第1話 プロローグ
彼女とケンカした。
原因は分かってる、鍋の中に入れる豆腐が木綿か絹のケンカだ。
今日もまた些細なケンカをして、コンビニで木綿豆腐やミネラルウォーターなど買って公園のベンチで只今休憩中。
彼女は恋人ではなく、1つ年下の幼馴染。前のケンカは目玉焼きは塩か醤油でケンカをし、その前はペットを飼うなら犬か猫でケンカをした。
幼稚園のころから付き合いで昔からこんな事をしている。友人達は痴話げんかと思ってるらしく、いつもスルー状態。
公園のベンチで缶コーヒーを飲んで、夕焼けを満喫したら彼女の元へ行き仲直りをする。
そんなありふれた、日常生活を送っている。
「・・・そろそろ行くか」
夕日が差し掛かり、辺りが暗闇へと誘う。彼女の元へ行く為、ベンチから立ち上がり出口へ向かおうと歩き出す。
「 ×××い×××か×××て×××」
入り口付近までたどり着くと、公園の何処かで誰かの声が聞こえた。
はて・・・今の公園には、俺以外誰もいないはずなんだが一体誰だろう。声の人が気になりベンチまで戻って、辺りを見渡すがやはり誰もいない。 気のせいかと思い、歩こうとした時。
「 ××がい××か××けて×××」
空耳じゃないらしいでも一体どこから聞こえるんだろう。もう一度辺りを見渡すと、滑り台が光を放っている。滑り台に後光が光ってると言ってもいいくらいの眩しく光。
「××れか××か×××て×××」
どうやら、光る滑り台から声が聞こえるみたいだ。子供の頃じいさんがよく話してた神隠しの話に似ている。
一昔、この地域には森で奥深くに妖精が住んでおり妖精の悪戯で、湖を輝かせ人を誘い込んだ人を神隠し起こしている話や、光輝く場所は巨大な雛が現れて襲い掛かってきて逃げ延びた話とかもある。
そんな御伽噺のような話がこの地域には数多くある。
「お××がい××か××けて××」
光る滑り台がさらに輝きだすと、声が先ほどより良く聞こえるが、まだ何を言っているか分からないが、必死さは伝わってくる。
何を伝えたいのか、聞き逃さないように光輝く滑り台を凝視する。
「誰か、助けて」
助けを求める声だった。
その声を聞いてすぐに、俺は光る滑り台へ走り出して、光輝く滑り台に触れる。
触れた瞬間、辺り一面に光が包み込む。あまりにも眩しくて目を瞑り意識が遠くなっていくのを感じる。
辺り一面に光っていた光が徐々に戻っていき、滑り台からは光輝いてはなかった。
夕日が誰もいない公園を照らしている。ごくありふれた光景がそこにあった。