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I Catch you   作者: 実果子
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13/18

暗雲垂れこめる

 大和の猛攻が納まったかのようだったけれど・・・

 美野里の身辺には不穏な影が?

 

 10月に入ってから、週末に、久しぶりに陸と会えた。その日は、珍しく一日オフが取れたと、彼も喜んでいた。朝から待ち合わせて、買い物をし、陸の部屋に連れて行ってくれて、午後はゆっくり過ごした。私はとても楽しかった。夜、二人で夕食を食べ、私が帰ろうとすると、腕を掴まれて、抱き寄せられた。そして、彼はキスをくれた。唇に。付き合って2か月、初めてのキスだった。普通に考えたら、2か月でのキスは、一般的は、遅いのだろうか。でも、私は家に招かれたのも初めてだったし、別にタイミングが遅くなっても、気にしないし、彼の場合、仕方ないと思う。二人だけの空間というのが、あまりなかったから。その日は、私も彼と離れがたかったけれど、我慢した。キスをくれただけで、十分幸せだ。

が、私は、その後またも試練に見舞われることになった。


 次の週に出た週刊誌に、陸と私の記事が載ってしまったのだ。私は一般人だから、名前こそ出なかったけれど、「紺野陸に恋人発覚」という見出しで、陸の部屋に行った日に、写真を撮られていて、白黒の写真に、目隠しをされて、載っていた。私は「会社員・Mさん」ということだった。私は、愕然とした。記事を読む手の震えが止まらなかった。騒がれたくなかったし、そっとしておいてほしいとも思うけれど、それは、陸と付き合うという時点で、不可能なことだったのだろう。私もわかっていたはずなのに・・・いざこうして明るみになってしまうと、これから先が、凄く恐い。芸能人と、一般人の恋は、普通にあることだろう。芸能人同士の方が、騒がれることが多い。けれど、陸は人気俳優。恋人がいるというだけで、話題になってしまう。

私は、これから迫りくることに、耐える覚悟をしなければならなかった。



 

 マネージャーは、陸に、私との接触を禁じた。陸も、マネージャーが恐かったのか、それから1カ月、連絡をくれなかった。きっと、事務所とかに止められているのだろうと、私も思っていたけれど、陸は律義すぎる。隠れて連絡くれればいいのに・・・。心が離れるとは思わないけれど、やっぱり淋しい。こんな時、真面目な陸の性格を恨めしく思う。

陸は、もしも何らかの形で事務所側に、連絡していることがバレたら色々やっかいかもしれないと、思ったのだった。私にも迷惑がかかるかもしれないし、ここで終わりたくないと思った末のことだった。今は我慢しても、これからも一緒にいたいと思っていてくれたことが、私は嬉しい。

この時点では、何も知らないけれど。



 週刊誌がでてから、私の周りは落ち着かなかった。どこで調べたのか、会社の前に記者と思しき人達が何人も待ち構えているのだ。それは、朝も夜も変わりなかった。私は、囲まれてしまい、そこから抜け出すのが大変だった。仕方ないから、裏口から出入りしようとすると、そこにも何人か記者が取り巻く始末。走ってビルに入るしかなかった。以前とは、全く変わってしまった。 

本当に恐くて仕方ない。

近隣の人や、ビルで働く人達皆に迷惑をかけてしまった。申し訳なさでいっぱいだ。上司にも、咎められた。

           「記事、見たよ。これ、君だよね?本当なの?

            だから、こんなことになってるの?」

           「・・・はい。記事は嘘ではありません。事実です。」

           「はぁ・・・そう。こうなるの、わかってたよね?

