そういやそうだった
「……まずは満月だけを投影してっと……」
自由に星空を投影できるワイン。
それでも、じゃあと無計画に投影して味を確認していたら、すぐに酔っぱらって味なんて分からなくなってしまう。
というわけで、ある程度の法則性を見つけるべきだと考えて。
真っ先に思いついたのは、夜空でも一番の存在感を放つ月。
その月をグラスの中央に投影し、世にも珍しい月を浮かべたワインが誕生。
早速味見と行きましょう。
「香りは特に変化は無いな」
月を投影した事で、特段香りに変化はない。
あくまで変わるのは味だけって事か。
「ん~?」
で、飲んでみた感想なんだけど……何というか、海の香りがする気がする。
こう……何だろうな、イカ墨みたいな感じというか。
海藻の匂いがすると言うか、そんな感じ。
「まぁ、チーズには合うけれども」
海苔とチーズが合うように、海藻の風味がするこのワインにもチーズは合う。
あ、もちろん果汁感や渋味はあるよ?
ただ、最初に口に含んだ時に海藻っぽいニュアンスが広がるってだけ。
「まぁ、月と潮の満ち引きの関係はあるけれども……」
それが味に繋がっているのかというのは微妙な所。
ふむ……。
「じゃあ、月はそのままに星を増やしたら?」
という事で再度グラスを天にかざして星を投影。
星形の正座……何というか、五芒星って言うの?
あんな感じで集まってる部分を投影し、中央に月が来るように配置。
そのお味は……。
「え、めっちゃ好き」
さっきの海藻っぽいニュアンスはどこへやら。
赤ワインなのに白ワインみたいな爽やかな柑橘系の香りと、後味にビターなカカオの香り。
重厚なタンニンと濃い果汁の味わいが、癖のあるゴルゴンゾーラチーズと相性がいいわ。
ワイン自体の香りや味が強い事が、ゴルゴンゾーラチーズの癖を完全に取り込んでる。
ゴルゴンゾーラチーズが苦手って人でも、このワインとなら美味しく飲めること請け合い。
これが本当のマリアージュってやつよ。
「ちょっとお気に入りの配置だな、これ」
というわけで五芒星の中央に月を浮かべたこの配置を記憶しつつ、左右に二回スワリングして配置をリセット。
今度は、五連星を取り込んだ後に向きを変え、五連星でクロスを作ってみよう。
「これもこれで美味い」
さっきほどの感動は無いけれど、しっかりと美味しい赤ワインの味わい。
渋さより甘さがあり、最初に感じる感想はデザートワインのそれに近い。
ただ、口の中で転がす内に、秘めた香りとふくよかなタンニンが華を開き。
口の中の空気を鼻に抜けば、もの凄いアロマを感じられる。
これにはチーズよりも生ハムだなって事で、ハモンセラーノと一緒に。
甘い豚の脂とワインの甘さ、その後の塩味とワインのタンニンとが素晴らしいマリアージュを醸し出す。
仕上げにハモンセラーノの脂を流すために一口飲むと、アロマと相まってスッキリと口の中を洗い流してくれるね。
「すぐにグラス一杯無くなっちゃったな」
これね、やってて思うんだけどお酒飲める人とか、ワイン好きな人は利用しちゃダメな気がする。
沼る。間違いなく。
あれは? これは? ってマジで探求心が無限に湧き出てくるもん。
そこまでワインが好きじゃない俺が言うんだから間違いない。
あと、お酒も特に好きってわけじゃあない。
お酒が飲めるってのとお酒が好きってのはイコールじゃないしね。
「めっちゃ星を浮かべたらどうなるんだろう?」
という事でお次はビオラさんが言ってたように、グラスのワインに天の川を召喚しましょう。
天の川を召喚ってなんだよ。
「あっっっっっっっっっっっっっま」
えー、天の川ワイン、めっちゃ甘いです。
トロンとした口当たりのデザートワインで、コックリ甘いとか言う表現すらぬるい。
まだシロップとか言われた方が信じる位には甘い。
「あー……ビオラさんが言ってた理由が分かったかも……」
わざわざこんなのも出来るよ? と紹介してくれた理由。
もちろん、分かりやすい事例というのもあったんだろうけど……。
「エルフって、基本的に甘党っぽいしなぁ」
甘い方が好みだったんだろうね、単純に。
んー……ここまで甘いとなると、普通のおつまみよりも……。
「まぁ、ブルーチーズが合うよな」
という事でゴルゴンゾーラチーズと。
ただ、ゴルゴンゾーラチーズを持ってしてもまだ甘い。
それでも、かなりマイルドに感じるし、チーズとの相性はいいしで美味しいんだけどね。
あとは……。
「ドライフルーツとか、チーズケーキとかかなぁ」
合いそうなものを遠距離ビュッフェで探すけど、う~ん……。
あ、チーズケーキタルト発見。
これにしよう。
……んー! チーズの酸味とほのかな塩味、タルトのバターの香りが超ど級甘口極のデザートワインと合いますわねぇ。
――わりぃ、やっぱ甘ぇわ。
言えたじゃねぇか。
「次はどうしよう」
というわけで左右スワリングでリセットし、次はどうしようかと考える。
そうだ、あのひと際光を放つ星を一つだけ投影してみよう。
そういや、北斗七星とか無いのかな?
その脇に寄り添うように光る恒星とかも。




