総理官邸
総理官邸
竹上と村川は、総理と教育相を訪ねた。問題行動の認知件数が二桁で低下し、校内の環境指数が改善を示しているという中間報告を行った。
大川は老眼鏡を外して、竹上に向き直った。
「数値上は、一先ず成功と言えるな」
「問題行動の発生抑止という意味では、改善しています」
「竹上君、それはどういう意味だね」
教育相が不思議そうに竹上を見ているのに気づき、村川が答える。
「内申点に影響する、というのが問題行動減少の理由です。倫理観が何処まで伴っているかは、まだ分かりません」
大川と教育相は頷いている
「システムは今のところ、現状の問題点に対する改善です。AIが思想に介入するのは、多感な時期を迎えている子供たちには危険です。倫理は教育で教えるべきだと、私達は考えています」
「竹上君も、同じ考えか?」
大川が竹上を見る。
「誰にも迷惑をかけていない人が馬鹿を見る。その不公平を正し、あるいは迷惑をかけている者から救うことが、今回の最大の目的であり、AIの永遠の課題でしょう」
「よく分かった。引き続き、頑張ってくれ」
大川は立ち上がり、竹上の肩を叩いた。
ー一ー一ー一ー一ー一ー一ー一ー一ーー
総理官邸を出ると、既に時計は20時を指していた。目の前には、ライトに照らされた国会議事堂が目に入る。
二人の横を、警護車に囲まれた総理専用車が走り抜けて行った。
「私はこれからオフィスに戻る。村川君は、もう上がってくれ。遅い時間までありがとう」
村川に伝え、竹上は赤坂方面へと歩いて行った。
「お腹空いたなぁ、何か食べて帰ろうかな。良いお店は…」
村川が鞄からスマートフォンを取り出す。
「しまった!家の鍵置いてきちゃったよ…」
タクシーを拾い、村川は学校へ引き換えした。既に部活動も終了した学校は、数名の教員が残っているのみだった。
村川はモニタールームに入り、置かれていた鍵を鞄にしまった。警備員が見回りに来た。
「遅くまでお疲れ様です」
人の良さそうな警備員は、笑みを浮かべて村川に挨拶した。




