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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

追いてかないで

作者: らゐをふ
掲載日:2026/06/04

 黄色くて、少しおっきい犬。私の「ミカ」。誰よりも大事な家族。




 私は既に一回死んだ。ミカを抱いたまま、避けられぬ巨大な隕石に潰された。

 痛みも無く一瞬で白くなった視界は、気がつくと焼け野原に変わった。

 手を見ると無傷で。ミカは居なくて。理解の追いつかないままひたすら泣いていた。そんな私を拾ってくれたのは、みずぼらしい格好のお爺さんだった。

「なぜそんなところで泣いている」

「…私にも分からない」

「金目の物を置いていくか逃げろ 直に俺以外にも剥ぎ取りがやってくる」

 小さい頭で少し考えた。冷静に周りを見ると人や動物の死体がちらほらとあった。視認した瞬間鼻に強烈な臭いを感じ咳をする。涙目でお爺さんを睨みつける。この人も剥ぎ取りしにやってきた一人で、襲わないのはそんな力が無いからだと感覚で理解した。

「ここはどこ?」

 隕石が直撃したとは思えない周囲。私の居場所も吹き飛ばされた筈だ。逃げる場所なんて無い。

「変な奴だな 俺でも襲えそうだ」

「……助けて」

 震えながら懇願した。居場所の無い私が助かる意味なんて無い。でも、本能が勝手に口を動かしていた。

 お爺さんは頭を掻き、ため息をつくと背中を向ける。

「暇つぶしの話し相手が欲しかったんだ 死んでもいいならついてこい」

 去っていくお爺さんを見失わない様に追いかけた。辺りが暗くなってきて見えなくなっても、お爺さんは強烈に臭いから追いつけてしまった。



 ゴミ溜めのような廃墟。そんな場所でお爺さんは床に座った。

「名前は?」

「…『サクナ』」

「咲くな?」

 その言われ方も聞き飽きた。子供の頃からずっとそういじめられていた。親もそのつもりで付けたんだきっと。

「お爺さんは?」

「忘れちまったなぁ名前なんて」

「ずるい」

「昔は……そう『つち』なんて呼ばれてたかもな」

「変な名前」

「お前と同じでな」

 お互いに少し笑う。『土』に『咲くな』。名前だけなら相性が良いのかもしれない。

「此処って何なの?」

「地球だ」

「そういうことじゃなくって」

 お爺さんはポケットからガラクタを取り出す。

「地球が……あれから360回回ってるな」

「……?」

「世界が一度終わった日 その日から大体一年くらいだな」

「それって…隕石?」

「そんなの知るかよ パッと白くなって 気づいたら生きてて周りが死んだ」

 転生じゃない。ぶつかってから一年経って目覚めた?私以外にはそれすら知られてない?推測の域を出ない問題にうなされる。

「…他の人は?」

「居ねえよ よくわかんねぇ何かなら居るけどな」

「……お爺さんじゃ無い剥ぎ取りってまさか」

「喋れる相手で助かったな」

 地球の生物じゃないかもしれなかった。ここまでが奇跡だと思い胸を撫で下ろす。

「お爺さん…つちさんはいつからここに?」

「覚えてねぇよ 昨日かもしれないしもっと前かも」

 つちの話している途中でお腹が鳴る。照れながら笑うと、つちは深刻な顔を返した。

「ここに食い物はねぇ 食えそうな物を食った奴は大概死んだ」

「……え?」

「もう時間が無いのかもな 昨日も人の皮を被ったデカい化け物の死体なら見たぜ 中から喰い破ったのかもな」

 恐ろしい話に体が震える。つち、昨日の記憶全然あるじゃん。

「どうせ何も無い世界だ 話して死ぬかもう死ぬか」

「……なんか疲れた」

「寝ればいいだろ 起きれ無いだろうけどな」

「それまで何か話して」

「ワガママなお嬢様だな」

 つちに近づいて、横に座る。空腹を感じながらゆっくりと、体を横にして目を瞑る。

 つちはその間に色んな話をしてくれた。ほぼ嘘だったかもしれない。でも、楽しかった。もう眠りに落ちそうな時、最後に聞こえたつちの声を、手を伸ばして掴もうとしたのに、私の記憶はここで終わった。






 また視界が白くなり、ゆっくりと目を開ける。

 世界は明るくて、花のいい香りに気持ちが少し安らぐ。

「……つち?」

「わん!」

「あれ……ミカだ…」

 黄色くておっきな犬。私の唯一の家族。

 ミカに抱きつこうとするも、両手がすり抜けてしまう。

「私…死んだのかな」

 泣きたいのに涙が出ない。出もしない涙を、ミカは舐めてくれた。

 また…会いたいな。あのお爺さん。意外といい人で。


___私以外の人が居ない世界で、つちは本当に『人』だったのかな

………つち?

遠くでないているのが聴こえた

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