            もうちょっと、用心できなかったかな・・・。」

           「本当に、申し訳ありません。今は・・・会っては

            おりませんので。」

           「そうなの?けどね、こんな騒ぎになっちゃ、

            もう遅いよね。」

           「はい・・・。すみません。」

           「もっとさ、良く考えて?」

           

 それから、私の会社の所属モデルにも知れ、彼女達の目も、厳しくなった。敵意丸出しだ。

           「あの子が、陸の彼女なんて、信じられないよね。」

           「うんうん。私、てっきり佐伯優花と付き合ってると

            思ってた!」

           「だよね。優花と仲良いって聞くもんね。」

           「その方がお似合いなのにさぁ。」

           「ムカつくよねー。」

 

 撮影の時、陰口が聞こえてくる。あからさまだ。撮影に同行するの、止めたい。頼んで見ようか・・・。行かなくて済むように・・・。

けれど、願いは聞き届けられず、陰口だったものが、私に面と向かって言ってくるようになった。

           「いい気になんないでよね!」

           「え?」

           「どうやって陸に近付いたのよ。」

           「それは・・・。」

           「あんた程度が・・・身の程を知りなさいよ!」

 言葉が痛い。心に突き刺さる。そうだ。確かに、彼女の言っていることは、間違っていないかもしれない。私ごときが・・・陸と付き合うなんて、あり得ないことだったのだ。自分よ、身の程を知りなさい・・・。これは、近付いてはいけない世界に近付いた私への、罰なのだ。

自分を表に出せなかった頃に戻ってしまいそうだ。いや、そもそもそこから変わってはいなかったのかもしれない。陸なしでは、明るく、はっきりとした自分ではいられない。そう、改めてわかった。

凄く会いたかった。私から連絡しようとしても、拒否されている。どうしようもない。足がふらついて、歩くのもやっとだ。



その夜、仕事が終わってから、どうしても莉奈に話したくて、夕食を一緒に食べた。

          「わかってたことやんね?」

          「うん・・・。そうなんやけど・・・いざこうなってみると、

           心が追いつかないというか・・・」

          「覚悟の上やったんやろ?人気俳優と付き合ってたら、いつか

           バレて、多少なりとも騒がれるって、想像しなかったん?」

          「ううん。わかっとった。けど、こうなるって、

           現実味がなくて・・・

           会社にまで来られると、困るんよね。私は、そっとしてほしい

           のに・・・」

          「そうはいかんよ。マスコミは侮れんしね。でもさ、

           大人しくしとれば、マスコミも静かになるんちゃう?」

          「うん・・・。会社、辞めようかな・・・」

          「え!?何でなん?辞める必要はないんちゃう?」

          「でも・・・迷惑かけてもたもん・・・騒ぎがもっと

           大きくなる前に・・・」

          「美野里・・・辞めてどうするん?また職探すんか?」

          「うん。そうしようと思う。」

          「うちは、辞めることない思うよ。」

          「でもさ・・・いずらいんやわ・・・」




 翌日、私は、考えた末、辞職願を出した。会社に、これ以上迷惑を掛けられないからだ。ごめんね、莉奈。せっかく辞めなくていいって言ってくれたのに・・・。けれど、上司は、穏便に計らってくれた。

           「何もさ、辞めることはないでしょ?」

           「いえ、でも、結構な騒動になってしまい

            ましたので・・・。」

           「うん。そうだね。恋愛ごとで会社に迷惑掛けるのは、

            良くないよね。

            でも、君は必要だし、少し休んだら?」

           「課長・・・。」

           「君、有給使ってなかったよね?今年分。」

           「あ・・・。しかし、ご迷惑を掛けたのに、有給では・・・」

           「いいの。君は今まで頑張ってくれてたし、これまでの

             ご褒美。」

           「いいのでしょうか・・・。」

           「うん。社長にも断ってるし、謝罪とお礼はしておいてね。」

           「・・・はい。ありがとうございます。」


 どれだけお礼を述べても、足りない気がした。その日は、一日仕事をして、帰りは、隠れるようにして会社を後にした。


                         つづく



 まぁ、週刊誌に載ることはあるかなと(^_^;)

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