大人を舐めるな
「暴力だ!このババアに暴力振るわれたよ!」
他の生徒達が寄ってきた。中にはスマートフォンのカメラを向けている生徒もいる。
「暴力だと言うなら訴えなさい!」
村川が怒っているのを、竹上が抑え、代わりに向き合う。
「彼女の行動が暴力行為なら、上司の私が謝る。私の責任です」
「ほら見ろ!謝れよ!」
問題の生徒が勝ち誇った表情になり、さらに竹上と村川を詰める。
「謝ーれ!謝ーれ!」
生徒達が揃って声を上げ始めた。竹上は問題の生徒に近づいた。
「謝ろう。君の望み通りにする。しかし、君も私の言う通りにしてもらう。君は彼のお金を奪った。私の眼鏡にはカメラが装着してある。動かぬ証拠だ」
周りが静まり返る。問題の生徒の表情には怯えが見えた。
「君は既に罪を犯している。相応の罰を受ける必要がある。さあどうする。私達を謝らせてお金を返さないか、彼に謝って罪を認め、お金を返すか。好きな方を選びなさい」
先程声を上げていた生徒達は一人、また一人と消えていった。
「巻き込まれたらやべぇよ」
「内申に響くぞ…」
「お、おい…お前ら裏切るのかよ!」
「裏切者は君でしょ。彼はお金を奪われる理由なんかない。一番安全でなければいけない学校という場所で、こんな卑劣な目にあった。これが裏切りでないなら何なの!」
問題の生徒はお金を投げ、後ろに逃げようとした。しかし、振り向くと竹上がいた。
「君の行動はAIで想定していたよ。どの方向に逃げるかも含めてね」
竹上の眼鏡に取付けられたカメラは、映ったものを分析し、腕に取り付けられた時計型のモニターに、結果が反映される様になっていた。
「尤も、AIに頼らなくても、理性を欠いた君の行動くらいすぐに分かる」
竹上が珍しく笑顔を見せると、村川は両腰に手を添えた。
「大人を舐めないことね」




