永遠の監視
片岡は補導の後、度重なる恐喝と村川への殺人未遂により、逆送(検察官送致)となった。これを受け、学校で保護者会が開かれた。
「本校から重大な犯罪に手を染めた生徒が出たことは、誠に遺憾であります」
校長が保護者を前に、立ち上がって詫びている。
「PTAと副校長の横領といい、どうなってるんですか!」
保護者からは怒号が鳴り止まない。
「えー、ですが、出すべき膿は全て出します。今後本校は、AIが判断し、虐めは元より、問題行動を未然に防ぐシステムが導入されております!それは、生徒も教員も例外はありません!」
教務主任が校長の後に説明をしている。それを見ていた村川が竹上に話しかける。
「あんなにシステムに反対していたのに、むしろそれを安心材料としてPRしていますよ。どうなっているんですかね」
「指導側も認めざるを得なくなったということだろう、システムを。だがこれは第一歩に過ぎない」
「大切なのは、人間の本質ですね」
「ところで、そろそろ時間じゃないのか?」
竹上が腕時計を村川に見せる。
「いけない、遅れちゃう!ちょっと行ってきます!」
村川は駆け足で学校を出て行った。向かったのは空港だった。
「淳に良くして下さり、ありがとうございました」
淳の母親が頭を下げる。
「お姉さん、ありがとう!僕、会えて嬉しかった。転校ばかりで、友達も少なかったから」
淳の父親は転勤が多く、これまでも転校生活が続いていた。今度は北海道に行く。
「学校に行くのが毎日辛そうだったのに、村川さんにお会いしてからは、いつも淳は笑顔でした。何とお礼を言えば良いか」
母親は目に涙をためていた。
「淳君、辛いことがあっても、一人で抱えたり闘ったら駄目よ」
「うん!」
村川は淳と握手をした。
ターミナルに、淳が乗る飛行機のチェックイン開始のアナウンスが流れた。
搭乗口に入る二人を、村川は手を振り、笑顔で見送った。瞳から僅かに光るものが流れ落ちた。
「見送りは済んだか?」
村川が声をした方に振り向くと、竹上が居た。
「いつの間に!?」
「先程総理から連絡があった。件のシステムを全国の学校に展開することが、閣議で決まったそうだ」
「本当ですか。では、有効性が認められたということですね」
同時にそれは、全国の学校で大なり小なり手に負えない問題が頻発していることを表し、圧倒的な監視社会が広まる事をも意味していた。




