公平な罰
翌日、マスコミの前で校長と教育委員会が謝罪会見を行った。校長は3カ月の減給処分となり、PTAは当面の間活動自粛を余儀なくされた。
竹上は会見の模様をオフィスのテレビで視ていた。村川も厳しい視線を送る。
「大人がこれですよ…聞く耳を持たない生徒がいてもおかしくありません」
「AIは誰にも忖度しない。地位も名誉も権力も、AIにはなんの関係もない。だからこそ、公平なんだ」
PTA事件以降、校内が荒れることを村川は懸念していた。実際に、一部の生徒には、授業中や全校朝会に野次を飛ばす者、備品や校内の掲示物を毀損する者もいた。
「俺も裏金欲しいなぁ」
「今週末はゴルフですかぁ」
これらの言動は検知され、発言した生徒は別室へと連行された。
[希望溢れる〇〇中学]
[美味しい給食、感謝の気持ち]
[隠しません、明るく健全、豊かな心]
これらの掲示物にも落書きがされていた。
[裏金溢れる〇〇中学PTA]
[美味しい裏金、ゴルフに外車]
[隠します、黒いお金と、疚しい心]
教員たちは、バケツとブラシでこれらの落書きの始末に追われた。
「あの様な発言や行動の原因は学校側にあるので、生徒にも保護者にも顔向け出来ません…」
校長は俯いたまま、村川にこぼした。「希望」と書かれた校長室の掛け軸が、村川の目に入った。
「落書きした生徒も、既に特定されています」
「どうか…穏便な対応を…」
校長はハンカチで汗を拭きながら、頭を下げた。
[〇年〇組・〇藤:掲示物損壊 −40点]
[▲年▲組・〇田:朝礼妨害 −35点]
端末に、AIが次々と記録していく。
「竹上さん、少し厳しくないでしょうか …PTAの事件がなければ、こういう事にはならなかったと思うので」
「事情があれば良いということにはならない。都合良く忖度を働かせるなら、AI監視は必要ない。悪いことをすれば、誰であろうと罰せられるという公平性が大切なんだ」
村川もそれは理解していた。同時に大人が自ら背信行為に手を染めた事が、一部の生徒に暴挙を働かせた原因でもあり、複雑な思いを抱いていた。
しかし、全体的には村川が当初懸念したほどの大荒れは発生しなかった。理由は明らかだった。
[公平かつ公正に罰せられたから]
生徒は監視システムに対して、不公平感を抱いていた。しかし、副校長やPTA会長に対してシステムが作動し、処分されたことが、制度の公平さに信頼を抱くきっかけとなった。
「だから、余程の理由がない限り、例外を作っては駄目なんだ」
竹上の言葉に、村川は頷くしかなかった。




