを使っていたのですか」
「ええ、これを使って旅をしてたんですよ。 服の方は目安ですが義之さんに合わせました」
フィーリアの父親が使っていたのかコレ。
大切な物を貰って良いのだろうか。
「コレを頂いていいのか、大切な物だろ」
「まぁ、使って頂いた方が旦那さんもきっと喜んでくれます」
「そうか、なら大切に使わせて貰います」
服に関しては少し懸念をしていた所だから助かった。
個人的に余り目立たくない。
着ていた服が珍しいっぽいから間違いなく目立つ。
なら、周りと同じ服なら周りと溶け込むはず。
同じ服を何日も着たくないってのもあるが。
「義之さん、良かったですね」
「ああ、良かったよ」
自分の事のように喜ぶフィーリア。
そんなに喜ぶとこっちまで嬉しくなるじゃないか。
「おぉ、すまんすまん待たせしまったな」
じいさんも平たい箱を手にして持ってきた。
玉手箱にしては平たい過ぎる箱だ。
精々、一着の服が入りそうな箱だ。
「おじいちゃんこの箱には、何が入ってるの」
「焦るでない、中を見てみれば分かる」
じいさんは、箱の中身を取り出すと一着の服が出て来た。
その服を見て全員が言葉を失う。
この服は、ただの服ではない。
女性用下着のビスチェだ。
ビスチェが珍しくないだと、いやいやこのビスチェは色がピンクでスケスケなのだ。
完全に後ろが透き通って見える。
とても素晴ら・・・、色気がかなりある下着だ。
余りの出来事に思わず、受け取ってしまう。
「このスケスケビスチェは、女性専用装備品で装備をすると魔法ダメージを減少させる効果があると言われておるのじゃ」
「まぁ、おじいさん。 コレを何処で手に入れたのですか」
「旦那さんからじゃ、もしフィーリアが好意のある異性が表れたら、渡して欲しいと渡されておったわい」
旦那さん、アナタって人は何て素晴らしい物を残しているのだ。
今でさえ、かなり我慢をしているのにあの下着を着てあんなポーズやこんなポーズやそんなポーズをフィーリアがしてると考えただけで理性が吹っ飛びそうだ。
いや、間違いなく理性が吹っ飛んで獣のようになってしまう。
いっそ、獣のようになってしまった方が楽なのではないか。
だが、獣になってしまったら今は良いが後でお尋ね者になったら、今後に支障が出てくるはず。
理性と本能が揺れ動いている間、隣から並々ならぬ威圧感を感じた。
その威圧感の正体を探る為、隣を見る。
フィーリアから威圧感を放たれている。
余りにも恐ろしい威圧感なので逃げ出したい。
義之は、フィーリアから逃げようとした。
しかし、フィーリアの手と握られてるので逃げれない。
義之は、必死に手を振り解こうとした。
しかし、フィーリアからさらに強く握られたので振り解く事が出来ない。
握られた手が、かなり痛い。
フィーリアは、威圧感を放ちながら睨み付けた。
義之は、動く事が出来ない。
「義之さん、何か言いたい事はありますか」
フィーリアから宣告のような物を受けた。
何故バレた。
顔に出してたのだろうか、それとも直感だろうか。
何か、何か回避する一言は何だろうか。
「これを着た姿が見てみたい」
しまった、つい本音を喋ってしまった。
フィーリアな顔が赤くなる。
そして、何も起こらない。
もしかして、コレが正解か。
「義之さんのばかぁーーー」
フィーリアに手を握られてるので逃げることが出来ず、確実にあの一撃がふりかかろうとしている。
朝の一撃より、強力な攻撃がくる気がするのは気のせいだろうか。
フィーリアから本日2回目の拳がお腹に叩き込まれる。
ぐおぉぉぉ、マジで痛い。
気のせいじゃなかった、強烈な一撃に若干涙が出そうだったじゃないか。
予想以上の痛さだったから、気を纏って強化しとけば良かったよ。
渾身の一撃は、余りにも痛くてうずくまる。
うずくまってる隙にスケスケビスチェを没収されてしまった。
「ほら、義之さん。 早く行きますよ」
フィーリアに引きづられながら、リビングを後にしフィーリアの部屋に向かったのだった。




