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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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37/52

そういやそうだった

「……まずは満月だけを投影してっと……」


 自由に星空を投影できるワイン。

 それでも、じゃあと無計画に投影して味を確認していたら、すぐに酔っぱらって味なんて分からなくなってしまう。

 というわけで、ある程度の法則性を見つけるべきだと考えて。

 真っ先に思いついたのは、夜空でも一番の存在感を放つ月。

 その月をグラスの中央に投影し、世にも珍しい月を浮かべたワインが誕生。

 早速味見と行きましょう。


「香りは特に変化は無いな」


 月を投影した事で、特段香りに変化はない。

 あくまで変わるのは味だけって事か。

 

「ん~?」


 で、飲んでみた感想なんだけど……何というか、海の香りがする気がする。

 こう……何だろうな、イカ墨みたいな感じというか。

 海藻の匂いがすると言うか、そんな感じ。


「まぁ、チーズには合うけれども」


 海苔とチーズが合うように、海藻の風味がするこのワインにもチーズは合う。

 あ、もちろん果汁感や渋味はあるよ?

 ただ、最初に口に含んだ時に海藻っぽいニュアンスが広がるってだけ。


「まぁ、月と潮の満ち引きの関係はあるけれども……」


 それが味に繋がっているのかというのは微妙な所。

 ふむ……。


「じゃあ、月はそのままに星を増やしたら?」


 という事で再度グラスを天にかざして星を投影。

 星形の正座……何というか、五芒星って言うの?

 あんな感じで集まってる部分を投影し、中央に月が来るように配置。

 そのお味は……。


「え、めっちゃ好き」


 さっきの海藻っぽいニュアンスはどこへやら。

 赤ワインなのに白ワインみたいな爽やかな柑橘系の香りと、後味にビターなカカオの香り。

 重厚なタンニンと濃い果汁の味わいが、癖のあるゴルゴンゾーラチーズと相性がいいわ。

 ワイン自体の香りや味が強い事が、ゴルゴンゾーラチーズの癖を完全に取り込んでる。

 ゴルゴンゾーラチーズが苦手って人でも、このワインとなら美味しく飲めること請け合い。

 これが本当のマリアージュってやつよ。


「ちょっとお気に入りの配置だな、これ」


 というわけで五芒星の中央に月を浮かべたこの配置を記憶しつつ、左右に二回スワリングして配置をリセット。

 今度は、五連星を取り込んだ後に向きを変え、五連星でクロスを作ってみよう。


「これもこれで美味い」


 さっきほどの感動は無いけれど、しっかりと美味しい赤ワインの味わい。

 渋さより甘さがあり、最初に感じる感想はデザートワインのそれに近い。

 ただ、口の中で転がす内に、秘めた香りとふくよかなタンニンが華を開き。

 口の中の空気を鼻に抜けば、もの凄いアロマを感じられる。

 これにはチーズよりも生ハムだなって事で、ハモンセラーノと一緒に。

 甘い豚の脂とワインの甘さ、その後の塩味とワインのタンニンとが素晴らしいマリアージュを醸し出す。

 仕上げにハモンセラーノの脂を流すために一口飲むと、アロマと相まってスッキリと口の中を洗い流してくれるね。


「すぐにグラス一杯無くなっちゃったな」


 これね、やってて思うんだけどお酒飲める人とか、ワイン好きな人は利用しちゃダメな気がする。

 沼る。間違いなく。

 あれは? これは? ってマジで探求心が無限に湧き出てくるもん。

 そこまでワインが好きじゃない俺が言うんだから間違いない。

 あと、お酒も特に好きってわけじゃあない。

 お酒が飲めるってのとお酒が好きってのはイコールじゃないしね。


「めっちゃ星を浮かべたらどうなるんだろう?」


 という事でお次はビオラさんが言ってたように、グラスのワインに天の川を召喚しましょう。

 天の川を召喚ってなんだよ。


「あっっっっっっっっっっっっっま」


 えー、天の川ワイン、めっちゃ甘いです。

 トロンとした口当たりのデザートワインで、コックリ甘いとか言う表現すらぬるい。

 まだシロップとか言われた方が信じる位には甘い。

 

「あー……ビオラさんが言ってた理由が分かったかも……」


 わざわざこんなのも出来るよ? と紹介してくれた理由。

 もちろん、分かりやすい事例というのもあったんだろうけど……。


「エルフって、基本的に甘党っぽいしなぁ」


 甘い方が好みだったんだろうね、単純に。

 んー……ここまで甘いとなると、普通のおつまみよりも……。


「まぁ、ブルーチーズが合うよな」


 という事でゴルゴンゾーラチーズと。

 ただ、ゴルゴンゾーラチーズを持ってしてもまだ甘い。

 それでも、かなりマイルドに感じるし、チーズとの相性はいいしで美味しいんだけどね。

 あとは……。


「ドライフルーツとか、チーズケーキとかかなぁ」


 合いそうなものを遠距離ビュッフェで探すけど、う~ん……。

 あ、チーズケーキタルト発見。

 これにしよう。

 ……んー! チーズの酸味とほのかな塩味、タルトのバターの香りが超ど級甘口極のデザートワインと合いますわねぇ。

 ――わりぃ、やっぱ甘ぇわ。

 言えたじゃねぇか。


「次はどうしよう」


 というわけで左右スワリングでリセットし、次はどうしようかと考える。

 そうだ、あのひと際光を放つ星を一つだけ投影してみよう。

 そういや、北斗七星とか無いのかな?

 その脇に寄り添うように光る恒星とかも。

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